【星座夜話 29/88 かんむり座】
王女に贈られた冠(ティアラかも)を表した半円形の星座です。
北斗七星の柄の部分からうしかい座の1等星アークトゥルス、おとめ座の1等星スピカへと至る大きな曲線を「春の大曲線」と呼んでいます。
この曲線に沿ってうしかい座のアークトゥルスを見つけたら、そのまわりを見まわしてみましょう。少し離れたところに半円形の星の並びが見つかれば、それがかんむり座です。
夜9時に見やすい時期:6~8月
有名な天体:特になし。
ギリシャ神話では、クレタ島の王女アリアドネーに贈られた宝石を散りばめた冠、または花かんむりとされています。アリアドネーはクレタ島に渡ったエウロパ(おうし座の章)の孫です。
かんむり座のお話はいくつもあり、どれが本当なのかはよくわかりません。それらの中で私が好きなお話を紹介します。
当時クレタの支配下にあったアテナイ国は、9年に一度クレタに男女各7人、計14人の子供を送らなければなりませんでした(毎年とも)。その子供達は怪物ミノタウロスの迷宮に入れられ、生贄にされてしまうのです。ミノタウロスは、頭は牛、体は人の姿をした凶暴な怪物でした。
アテナイ国の王子テセウスはミノタウロスを倒すため、14人の中に紛れてクレタへ来ました。そのテセウスに、なんとクレタ王女アリアドネーが一目惚れしてしまいます。
王女はテセウスを助けるため、短剣と麻糸の玉をこっそり渡し、ミノタウロスの迷宮からの脱出方法を教えました。
翌日テセウス達14人はミノタウロスの迷宮に入れられました。中は複雑な迷路になっており、入れば二度と出られない恐ろしい迷宮です。テセウスは王女から教えられた通り、麻糸の端を入口に結び付け、糸玉をほどきながら迷路の奥へと入っていきました。
そして迷路の奥でミノタウロスに遭遇したテセウスは、剣をふるって戦い、傷つきながらもついにミノタウロスを倒すことができました。
ミノタウロスを倒したテセウスたちは、糸玉の糸を手繰って入口に戻りました。そして入口で待っていた王女を連れ、船を奪ってクレタを脱出しました。
クレタを脱出し、故郷アテナイ国へと向かうテセウス達は、途中ナクソス島に立ち寄りました。そこでテセウスは守護女神から、
「アリアドネーを置いてすぐにこの島を離れよ」
とのお告げを受けました。
アリアドネーは命の恩人ですが、女神のお告げに背くことはできません。心ならずも眠っているアリアドネーを置き去りにし、島を出ていきました。
敵国の王子を助けたアリアドネーに、帰る国はありません。置き去りにされたと知ったアリアドネーは悲しみ、泣きくれました。
そこへ葡萄酒の神ディオニュソスが現れました。ディオニュソスは泣いているアリアドネーを慰めました。(この時花かんむりを渡して慰めたという話もあります)
やがて二人は愛しあうようになり、結婚することに。
ディオニュソスは葡萄の木の蔦を編み、宝石を散りばめたティアラを作りました。そして自分の妻である証として、このティアラをアリアドネーに贈りました。
その後、二人はこの島で幸せに暮らしたと伝えられています。
歳月は流れ、アリアドネーは人としての生を終え、静かに息を引きとりました。アリアドネーの死後、ディオニュソスは妻に贈ったティアラを空に上げ、星々の中に飾りました。それがこのかんむり座です。