[NKフォーカス]激変の南北関係 北朝鮮が「対南機関」を次々と閉鎖 協力も扇動もやめた…
昨年末から年始にかけて、南北関係が喧しい。北朝鮮側の最高権力者による強い発言が続いているのだ。
「朝鮮半島で戦争が現実的実体として近づいている」(金正恩朝鮮労働党総書記。2023年12月26日から30日まで開催された朝鮮労働党中央委員会第8期第9回全員会議)
「北南関係は、もはや同族関係、同質関係ではなく、敵対的な二国間関係、交戦国関係である」
「有事の際は核の兵力を動員して韓国全土を制圧するための大事変の準備に拍車をかけよ」(新年の辞)
さらに15日には最高人民会議での演説では「大韓民国(テハンミングック)」という言葉を直接口にした異例の事態が起きた。さらに「主敵」と言い放つ姿も。この状況に追随する現象が起きている。SAND南北コリア研究所からのレポートを。
北朝鮮は南北交流協力を担当していた機関の整理にスピードを上げている。また、南派間諜に指令文を送っていた平壌放送も、12日を境に受信されていない。北朝鮮の金正恩は昨年末、南北関係を「敵対的な二国家」と規定し、韓国の領土を武力で制圧すると宣言したことに対する後続措置と見られる。
北朝鮮の金正恩は昨年12月31日、北朝鮮軍の首脳部と主要指揮官、労働党中央委員会本部庁舎で会議をしている。(写真:朝鮮中央通信)
北朝鮮の対南機関が運営していたラジオ放送「平壌放送」は、先日12日午後から受信されていないとしている。平壌放送のホームページ「民族大団結」もアクセス不可能な状態である。平壌放送は北朝鮮の対南機関が運営していたとされ、1960年代から「人民民主主義革命」を扇動する内容の放送を送出してきた。過去には深夜に金日成・金正日賛美歌を流した後、乱数を読み上げて南派間諜に指令を出していたことでも知られている。乱数放送は2000年の6・15南北首脳会談後に中断され、2016年に再開された。
北朝鮮は南北民間交流のための各種機関・団体の整理にも着手している。朝鮮中央通信は「金正恩同志が党中央委員会第8期第9回全員会議で提案した対南政策の転換方針を徹底的に貫徹するための対敵部門幹部の決起集会が12日に行われた」と報じ、「南北関係の改善と平和統一のための連帯機構として組織された6・15共同宣言実践北側委員会、祖国統一汎民族連合北側本部、民族和解協議会、檀君民族統一協議会など関連団体をすべて整理することにした」と伝えた。
6・15共同宣言実践北側委員会と祖国統一汎民族連合北側本部は韓国にもそれぞれ南側委員会と南側本部を置いた団体である。民族和解協議会は労働党の外郭団体であり、韓国の民族和解協力全国民協議会と交流してきた。檀君民族統一協議会は民族の正統性と統一を扱ってきた団体である。
先に金正恩は昨年末の全員会議で南北関係について「敵対的な交戦国」と断言し、対南機関の整理を指示した。その後、北朝鮮は崔善姫外相の指導のもと、対南機関の整理・改編を進めており、今回整理された対南交流機関も完全に閉鎖されるか、北朝鮮外務省に再配置される可能性がある。対南心理戦と統一工作などを担当してきた統一戦線部が外務省に吸収されるとの推測も出ている
北朝鮮の国家ドメイン(.kp)を使用する対外宣伝ウェブサイト「ネナラ=私の国」では、統一を強調する内容で満たされていた「ウリヌンハナ(私達はひとつ)」のコーナーが消えている。また「ウリミンジョクキリ(我々民族同士)「トンイレメアリ(統一のメアリ)」「柳京(リュギョン)」「チョソネオヌル(朝鮮の今日)」「リョミョン(黎明)」など、北朝鮮の対南宣伝用ウェブサイトも11日以降、アクセス不可の状態である。
北朝鮮の対南機関の整理及び対南政策の転換は、重要な意味を持っている。今回北朝鮮が整理すると発表した対南機関は、1990年代以降、ソ連と東欧諸国の崩壊により生死の危機に直面した北朝鮮が外交的孤立を脱するため、経済的支援を目的として民族の概念を掲げ、南北交流に関与してきた労働党の「外郭団体」である。
「我々の民族同士」の概念に基づく偽装平和、物乞い戦略から、核武力優位に基づく対南圧殺政策を展開することを意味している。
金日成の「1民族1国家」論に基づく南韓解放戦略とは異なり、金正恩は「2民族2国家」論に基づき、武力で南韓の領土を制圧する武力統一基調を確立したということである。
金正恩は昨年12月26日から30日に開催された党中央委第8期第9回全員会議で「南半部の全領土を制圧しようとする我が軍の強力な軍事行動に協調して『大変革準備』を先見的に推進する」と述べた。
また、「我々が同族であるという修辞的表現のために、米国の植民地従属に過ぎない奇怪な種族と統一問題を論じることは、我々の国格と地位にふさわしくない」と述べ、南北関係を「敵対的な二国家関係」と規定し、対南政策の根本的なこれは、南北間の敵対的闘争を通じて住民の敵意を高めることで、韓流文化の流入によって形成された北朝鮮住民の対南幻想を根絶やしにする意図と見ることができる。娘のジュエを後継者として育てる作業に着手し、南北交流を断ち切り、韓国を敵として定義することで、青少年世代に韓国に対する敵意を植え付けることだ。
これと同時に、戦争の雰囲気を醸し出し、内部の団結を固め、民生経済の崩壊に対する責任を回避し、核兵力や国防力強化の名分を確保しようとするものだ。
北朝鮮は2024年の成果達成に対する焦りを露わにし、住民動員と統制の基調のもと、対南・対外危機を創出し、体制の結束に焦点を当てているという解釈も出ている。結局、金正恩が昨年、南北関係を「対敵関係」と設定したことに続き、今年はさらに強硬な表現である「南朝鮮全土を平定するための大変動の準備」を言及したため、今後どのような形であれ、朝鮮半島の緊張を引き起こす可能性も言及されている。