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雑記帳 その5 エイリアン:ロムルス


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 グロい映画の代表格である.映画館で,お隣にいたカップルは,最新作のあまりのひどさに途中退席してしまった.しかし,私個人は,第一作から欠かさず映画館で観ており,恥ずかしながら第一作の特別版BDも買ってしまった.今回も,「エイリアン:ロムルス」も爆音で見てきてしまって,これを書いている.
 舞台は,スーパーアースらしいリング(字幕では小惑星帯)を持つ鉱山惑星である.中心星に近いために潮汐による加熱で火成活動が活発だ.火山噴火によるダストに覆われ,地表では陽の目が観られない.ダストで覆われているので,中心星に近くても地表温度はハビタブルゾーンになっていて,人間は宇宙服を着用しなくても生活できている.劣悪な鉱山労働で両親を亡くした主人公は,別の惑星に移住して地平から中心星が昇る眺めを見るのが夢である.
 私も元鉱山労働者だが,実際,鉱山は地の果てのようなところである.それを差し引いても,22世紀の設定にしては,メカの操作はトグルスイッチだし,宇宙ステーションのハッチは機械式の鍵つきだし,AIやバイオテクノロジーは現在の科学技術からいってもレベルが低すぎる.ハッチが壊れて宇宙船の気密が破られても,なかの人間は大丈夫という,科学考証無視の無茶ぶりも相変わらずで笑える.スターウォーズなどのカッコいい夢のある宇宙戦争ものとは一線を画している.
 この映画のハリウッド流のメッセージとしては,Never Give Upである.どんな苦境にたっても,知恵と勇気で立ち向かえば未来は開けるのだ.ただ,私たちは,実際には,そんなにうまくいかないことをよく知っているから,それだけではリピートして見てしまう理由の説明としては十分でないような気がする.
 グロいのが分かっているのに,なぜ観てしまうのかは,正直ナゾである.制作側も,インテリジェント・デザインとかを背景にした第三作以降の作品の評価がいまいちだったので,45年前に大入りになった第一作の設定に戻ったのかもしれない.第一作と第二作,そして最新作の設定はお約束で共通している.資本主義のもとで,営利企業の掟は日本に限らず世界共通だ.掟を優先する上司,バラバラな職場の人間関係,頼りになる同僚は僅かで,しかもバタバタと討ち死にしてしまう.AIは人間と違う掟で動き,アンドロイドは「トロッコ問題」も躊躇なく選択する不気味な存在だ.こうした状況は,あなたのまわりにも常にあるはずだ,とリドリー・スコットは言っているようではある.クリーチャーがウジャウジャ出てきてもなんとかなるんだから,エイリアンがいないとこなら,もっとうまくいくはずだ,と映画を見て勘違いしてもよいではないでしょうか,というところか?
 表題のロムルスは,ローマ帝国建国神話にちなんでいるが,宇宙ステーションはロムルスの双子の弟の名前もついているらしい.続編は,エイリアン:レムスかも.

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