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善意の焼き鳥屋さん

子どもたちに食物アレルギーがあったので
原則的に外食はしなかったが
時にはお祭り的に特別の時間を過ごさせたくてお店に行った。
危険の少ないお店は、うどん屋さんと、あと、焼き鳥屋さんも結構使えた。
焼き鳥以外にも子どもが好きなピーマンやネギなどの野菜串があったし
何より、色々なおにぎりが選べて良かった。
そういうわけで、ある年札幌雪まつりを見に行くことにして
夕食はマチナカの開店早々の焼き鳥屋さんにした。
さて、子どもたちに好きなおにぎりを選ばせ、野菜串と味噌汁を注文して
雪まつりに外食だー♪と
大盛り上がりで食べていたところ
着物姿の女将と思しき方が「失礼します」と現れて
「これ、ウチの板さんからです」と
子どもたちの前にひとつずつ置かれた小皿の上には
一切れのだし巻き卵(!!)
「ウチにはお子さんが食べるようなものが無くて、すみません」
瞬間、頭の中は大パニック。やっとのことで
「あ、ありがとうございます・・・」
注文していない食べ物が出てくるとは想定外だった。
子どもたちが初めて見ただし巻き卵に興奮している。
「これなに?これなに?」
「うん、これはだし巻き卵といって卵焼きだけど、一切れなら大丈夫だよ」

(半分はだし汁だから、一切れくらい大丈夫)
(バターが入ってないから大丈夫)

子どもたちに笑顔を向けながら自分に言い聞かせる。
「おいしい?よかったね」
食べ終えて大きな声でごちそうさまを言って店を出たが
女将さんや板さんはにこにこと見送ってくれたが
笑顔で店を出る自分の気持ちは大嵐だった。
もちろん、女将さんや板さんはとても優しい人たちで
だからこそ、母子三人の親子連れをかわいそうに思って
だし巻き卵でもてなしてくれたのだが
一言、確認してほしかったなあ。
でもまあ、食事時のお菓子だったら親に確認したりするが
食物アレルギーだなんて、想定外だったよなあ。

子どもの食物アレルギーは
もしかして自分の思い込みかも・そうだったらうれしい
と思ったこともあったが
よそに遊びに行って
ポテトチップスやらジュースやらチョコレートやら食べてくると
必ず夜になってかゆくて起きて泣いたり湿疹が出たりした。
しかし
人との付き合いはせねばならぬ。
で、困ったのが「手土産」。
こちらがいくら事情を説明して食べ物は持ってこないでと言っておいても
「果物ならいいでしょう?」とか
「果汁100パーセントよ♪」とか
「手ぶらで行くわけにはイカナイ!」とばかりに
普段うちでは避けている食べ物を持ってきて
子どもの目の前に差し出されたら、取り上げるわけにもいかず・・・
結局夜中にかゆがって起きて泣いたりするのはウチの子たちで
それで寝不足になるのは親の自分だ。
「少しずつ慣らさなきゃだめよ」だの
「制限しているといやしくなるよ」だの
「あらー、普通のおやつ食べられないの?かわいそうにね」
などなど、ずいぶん言われた。
かわいそうと言われるとホントにかわいそうになってしまうから、と
せめて子どもの前ではかわいそうって言わないで下さいと言っても
だって、かわいそうでしょう!と・・・。
大変だけど、かわいそうじゃない。

そんな中、ちゃんと話を聴いてくれて
どういうものならいいの?と確認してくれて
ウチの子たちが食べている地味なおやつを見て
「あらー、美味しそうなおやつねー、おばさんも食べたいわ~♪」
と言って下さる方が。
天使に見えましたがな。
科学的な知識云々以前の問題なのだと気付いたのはここからだと思う。

現在子どもたちは自分で体調を管理しつつ元気に暮らしている。