『下午のまち銭湯』㉕鷲の湯(横浜七島町)
銭湯は昼まえに行くに限る。
横浜銭湯
銭湯処。日本には銭湯が特に集中的に点在しているところがあったりする。ぼくが日々巡っている東京二十三区がまさにそれで、数が少なくなったといってもかなりの数の銭湯が日常に溶け込んでいる。ほかには大阪や京都には数多くの銭湯がまだ生き残っているし名古屋などもそう呼んでもいい。ほかに・・・関東でいうと・・・そう横浜。
東京銭湯の多種多様を味わってしまうとわざわざ多摩川を超えてそっちの銭湯までとはなかなかならない。なんといっても多摩川手前にはかの蒲田があるのだ。銭湯好きならこれを無視して対岸にとはなかなかならない。
といったことでぼくはあまり横浜銭湯にはいかないのが現状。勿体ないのよね。せっかくね。
某日日曜。横浜在住の友人から中華街でランチしようとお誘いを受ける。昼集合なので朝サウナでも行ってさっぱりしてからいこうかなと思ったのだけどせっかくだから横浜銭湯に行こうと探してみる。すると子安に日曜午前営業している銭湯を見つけた。よしここに行こう。
京急線に揺られ子安まで向かう。駅を降りるとそこは横浜といっても港方面の都会感とは違い日常感を感じさせる簡素な住宅街といった雰囲気。駅からすぐに商店街が続いていてその中を歩いていく。
しばらく歩くと大通りにでる。大通りの向こう側に大きな看板のあるビルがある。あれが目的地鷲の湯のようだ。
鷲の湯
近くで見るとやはりかなり大きいビルディング銭湯。一階部分は吹き抜けで駐車場になっている。普通まち銭湯というのは周りの住宅に紛れて隠れるように鎮座しているものだけど、ここは「俺をみろ!」と言わんばかりの自己アピール。健康ランド・・いやもうスーパー銭湯気取りの見た目だ。これで普通の銭湯だっていうのだから恐れ入る。一方で一階部分にはコインランドリーがあってこういうのを見るとやっぱりまち銭湯なんだなとなる。
端に入り口がある。入るとすぐに下駄箱がある。100円を入れて、まわすとかかるシリンダータイプのものだ。開けるときに戻ってくるので実質料金はかからないのだけれど、ぼくはたまに100円を回収し忘れてしまうことがある・・・そういう時は何とも言えない嫌な気分になる。気をつけないと。
下駄箱に靴を入れるとすぐに上に上る階段がある。それを上ってゆくと二階部分にロビーがでんと現れる。ロビーはかなり広めで奥の方にはカウンター席があったり、漫画本があったり休憩室のようになっている。入口のところに発券機があってそこで入浴料を払う。入場料は500円。東京と一緒で最近値上がりしたよう。フロント番台でチケットを渡して暖簾をくぐり脱衣場に入る。脱衣場はややいびつな台形でそこに紺色のロッカーが積まれている。大きな鏡や飲料自販機、マッサージチェアなどがあってロッカーの上からは扇風機がしっかりとした風を送ってくれている。このロッカーも100円リターン式。
浴場に入場。広い。銭湯として広い部類に入るっていうのもあるのだけれど、天井が高く開放的なのでより大きく見える。全面的に白いタイル張りの無機質なつくり。正面にかなり大きないびつな浴槽があって、奥側に少し小さめの2つの浴槽。その奥には外に出られる扉とサウナ室が見える。左側にはアクリルで仕切られた部屋がある。入口の右側にラックがあってそこに桶が積まれている。桶は黄色の桶で無地のものもあればケロリン表記や別の製薬会社の表記のものなどいろいろ混ざった感じ。
桶を手に取りカランに移動。入口の正面下に八角形の柱を短く切った形状の石の周りを取り囲むように蛇口が設置されているカランがある。地方の銭湯によくあるタイプだけど東京銭湯だとなかなか見ることのないレアアイテム。その奥右側の壁に沿ってずらっとカランが設置。数は24か所と多く八角形カランの4つもたすと28か所にもなる。カランにはボディソープが設置されている。お客さんはかなりいる。日曜日ということもあるがこの昼前の時間なのに盛況。駐車場があるので車で来てる人も多いのだろう。
カランのある側の壁には病院の待合室なんかによくあるモザイク状の摺りガラスがあって光が差し込んでいる。浴場内には柱が立っていてこの周りが竹状のタイルで加工されている。うっすらと青っぽい色。女湯とは天井が空間共有なので向こう側がちらっと見えるけれど、あっちはどうも赤っぽい。男湯と女湯では微妙に配色を変えているのかなと想像できる。
浴槽に移動。大きな主浴槽から入る。しゃぽん。足入湯。大きな浴槽なので温度がぬるいかなとも思ったけれどそんなこともなくあたたかい。浴槽は浅めなんだけれどもディープブルーのタイルで作られていて深みを感じる。浴槽の真ん中に球体があって噴水のようにそこからお湯が沸きだしている。この浴槽だけで普通の銭湯の3浴槽分くらいある。奥の方にジェットバスコーナーがあったのでそっちにいってみる。
ジェットバスは3基ある。寝風呂式のジェットバスとボディージェット、それとハイパワージェットという立ち風呂式のジェット。普通の座風呂タイプのはない。寝風呂式からいただく。ジェットの感度はやや弱め・・・というか普通。これが普通のマッサージ風呂なんだろうけどまち銭湯の強烈なタイプが基準になってしまっているから感覚がズレてしまっている。隣のボディジェット。四方八方からジェットが噴射されている。中に入りゆっくり回転しながら全身に噴射させる。ここもジェットは弱め。隣はハイパワーなのでそっちに期待。ハイパワージェットを味わう。お腹部分からドンと突入。ほかの二つよりは強いけどここもやや弱め。
身体が火照ってきたので一度浴槽を出てそのまま水風呂に向かう。ぐるっと大きな主浴槽を迂回するような形で奥の水風呂に向かう。水風呂の中を覗いてみると真っ黒だ。大田区の銭湯がそうであるように東京湾沿いはこの黒い源泉が湧き出ている。そうここは黒湯温泉の銭湯なのだ。そしてここは水風呂も黒湯。足を入れる。黒湯特有のトロッとした感触が体を包む。サウナがある銭湯なので水温もしっかり冷たい。冷たい感触がヒタっとからだに吸い付く感じで気持ちいい。
普段より少々長めに水風呂に浸かったらそのまま、温泉浴槽へ行く。主浴槽にくっついた長方形の浴槽。ここも黒湯源泉の浴槽だ。入湯する。黒湯から黒湯の交互浴。贅沢。温度はぬるめだ。肌に伝わるふわっとした感触。みると気泡が体を包んでいる。ここは黒湯だけではなく高濃度炭酸風呂でもある。水風呂で冷えた体を炭酸黒湯がじわりじわりと温めていく。
黒湯温泉を出てカランで一休みした後は再び主浴槽へ。主浴槽の一角が竹の囲いで部屋になっている。なかに入るともわっと蒸気。まるでミストサウナだ。壁沿いにベンチがあるので座る。天井からビチビチとうたせ湯のようにお湯が落ちてきている。湯の出どころには石のブロックがある。前の壁に説明書きがありこの石は北投石と言う石で日本では秋田県でしか採掘されない天然記念物なんだそうだ。この石がラドンを発生することでそこから沸いた温泉はとても優れた効能を発揮する源泉になるらしい。そのラドン湯で有名な秋田県の玉川温泉を再現したのが、この鷲の湯の主浴槽。
肩までつかってみる。隔離された個室内にミストが充満してむわっとする。下からは北投石の湯が体をじわじわ温める。ポカポカしてきた。完全に温泉だ。これは冬に来たら気持ちいいだろうなぁ。そのままベンチに座ってまったりする。ふと後ろを見るとガラスの向こうにもう一つ個室がある。浴槽から上がってそっちに行ってみる。
ガラス張りの部屋の中には浴槽があってそこはアロマ湯となっていた。ようするに薬湯である。アロマのいい香りの入浴剤とバイブラ仕様の湯がふわっと身体を包み込んでリフレッシュ。
アロマ浴槽の後は露天に向かう。主浴槽やカランの中を突っ切って浴場の一番奥に露天風呂の入り口がある。扉の上の壁をふと見ると鷲の彫刻が飾ってある。鷲の湯の鷲はあの鳥の鷲のことなんだなぁ。なんで鷲なのだろうか?
露天はかなり本格的。岩風呂使用。日本庭園にある池のようないで立ち。風情を感じる。当然ここも黒湯。完全にこれは温泉地じゃないか。空を見る。良く晴れた晴天。ここは二階。ちょっと空に近い。このちょっとが特別なんだ。
露天からあがって立ちシャワーを浴びに行く。体が火照っているので水をあびる。ドボドボと大粒の水滴が落ちてきた。シャワーの出どころを見るとギザギザ加工がしてある。アクア東中野にあったやつと同じシャワーだ。バチバチと皮膚を刺激してきて気持ちいい。
気付くと結構な時間たっている。そろそろ行かないと待ち合わせに遅れちゃう。これでサウナも利用したら完全に二時間コースだなぁ。そうなったらもうスーパー銭湯じゃないか。家の近くにあったらサウナ利用で休日の朝からがっつり利用するだろうなぁ。
脱衣場に戻り服を着替える。階段を下りて外に出る。いい天気。そしていい風呂だった。充実の設備と極上の温泉湯。凄い銭湯だ。こいつは・・・デラックス銭湯だ。これは一度だけではもったいない。通いたくなる。行きつけにしたい銭湯だ。横浜の銭湯凄まじい。
さて汗をたくさん書いたのでお腹空いた。中華街へいこう。何食べようか・・・豚まんがいいな・・・いやぁシウマイかな・・・ウキウキ気分で駅まで歩く。
ふと足を止める。
しまった。下駄箱の100円回収し忘れた!
銭湯の詳細
『鷲の湯』[所在地]神奈川県横浜市神奈川区七島町[最寄り駅]京急本線 子安駅下車4分[営業時間]平 日11:00~24:00 日曜・祭日10:00~24:00[定休日]不定休[入浴料]500円[サウナ]200円
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