【FCバルセロナ】クラブの哲学とラマシアというアイデンティティについて
こんにちは、サンクレです。
皆さんいかがお過ごしですか?ヨーロッパはオフシーズンに突入し、CLも終わりつまらないオフシーズンが始まりました。
夏の選手移籍やら、プレシーズンマッチなど、まぁまぁ話題は尽きないサッカー界隈ですが、今回は我が心のクラブであるFCバルセロナについてです。
黄金時代の終焉
今季カンテラ出身のベテラン選手がこぞって引退してしまいました。シャビ、メッシ、イニエスタ、ブスケツ、ピケなどなどカンテラ出身の選手でここまで黄金期を迎えてきたバルセロナですが、その灯火はまもなく消えてしまうでしょう。彼らがいなければ今のバルセロナの価値はなかったと言ってもいいと思います。そんな彼らが1人いなくなるたびに、不安要素が浮上します。それを解消するためにクラブは外から選手を高額獲得しようとし、なかなかうまくいかないからまた売却しよう。みたいなことを繰り返してきました。もちろんメッシが退団した時には、その代わりを見つけるのは難しいことは100も承知でしたが、他の選手も同じくらい難しいでしょう。
それは、バルセロナというクラブが世界的に特殊なクラブだからなのです。今回はバルセロナというクラブの歴史とアイデンティティについて今一度振り返りたいと思います。
バルセロナの特徴① 外部的視点
ではなぜ、バルセロナというクラブが特殊で、フィットするのが難しいと言われているのか?
もちろん色々な要素はあると思います。
クラブソシオ制
まず最初にバルセロナはソシオ制という形態のクラブチームです。
ちなみにラリーガでソシオ制を導入してるのは、バルセロナ、レアル・マドリード、オサスナ、アスレティック・ビルバオの4チームのみです
ソシオ制とは
特徴:
クラブの会員として登録された個人が、クラブの方針や運営に関与する権利や責任を持ちます。通常、会員は年会費を支払い、その対価としてクラブの会員としての特典や権利を享受することができます。また、会員はクラブの重要な意思決定に参加し、クラブの経営に対して投票権を持つことがあります。ソシオ制は、スポーツクラブにおける独自の組織形態であり、クラブとサポーターとの緊密な関係を築くための一手段として重要視されています。会員がクラブの一員として参加し、愛着や誇りを持ちながらクラブの発展に寄与することで、より持続可能なクラブ運営やサポーターコミュニティの形成が目指されます。
目的:
クラブとサポーターとの強い結びつきを築き、クラブの持続的な発展と繁栄を支えることです。会員はクラブに対して忠誠心を持ち、クラブの活動や運営に参加することでクラブの発展に貢献します。また、ソシオ制はクラブの民主的な経営を促進し、会員の意見や参加を重視することでクラブの方向性や政策を決定する際に広範な意見を反映することができます。
つまり経営のプロではないということですよね。簡単にいうとそのクラブのことを好きな人たちが集まってお金出して運営してるよってこと。
企業が持っているクラブでいうと最近ではプレミアリーグでのニューカッスルやマンチェスターシティ、リーグアンで言えばPSGなんかは、中東の大企業がクラブを買収し、ビジネスとしてのサッカーを展開していこうとしています。なので巨額の資金で選手の売買が激しく、競争力のあるリーグになってきてるというわけですね。(リーグアンはちょっと違うか笑)
ではそのソシオ制というのがサッカーにどう影響してくるのか見ていきましょう。下記にそのソシオ制と株式会社でのメリットとデメリットを記載しました。
メリット
クラブの地元コミュニティとの結びつき: 株式会社化されていないクラブは、地元のサポーターや地域社会との強い結びつきを持つことができます。これにより、クラブは地域の誇りとなり、サポーターからの熱狂的なサポートを受けることができるでしょう。
意思決定の柔軟性: 株式会社化されていないクラブは、株主や株主の利益に対する制約を受けることなく、意思決定を行うことができます。これにより、クラブはより迅速に、地域のニーズやクラブのビジョンに合った戦略や方針を採用することができるでしょう。
クラブの所有者が経営を完全にコントロール: 株式会社化されていないクラブは、クラブの所有者が経営において完全なコントロールを持つことができます。これにより、所有者はクラブの運営や方向性について直接的な影響力を持つことができます。
デメリット
資金調達の制約: 株式会社化されていないクラブは、株式を発行して資金を調達することができないため、資金調達の制約があります。経営資金や選手の獲得、施設の改善などに必要な資金を調達することが難しくなる場合があります。
限られた財務管理能力: 株式会社化されていないクラブは、株式会社と比較して財務管理の規制や報告義務が緩やかな場合があります。これにより、適切な財務管理や会計体制が整っていない可能性があり、財政的な不安定さが生じる場合があります。
成長や国際的な展開の制約: 株式会社化されていないクラブは、資金調達の制約や経営の柔軟性の制限により、成長や国際的な展開に制約を受けることがあります。
独立を目指すカタルーニャ
また、バルセロナというクラブを語る上で外せないのが、カタルーニャの独立運動です。スペインカタルーニャにバルセロナは位置します。僕自身もそこまで詳しくはないので今回はここだけ今流行りのAIに助けてもらいました。
といったように、カタルーニャというのはいまだに、スペインからの独立を目指している珍しい地域なのです。バルセロナとレアル・マドリードという二つのクラブの試合をクラシコと呼びます。誰もが知る世界でも最も有名な試合です。この二つのクラブがバチバチなのはこの独立運動が非常に根深く関わっています。弾圧されたいた頃レアル・マドリードはスペイン政権直属のクラブチームとされてきました。一方バルセロナはそのスペイン政権から弾圧、迫害に遭っていました。その当時カタルーニャ語を語ることを禁じられていたカタルーニャの人々でしたが、カンプノウだけが唯一カタルーニャ語を話すことを許されていたそうで、彼らが掲げるmés que un club(クラブ以上の存在)というのはそういったカタルーニャの人々の思いが込められているということで、これを知った時には胸が痛くなりました。
クラシコというのは、「有名な選手がいる強いチーム同士の試合」と思っている方も多いかと思いますが、カタルーニャの人々にとっては、絶対に負けることができない「国」をかけた戦いでもある。ということなのです。
かなり重い内容も含まれていたと思いますが、こういった外的にもかなり特殊なクラブチームだということがわかりますよね。
それでは次に1番大切な内部的要因を見ていきましょう。
バルセロナの特徴② 内部的視点
さてここからは内部的な観点でバルセロナを見ていきたいと思います。
バルサイズムの確立
バルセロナを語る上で欠かせない登場人物は何人もいますが、彼抜きに語ることは非常に難しいです。サッカーをよく見ている皆さんなら聞いたことがあるであろう「ティキタカ」これはどこからきたものなのか、誰が考えたのか。考えたことはありますか?
そもそもティキタカとはなんでしょう?ネットや雑誌なんかでは「短いパスでとにかくボールを回し、相手に取られないこと」とか「ポゼッションして相手にボールを渡さないとか」まあそんな感じで書かれています。基本的にはその解釈で問題ないですが、そこに一つ重要な概念が加わります。
それは『選手のポジショニング』です。別にボールを回すだけなら誰にでもできます。後ろの方で回してればいいだけですからね。しかしティキタカはそうではありません。ティキタカは全員でボールを細かく繋ぎながら前に運びます。選手の距離感ポジショニングを間違えたりロングボールは基本NGです。とにかくボールを回すけど、あくまでも目的はゴールです。
そのためには相手選手の立ち位置と味方の位置を完璧に把握しておく必要があります。選手が動けばそこにスペースができます。この全員で誰かが空けたスペースを使うというのがティキタカにおいては非常に大切な概念で、この自分のポジションにとらわれず流動的にピッチを使うという概念のことを「トータルフットボール」といい。その概念をバルセロナに持ち込んだのがあの有名なヨハンクライフという男なのです。
今でさえ各ポジションの選手が自分のポジションではなく流動的にポジションを変えることで、ボールを動かす。サッカーをしていますが当時のサッカーはそうではありませんでした。DFは守備、FWは点を取るだけ、中盤は最悪ショートカットしてもいいみたいなサッカーが主流でした。とにかく前へのスピードとフィジカル。そういったサッカーが当たり前だった世界に衝撃を与えました。この考え方は、代々バルセロナのアイデンティティとして確立していき、ペップグアルディオラ(現:マンチェスター.C監督)の時代にティキタカという形で完成形に近いものに成熟していきました。
クラブにおけるラマシアの立ち位置
そしてバルセロナの象徴と言えるのが、ラマシアの存在です。ラ・マシアは、バルセロナのユースアカデミーです。正式には「Cantera de Talentos」(才能の鉱山)とも呼ばれ、若い選手の育成と教育を担当しています。ラ・マシアはバルセロナのクラブの一部であり、クラブの哲学やスタイルを学び、若手選手にとっては重要なステップとなります。ヨハン・クライフは監督として在任中に、ラ・マシアの強化に注力し、自社育成選手をトップチームに積極的に昇格させる取り組みを推進しました。
ラ・マシアは、技術や戦術だけでなくスポーツマンシップ、および集団プレーへの理解を重視するトレーニング提供しています。特にヨハンクライフがは、技術や戦術よりも集団の中で自己の役割と、仲間に対するサポートの重要性を大切にしていました。
バルセロナが目指すアイデンティティはあくまでもトータルフットボールを根底に持っていて、「エゴイスト」ではなく、「利他主義者」が大切だということがわかります。このラマシアの教育はバルセロナにとって欠かすことのできない非常に大切な考え方というわけです。
1人でもエゴイストがいれば成立はしません。全員が同じ価値観を共有することで、チームとして成り立つことができる。そういった選手たちを自分たちで育てていく。これがラマシアの考え方であり、バルセロナというクラブの最大の特徴でもあるわけです。
またラマシアには以下のような存在価値もあると考えています。
コミュニティと文化への貢献: バルセロナは、カタルーニャ地域のクラブとしてのアイデンティティを持ち、地域のコミュニティと深い結びつきを持っています。カンテラーノがトップチームで活躍することは、地域の人々にとって誇りとなり、クラブの文化と価値観を体現する存在となります。
経済的な要因: カンテラーノをトップチームに昇格させることは、クラブにとって経済的にもメリットがあります。自社のユースアカデミーから選手を育成し、トップチームで成功させることによって、大金をかけて他のクラブから選手を獲得する必要がなくなります。これにより、クラブの経済的な負担が軽減されます。
長期的な戦略と継続性: カンテラーノを重用することにより、クラブは長期的な戦略を追求し、継続性を確保することができます。若手選手はクラブの哲学やスタイルに早くから慣れることができ、トップチームでのプレー経験を積むことで成長し、将来的には主力選手やリーダーとしてクラブを支えることが期待されます。
まとめ
さてここまで外部的な要因と内部的な要因でバルセロナというクラブを再認識してきました。まとめるとこんな感じですかね
・バルサはソシオ制のクラブ
・歴史的背景としてカタルーニャを代表するクラブ
・トータルフットボールというサッカーの哲学を持つ
・↑の考え方を持つラマシア出身選手で構築するクラブ
ここまで見てくるとバルセロナは、外から選手を取るクラブではないということがわかると思います。ラマシアで、哲学を学んだ選手をトップチームに昇格させ、さらに育て上げていき、同じ考えを共有した選手同士でチームを構成していく。そうすることにより、強力な攻撃力とポゼッションを誇るチームが作れるとともに、クラブの経済的にもいい効果が生まれる。ラマシア出身のカンテラーノを使うことで地域との信頼関係も築くことができ、民間の関心を引き寄せることができる。さまざまないい効果がありますよね。
結果としてペップバルサという歴史上三本の指に入る最強チームを構築することができましたわけです。しかし最初にも述べたようにそのカンテラ出身の選手は年々減りつつあり、クラブの資金力以上の選手を外から取ってくることが増えてきました。
現代フットボールにおいて、トータルフットボールにおける限界がきていることを感じることも増えてきました。どこのチームも今や流動的なサッカーは当たり前、中盤を使ってサッカーを組み立てることは当たり前になってきています。プレスの強度も組織的になってきていて回避するのが難しくなってきているのも事実。ですが、私はバルセロナのアイデンティティ・哲学を捨ててしまうのはもったいないと感じています。
ポジショニングやショートパスを使ったティキタカをも一度蘇らせることができれば現代フットボールでもやっていけるはずだと考えています。夢をみるなという意見もあると思いますが、私はいつまでもバルセロナの哲学が蘇ることを祈っていますし、そのために心のクラブとして応援し続けようと思います。