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君の愛する歌(カネコ小山田ラブシャ)

先日 SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER NEW YEAR LIVE 2025 に行ってきました。kanekoayanoと小山田壮平バンドの対バンです。

自分で申し込んだ抽選は全て落選してしまったのですが、親切な方にチケットを譲っていただき現地へ行くことができました。本当に感謝しています。




昼まで仕事をして飛行機に乗って行った。開場時間の約1時間前に羽田空港に到着するはずが、飛行機の遅延によって開場時間まで30分しかない。荷物を担いで走り回っていたら道に迷ってしまい引き返して、まるで間に合わないのでタクシーを使った。そしてなぜかタクシーのナビに表示されるZepp Hanedaの位置が間違っており、私がスマホを見てナビをすることになった。



会場付近まできてコインロッカーに荷物を預けて出たら小山田さんの「マジカルダンサー」が聞こえてきたのでそっちかと思って走ったらライブ会場ではなく「時をかけるメロディー」収録曲を流し続けるただひたすら最高なカフェがあった。素敵だね。そこから真逆の方向へ走って、なんとか開演時間の30分前にZepp Hanedaに到着した。


東京のライブに来たのは初めてだったので人の多さには圧倒した。一階のスタンディングフロア。スタッフに前に詰めるよう指示されるとかなり前に流れていったので半分より少し前くらいまで漕ぎ着けた。


そうこうしているとkanekoayanoが登場。
一曲目から知らない歌だったので戸惑ったがそれは新曲だった。「愛想がないのは元から」と繰り返すサビが私の好きなカネコアヤノのあたたかい孤独に満ちていて、やっぱり好きだと思った。

以降は全て知っている歌で、「さびしくない」「爛漫」「エメラルド」と続いてこの辺りで突然気が遠くなり気絶しそうになった。日頃の不健康な生活が仇となったのか…?と悔いて、なんとかぶっ倒れないように頭を振ったりしてギリギリ意識を保っていた。カネコアヤノの番が終わったあとに私の後ろあたりにいた人が「酸素薄くない?」と言うのを耳にして知ったが、どうやら私は酸欠で気絶しそうになっていたらしい。そもそも私が通年貧血気味だというのもあるけど、確かに自分の四方を囲む人間すべての腕や背中が常に接触している状態で、それは私だけでなく一階のスタンディング客の地平みんながそうなのだから、密室でこんな異常な人口密度の中で揺れていたらそうもなるのかもしれない。倒れたら迷惑だしこういうときは無理せず退場した方がいい。私が元気なうちに近くで退場していった人が5人くらいいたがあの人たちも酸欠だったのだろうか。今後大きい会場に行くときは酸素を持って行きます。


「りぼんのてほどき」の途中で意識が戻ってきて、「カーステレオから」は最後まで見ることができた。カネコアヤノのバンドセットは歌が終わった後の演奏の上昇感が凄まじいのだが、最後のライティングの明滅によってステージがコマ送りのように見える演出、そして演奏の着地が素晴らしかった。


去年初めて高松でカネコアヤノを見に行った時も感じたのが、会場にいる人たちの“カネコアヤノがこの世で一番好き”という気持ちが心からわかる、と思ったこと。私がこの世で一番好きなミュージシャンは小山田壮平さんだけど、出会う順番が違ったらきっとカネコアヤノがこの世で一番好きなミュージシャンだった。


今回は場所取りが良くなかったので前の人たちの頭でカネコアヤノの姿がほとんど見えなかった。きっと後日スカパーなどで放送してくれるはずなので楽しみに待ってます。カネコアヤノは後頭部や後ろ姿しか見れなかったものの、ドラムの人の姿はよく見えた。後方で見てあの迫力だったのに、最前列の人はどれだけ心を動かされたことか。ドラマーがあんなにも激しく輝く姿は初めて見た。おそらく今回はサポートで入っただけだろうけどあの方には正式にメンバーになって欲しいと心から思っている。カネコアヤノの日々の悲しみをぶちまけるライブのスタイルとマッチしていて、ドラムの衝突音の一粒の中にさえカネコアヤノの存在を感じられた。全ての音が感動的だった。



次の小山田壮平バンドの楽器交換のために休憩時間が設けられた。その間に流れていった人の隙間を縫ってかなり前まで泳いで行った。だいぶ左側だけど2列目くらいまでいけたのでよかった。寛がよく見える場所。


思いの外休憩時間が長かったので描いたスケッチ。この絵より本当は前方の人たちの身長がもっと低かったので見やすかった。




小山田壮平バンドの入場。「夕暮れのハイ」からスタート。演奏が終わった後に「寛ー!!」という声援が近くで飛び交っていた。二曲目の「マジカルダンサー」は普段のドラムからの入りではなく歌い出しから演奏が始まるかたちだった。「クラブナイト」と勘違いさせる可能性を考慮してだろうと思われるけど、それはなんだかさみしく感じる。事実としてこの場では演奏を分ける必要があるのでそんな気持ちになっても仕方がない、とはいえどっちだって比べられないくらい嬉しいし大好きですよ、と思っている。


「アルティッチョの夜」のバンドバージョンを久しぶりに聴けて嬉しかった。弾き語りも最高にかっこいいけどバンドだとより深みがあって、アコギ以上に雰囲気を明快にする鋭さがやっぱりいいなと思う。そして小山田さんが他のどの曲よりも楽しそうに歌ってロックンローラーとして輝いて見えるのが嬉しい。


「革命」「すごい速さ」でフロアが熱狂したあと「雨の散歩道」。ゆったり歩くような穏やかなリズムと傘に落ちる雨粒のようなサウンドが改めてよかった。そして目の前でベースを弾きながらコーラスも担う寛の器用さ、オールラウンダーっぷりに圧倒された。

次の「彼女のジャズマスター」では途中で小山田さんのギターの音が出なくなるというアクシデントに見舞われ、スタッフの方が調節しに来てもう一度仕切り直した。去年のバンドツアーで「彼女のジャズマスター」をやった時、ギターの岡愛子さんの命を削るような演奏が素晴らしかったので楽しみにしていたのだが、自分の場所からはお姿が見えなかったのが残念だった。配信で見るのが楽しみです。



「スライディングギター」「16」「光」「Sunrise&Sunset」そしてずっと楽しみに待っていた「時をかけるメロディー」のバンドセット。小山田さんの弾き語りに続くドラムのリズムは強く踏み締める確かな足取りのようで、春風を誘うようなメロディの優しさも、この場所のすべてが今の小山田壮平を構成する穏やかな愛に満ちていた。



ラストは「空は藍色」。私はこの歌をライブで聴くのは初めてだった。ライブ映像やDVDで何度も観て聴いた歌だけど何より印象深いのは「青の終わりはぐるぐると」のエンディング。
この日のセトリの14曲のうち半分がandymoriの歌だったのだが、昔の歌を歌ってもかつてのどこかへ消えてしまいそうな悲しい影は落とさず、ただ君の愛する歌を歌いたい小山田壮平の現在地を示すような鮮やかな歌だった。


ファンとしては歌いたい歌を歌ってほしいと願うけれど、小山田さんはみんなが聴きたい歌を歌いたいと、こういう場では特に思われているのかもしれない。どちら側の気持ちも“気持ち”であって、いつか流れて形を変えていく今しかないものだから、そういう諸行無常に応えるような向き合い方はすごく小山田さんらしいと思った。



それと今回のライブでは昨年11月に出会ったヤイリギターと昔からのギブソンのエレキの2本を使い分けられていたのだが、普段アコギにつけている水色のギターストラップを珍しくエレキにつけられていた。色が気に入っているのか使い心地が良いのかわからないけど、andymori時代からお馴染みのエレキにソロ活動以降象徴的な水色のストラップをつけて歌う歌たちは今の小山田さんのたどり着いた姿として強く印象に残っている。


アンコールで「投げKISSをあげるよ」を歌って終わった。


できれば互いの歌を歌ってほしかったな…と思ったけど、バンドセットでは難しいのかもしれない。数年後のカネコ小山田弾き語りツーマンに期待してる。

MCでお互いをカネコアヤノちゃん、小山田壮平くんと呼び合うのが子どものようでかわいらしくとても素敵だった。もう1週間経つけど今思い返しても嬉しい気持ちになれる。本当にありがとうございました。お二人の音楽と出会えたことは何にも変え難い幸せです。



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