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【星座夜話-創作小劇場③「おひつじ座誕生」】
子供たちを助けるため、雲の精霊ネペレーは羊と仲間の雲を引き連れ、地上の祭壇へと向かいました。
ネペレー 「地上に降りたら雲たちは祭壇を覆い、兵士の目くらましをお願い。その間に私と羊は子供たちを逃がします。」
雲 「らじゃ」
羊 「らじゃ」
ネペレー 「いきます!!」
生贄の祭壇は真っ白な雲に覆われ、何も見えなくなりました。
混乱する兵士達。
そして祭壇に降り立つネペレーと羊。
子供たち 「お母さま!!!」
ネペレー 「プリクソス、ヘレ、よくぞ無事でいてくれました。」
ヘレ 「お母さま、会いたかったー。」
ネペレー 「私もどれほどあなた達に会いたかったことか。」
羊 「急げ、ネペレー。兵士が来る。」
ネペレー 「プリクソス、ヘレ、よく聞いて。この羊に乗り、コルキス国へ行きなさい。コルキスの国王は私の縁者、きっとあなた達を守ってくれます。さあ、急いで!」
プリクソス 「わかりました、お母さま。ほらヘレ、乗って。」
ヘレ 「お母さまもどうかご無事で。」
ネペレー 「羊よ、二人を頼みます。」
羊 「らじゃ」
言うが速いか羊は飛び上がり、北の空へと消えていきました。ネペレーは二人の後ろ姿を見送ると、
ネペレー 「子供たちは無事です。さあ、空へ帰りましょう。」
ネペレーと共に空へと帰っていく雲の群れ。
そして呆然と立ちつくす兵士だけが残されました。
一方、北へと向かうプリクソスたちは、
プリクソス 「ねぇ羊、ごつごつして乗り心地悪いんだけど。」
羊 「文句を言うな。生きていられただけ感謝しろ。」
ヘレ 「おにいちゃん、高くて恐いよ。」
すると突然ヘレが気を失い、兄にしがみついていた手を離してしまいました。海へと真っ逆さまに落ちていくヘレ。
プリクソス 「ヘレが落ちた!!」
羊 「なにぃ!?」
後ろを振り向きヘレを探す羊。
プリクソス 「羊、戻って。落ちたのあのあたりなんだ。」
羊 「ムリ・・・」
プリクソス 「なんでだよ、飛んでるだろ?」
羊 「飛んでるんじゃない、跳ねてるだけだ。だって羊だし。」
たしかに羊は跳ねているだけで、飛んではいない。鳥のように方向転換ができないのだ。
プリクソス (ここにきてなんてイケテナイやつ・・・)
羊 「プリクソス、諦めよう。」
プリクソス 「ごめんよ、ヘレ・・・」
羊は早々に探すのをあきらめ、北への旅を続けるのでした。
さて、ヘレが落ちた海では、
海の精霊 「だれか来たよ」
海の精霊 「雲の子だ」
海の精霊 「一人みたい」
海の精霊 「おうちにつれていこうよ」
海に落ちたヘレは海の精霊たちに助けられ、海の国へと招かれました。この兄妹は生涯会うことはありませんでしたが、それぞれの国で幸せに暮らしたそうです。
羊は二人を助けた功績が認められ、空に上がりおひつじ座となりました。そしてその星座絵には、後ろをふり返り妹を探す羊の姿が描かれるようになりました。