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【星座夜話-創作小劇場②「怒りのディメテール」】

うららかな午後の日差しの中、大神ゼウスを訪ねる者がいました。

来訪者 「久しぶりだな、ゼウス。」

ゼウス 「おぉ、ハーデスではないか。兄貴の方から会いに来るとは珍しいな。」

ハーデス 「ちょいとお前に用があってな。」

ゼウス 「まぁ座ってくれ。で、用ってのは?」

ハーデス 「実は、近いうちに結婚しようと思ってな。」

ゼウス 「本当か兄貴、そりゃめでたいな。で、相手はどこの娘さんだ?」

ハーデス 「うむ。ディメテールの娘、ペルセポネーだ。」

ゼウス 「・・・はぁ?」

ハーデス 「だからペルセポネーだって。」

ゼウス 「ペル?・・・、わしの娘ではないか。」

ハーデス 「そうだ。だからお前に話しに来た。」

ゼウス 「いきなり言われてもなぁ。まぁ、わしはかまわんが、ディメが許さんだろ?」

ハーデス 「うむ、たぶんな。」

ゼウス 「兄貴はディメに嫌われてるからな。」

ハーデス 「お前もだろうが。」

ゼウス 「まぁな。それで、どうするんだ?」

ハーデス 「有無を言わさず連れていく。」

ゼウス 「はぁ?それじゃ誘拐だろ。ディメが怒るぞ。」

ハーデス 「あとで詫びる。」

ゼウス 「前にディメを怒らせてひどい目にあった。またあんな目にあわされてはかなわん。やめとこうや。」

ハーデス 「やめん。もう決めたのだ。父親のお前に話は通した。じゃあな。」

ゼウス 「おい、待ってくれ兄貴、おい。おい。あぁ、行っちまった。まずいことにならなきゃいいが。」

そして数日後、ペルセポネー誘拐事件は勃発する。

[ゼウス神殿にて]
思いっきり玄関を開ける音:ガラガラガラガラ~

ディメテール 「ちょっとゼウスっ!聞いたわよ(-_-メ)!!!」

顔を真っ赤にして怒鳴りちらすディメテール様。

ゼウス(うわっ、やっぱり来た)

ディメテール 「ハーデスがペルをさらったこと、あんた知ってたんでしょ
(-_-メ) !!」

ゼウス 「ディメ、ちょっと落ち着いてくれ。」

ディメテール 「落ち着けですってぇ?ふざけるんじゃないわよ! 大事なペルがさらわれたのよ。あんた、なにのうのうとしてんの!」

ゼウス 「いやだから、それはハーデスが・・・」

ディメテール 「ハーデスがって。あんたはいつもいつもこう。いったいどこまで不甲斐ないの、この役立たず!!!  あんたがそんなだから、あんたと別れたのよ(-_-メ)!!!」

ゼウス 「すいません・・・」

ディメテール 「すぐにペルを返しなさい!あの子が帰るまで、私は神殿から一歩も出ないからね!!」

すごい形相で帰っていくディメテール様。

ゼウス(まるで嵐だ・・・)

伝令神ヘルメス 「豊穣の女神ディメテール様の加護がなくなり、地上では大地の実りが途絶えております。このままでは地上の生き物は全て滅びてしまいましょう。」

ゼウス(だからひどい目にあうって言ったろうが。ハーデスのアホッ!)

ヘルメス 「父上、いかがいたしましょう?」

ゼウス 「うむ。すぐにハーデスに使者を送り、ペルセポネーを帰らせよ。」

ヘルメス 「仰せのとおりに。」

 こうしてペルセポネーはオリュンポスに帰ることになりましたが、帰り際にザクロの実を4粒食べたため、1年のうち4ヶ月を死者の国で過ごすことになりました。その4ヶ月の間ディメテールは神殿に閉じこもり、娘の帰りを待ちわびたそうです。

 後にハーデスとディメテールは和解し、ペルセポネーは正式にハーデスの妃に迎えられました。やれやれ。


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