見出し画像

おもいきって『リンダリンダリンダ』してみよう。 —食べるマガジン『KUKUMU』に寄せて—

食べるマガジン『KUKUMU』が創刊されました!

「ひとくち、ひとやすみ。」をコンセプトに、食べることやおいしいものにまつわる読みものをお届けするnoteマガジン『KUKUMU』。2022年5月に創刊されました!毎週水曜日の21時に更新予定。私もライターとして参加しています。


マガジンの詳細についてはこちらをどうぞ!マガジンの発起人であり、編集長でもある栗田真希さんがわかりやすくまとめてくださっています。

『KUKUMU』がリリースされてまだ1週間ですが、いろんな方々に注目いただけてドキドキしっぱなしです。ほんとうにありがたい。
せっかくなので、私個人の視点から見た『KUKUMU』創刊に至るまでの色々を、備忘録的に残しておきたいなあと思いました。はじまりは2022年2月18日に遡ります。
***

2/18(金) 栗田真希の発想にうなる。

2/18(金)。夕食後、ゆっくりとTwitterをながめていた私。ふと目に飛びこんできた、ひとつのつぶやきに思わず唸った。

「うーん、栗田さんはやっぱりすごいなあ」。
栗田さんは、webメディア『Hasami Life』で活躍するライター・編集者。トップライター・古賀史健さんが講師をつとめるライティング講座『バトンズの学校』で出会った同期だ。
「1000枚のフィードバック」をコンセプトにした『バトンズの学校』では、受講生が提出した原稿に対して、古賀さんが手書きで朱入れした「添削」とA4原稿1枚半~2枚程の「総評」が返ってくる。私たち受講生はくる月もくる月も、課題原稿を必死に書いては提出し、古賀さんからの愛情あふれるフィードバックを受け取った。その、共に汗をかいた32名の仲間たちのなかに栗田さんはいたのだ。
ライター未経験の私にとっては、毎月大波のように押し寄せる大量のフィードバックに食らいつくことだけで精一杯。まわりの仲間たちの様子に気を配る余裕などまったくなかった。けれど、不思議と栗田さんの存在は初回講義のときからすごーく気になっていた。なぜなら彼女の書く原稿は、とっても読みやすく、伝わりやすく、いつだって取材対象に愛がこもっていたから。余念のない下準備と熱量がにじむ原稿に、プロのライターとしての確かな力を感じさせられた。
そうそう。彼女の情熱や真摯さを具体的に感じた忘れられない出来事がある。それは学校も終盤を迎えたころ。半年間の学校を振り返る場面で「課題にはどのように取り組んできましたか?」と同期の一人に問われた彼女はサラリとこう答えたのだ。

「平日は定時で仕事を終わらしたあと、すぐに課題をやるって感じでした。土日のお休みも朝から晩まで机に向かって課題原稿を書いていましたねぇ。もちろん息抜きも入れつつって感じで!」

このすごさ、伝わるだろうか。彼女はライターを生業にしているから、日中ずっと書いている。そして仕事が終わった後もそのまま課題原稿を書き続け、そのうえ休みの日だってやっぱり書いているのである。止まらない女・栗田真希。
私はというと、課題に対して自分史上最高の努力を尽くしてきた自負はあった。けれどよくよく振り返れば、書く時間より子どもに世話を焼いている時間のほうが圧倒的に長かったし、息抜きのレベルを超えたダラダラタイムも毎日必ず死守していた。時間のかけ方、努力の仕方が半端じゃない彼女の姿勢を思うと、頭をガーンと打たれたような気持ちになったのを覚えている。

そんなライターとして確かな筆力を持ち、人並みはずれた努力家でもある彼女が、noteマガジンをつくるのだという。
「やっぱ栗田さんが考えることはちがうなあ」。私は「いいね」を押して、Twitterのタイムラインをスクロールした。

2/19(土) 栗田真希の行動力に舌を巻く。

翌日のTwitter。

はやい。はやいよ、栗田さん。予想を超えるスピード感にビビってふるえる。それにしても『最高の相談役』とは何者だろうか。彼女の人脈の広さにも畏れを抱いてしまう。「まったくおっかねぇ~」。そうつぶやいたあと、私は「いいね」を押した。

2/20(日) バンドをはじめるらしい栗田真希に興奮する。

そしてまた次の日。

『最高の相談役』とは、noteの元プロデューサーみずのけいすけさんのことだった。現在はフリーランスでnoteのコンサルタントをされているとのこと。確かにこれ以上ない『最高の相談役』である。noteを知り尽くすプロと繋がりを持っているなんて、なにやらスゴイ人だよ、栗田さんは。
彼女の人脈に感心しつつ、みずのさんの「バンドみたいじゃん」という言葉に、私はドキドキした。

突然ですが、「バンド」という単語を聞いて、みなさんは何を想像しますか? お気に入りの推しバンド?時代の代名詞ともいえる伝説的なロック・バンド? などなどいろいろあると思うけれど、私がまっさきにイメージしたのは、映画『リンダリンダリンダ』だった。

(C)2005「リンダリンダリンダ」パートナーズ

2005年に公開された映画なのでまあまあ古い。公開当時から、わたしはこの作品が大好きなのだ。

舞台は文化祭本番を間近に控えた とある田舎の高校。文化祭本番までのたった3日の間に、4人の女の子たちがバンドを結成し、練習しまくり、ときにサボり、恋もして、最終的には文化祭のハレ舞台でTHE BLUE HEARTSの『リンダリンダ』や『終わらない歌』などを披露するお話だ。
まさに青春のどまんなかを打ち抜く群像劇。パッと見ムチャな内容にも思えるけれど、思春期ならではのダルくてダメな感じ、友達同士のなんともいえない親密な空気、好きなことにまっすぐエネルギーをぶつける若者たちの清々しさがリアルに描写されていて、あっという間に引き込まれる。

「私たちがやってることに意味なんてない。ただ好きだから、ただおもしろいから、夢中でやってるんだ!」と言わんばかりの彼女たちの純粋な姿がとってもいい。特に物語の終盤。舞台に立ち、まさに演奏せんとするその瞬間、メンバー同士がお互いの目を見合わせ、無言でニヤリと微笑みを交わすシーンなどはたまらない。ソロではなく複数人でやることのおもしろさが、この瞬間に詰まっているよう。大好きなワンシーン。
これぞ青春。あぁ最高!

というわけで、私は興奮した。
「おうおうおうおうおう、栗田さん。あなた『リンダリンダリンダ』しちゃうってのかい?」

書くことに並ならぬ情熱を持つ彼女は、なんとみずから「場」をつくり、まわりを巻き込み、純粋に思う存分楽しもうとしている。『リンダリンダリンダ』しようとしている。しかもものすごい勢いで。
すごいなあ! 新しい場を企て実行しようとしている彼女を、ただただ尊敬した。そしてそのバイタリティにちょっと嫉妬もした。いやいやいやいや、いけないいけないいけない。私は私、である。自分のできる範囲で書くことを続けるのみ。気持ちを取り直して、尊敬と応援の気持ちをこめ、私は「いいね」を押し、Twitterを閉じた。


3/7 (金) 「バンドやらない?」栗田真希からの突然のお誘いに動揺を隠せない。

そろそろ22時になろうとする頃。『バトンズの学校』のスラックがメッセージの着信を知らせた。アプリをタップして確認すると、送り主は栗田さん。「なんだろう?」。不思議に思ってメッセ―ジを開く。

「こんばんは。突然ですが、わたしと一緒にnoteでwebマガジンをはじめませんか?」

そんな一文から始まるメッセージは、とても真摯で情熱的だった。私の文章を気に入ってくれているということ。私のほかにも3人の方々に声をかけていること。その方々はまだライターが本職ではない人たちで、いずれも『バトンズの学校』の仲間だということ。そして、栗田さんが考えているマガジンの構想に関しても丁寧に説明してくれていた。
いただいたメッセージを読みながら、私はすごーくよろこんだ。でもそれ以上におどろきが勝って目を白黒させていた。まるで、買ったおぼえのない宝くじが財布から出てきて試しにネットで見てみたら5億円当たっていた、なんていう現実味のない夢を見ているような、そんな気分。「私でいいの? 大丈夫?」というネガティブな不安ももちろんあった。

動揺を隠せない複雑な気分で読み進める。もっとも心揺さぶられたのは、結びに書かれた一文だった。

「どうしたらもっと森川さんたちまだライターが本職ではない人たちが書いたものを読めるかな? そして多くの人に知ってもらえるかな?」という気持ちからスタートしています。なので、どんなwebマガジンにするかはこれから柔軟にみんなで考えていきたいと思っています。

「なんちゅう高い志や……」。私は脱帽した。栗田さんの情熱や興味が注がれる先は、己のことのみにとどまらないらしい。あふれんばかりの愛情で、仲間の未来にも気をかけて、私を含めた彼女らのチャレンジする場をつくろうとしてくれている。けっこうバカにならない時間や手間を度外視してまでも「あなたたちの原稿が読みたい」と言ってくれる栗田さん。その発想は、若手発掘に力を注ぐ名編集者、もしくはエンジェル投資家のそれである。想像の斜め上をいく女・栗田真希。まったく、参った。参りました。

「私のような未熟者で果たして務まるのだろうか」。不安が頭をよぎるけれど、断るという選択肢はない。すべてが規格外の女・栗田真希、そしてライターの仲間たちと共に、思いっきり真剣に、夢中になって、書いてみたい。つくってみたい。おもしろがりたい。心からそう思えた。

「37歳だけど、あなたと『リンダリンダリンダ』してもいいですか?」
心のうちでそうつぶやきながら、私は承諾の返信を送った。


3/15(火) 『KUKUMU』始動。そして、それから。

20時にZoomを接続して、マガジンメンバーとキックオフミーティングを開催。栗田さんが「noteでマガジンやりたい」とTwitterしてから1カ月も経たないうちにバンドは結成されたのである。世間を賑わしていいほどの超スピード結成だ。集ったメンバーは、栗田真希さん、木村りささんよしザわ るなさん渡辺凜々子さん。みな『バトンズの学校』で切磋琢磨した仲間であり、心から尊敬する書き手ばかりだ。そして真希さんの情熱に惚れたメンバーたちでもある。

真希さんのリードのもとミーティングは進んでいった。みなお互いを知る者同士とはいえ、直接会話を交わしたのは数えるほど。手探りのスタートだったけれど、純粋に書くことが好きで集まったメンバーだ。あっという間に議論に夢中になり、遠慮することなく意見を伝え、受け止め、尊重し合い、少しずつチームのかたちをなしてきた。そしてマガジン『KUKUMU』というタイトルが決まり、更新日時が決まり、ロゴやバナーの方向性も決まった。

「ほんとうに始まるんだな」。この仲間のなかで私は書いていけるんだと思うと、胸がドキドキ高鳴る。後悔のないよう、ここで「書くこと」にありったけの力をぶつけよう。そしていつか、読者に届いた! という実感が持てた日には、メンバー同士、お互いにアイコンタクトを送りながら無言でニヤリと不敵な笑みを交わせたらいいな。
そんなことを思いながら、私はZoomを閉じた。3/15(火)、22時30分のお話。

***

先週5/12(水)。ついにマガジン『KUKUMU』最初の記事が公開されました。

トップバッターは渡辺凜々子さん。凜々子さんのおうちに流れる、やさしくって美味しい空気を味わえるエッセイです。幸せなひとときに、ときおり混ざる切なさがこれまたいいんです。是非読んでみてください!

そしてそして。今日5/18(水)21:00。マガジン『KUKUMU』、更新予定です。どうぞお楽しみに!!

いいなと思ったら応援しよう!