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【旅行記】02:企画展「平田晃久─人間の波打ちぎわ」@練馬区立美術館

久しぶりの旅行記になってしまいました。
今年もいろんな美術館にお邪魔していますが、毎度懲りずに思うことは、本当にこの世には面白い展示が多過ぎるということ。

ここだけの話、前回のN's Yard(奈良美智さんの個人美術館)からもめちゃくちゃいろんな展示に行っているのですが、文字にまとめる時間がなくて下書きが溜まりに溜まっています。南無。

前回の記事はこちらからご覧ください。

これ以降も別の企画展で何度か奈良美智さんの作品を見る機会がありましたが、やっぱいつ見てもいいですね〜👀

さて、今回ご紹介するのは練馬区立美術館で開催されている企画展「平田晃久─人間の波打ちぎわ」
面白い立体作品がたくさんありました!

この記事を読んで少しでも美術館や建築に興味を持ってもらえると嬉しいですし、実際に足を運んでもらえたらもっと嬉しいです。

企画展の概要

まえばしガレリア(平田晃久氏 設計)

 ※お急ぎの方は読み飛ばして大丈夫です

練馬区立美術館では、建築家・平田晃久の建築世界を紹介する展覧会を開催します。
「建築とは<からまりしろ>をつくることである」というコンセプトは、平田の建築に一貫しています。
平田の造語である<からまりしろ>とは、はっきりと形作られる空間領域とは異なり、「ふわふわとした隙間の錯綜」、つまりはあらゆる物質の傍らとも言える領域の重なりを指します。それは人間世界に限ったことではなく、植物、動物、異なる時空の文化なども含んだ広義での生命体との共有可能性を探る試みでもあり、人間が狭い意味での「人間」から自由になる未来に向けた試みでもあります。

平田のコンセプトが形となった公共建築としては、2022年に日本建築学会賞を受賞した「太田市美術館・図書館」(2017年)が代表されますが、区切られた空間や内と外が絡まりあう<からまりしろ>を実現した地域のランドマークとして市民に愛されています。
また複数の住居や商業施設なども手掛け、平田の哲学的理論と自然や生命への憧憬が反映された独創性あふれる空間を現出しています。

このたび、これらの代表的な建築作品群に、練馬区立美術館も新しく加わることとなりました。
平田氏によると図書館と一体化し、融合する新生美術館の建築コンセプトは、「21世紀の富士塚/アートの雲/本の山」。
練馬に古くから存在する「富士塚」をテーマに、「美術と本」を街や人々とつなぐ場として構想されました。当館は、約40年にわたる歩みを継承しつつも、このコンセプトのもと新しい局面を迎えることとなります。

本展では、これまでの平田建築から新しい練馬区立美術館をはじめ、現在進行中のプロジェクト、そして未来への展望を踏まえて紹介します。
現代建築を代表する建築家・平田晃久の世界観をお楽しみください。


とのこと。
うーん、なんのこっちゃって感じですね。

これまで建築家の展示を見たことはありましたが、個人的に専門用語が多くて小難しいなと感じることが多々ありました。
実際、建築学生らしき人も見に来ていましたが「何言ってるか全然わかんね〜」と言いながら見ていて、やっぱそうなんだなと笑っちゃいましたね。
勇気と希望をありがとう(?)

おそらく皆さんも「どういうこと?」と思うことが多いと思うので、私の個人的な解釈や経験も交えつつ紹介していきます。
どうぞお楽しみください。


建築家の世界観

企画展の醍醐味といえば、作家たちのユニークな世界観に没入できること。
今回の展示では初めにこちらの立体作品が皆さんを出迎えます。

中に入ることもできます!

なんだか向こうが見えるけど、はっきりは見えない。
そもそも通り抜けられるのかもわからない。

そう、作品が表しているのはまさにそういった感覚。
「見通せない空間」です。
つながっているのに見通せない、同時に存在しているのに全ては見えない、そんな空間から平田晃久さんは「現代の人々の関係性を表すものになるのではないか」と建築への着想を得たそうです。

以前、予備校の立体課題でもこんな条件がありました。
「閉じていない立体物をつくりなさい。」
はて?閉じてなければ未完成に見えるのでは?と思ったものです。
この出題の意図は完成しているように見えるかどうかではなく、
 閉じている=密閉、閉塞感、完結
 閉じていない=永続的、開放感
といった新しい視点を取り入れるためのものでした。

簡単にまとめると、隙間をうまく作ること/余白の大切さを学びなさいという課題だったわけです。

ということで、先ほど紹介した『まえばしガレリア』もつながっていないのにまとまっている空間だということがわかると思います。

このあとも続々と出てきますが、平田晃久さんの武器は「整っているものを最小の要素に分解して再構築する」ことだと私は思います。

見てください!
この滑らかな曲線!
ところどころのエッジの効かせ方もお見事!

うむ。素晴らしい。
中に入って気づく同じ見え方がない複雑性に建築好きの血が滾りますね〜。

面白いのはやってることはそんなに難しくないというところです。
ねじってひねってを多方向にしているだけ。
シンプルなのに面白い、いやシンプルだからこそ面白い。
とてもとても勉強になります。

「整頓されたシンプルな作品」と「複雑に入り組んだ派手な作品」、どちらが優秀なのかと疑問に思う人もいるかもしれません。
写真みたいに絵がすごいのか、ピカソのように何を描いてるのかわからない絵がすごいのか。
好みだと言う人もいるでしょう。
私は、アートを学術的に捉えていない体験側にいる人にとってはそれでいいと思います。
好き嫌いだけで判断することも意味があります。

食にも好みがあるはずです。
日本食のように新鮮な素材を活用し、食材本来の旨みを引き出す調理法が好きな人もいるでしょうし、
フレンチのように膨大な作業工程と時間を経て、一枚の皿に味をまとめ上げる調理法が好きな人もいます。
私はどちらも好きです。
それでいいのです。そんなもんです。

ん?この例えはわかりやすいのでは?🤔
今後もたびたび登場するかもですねえ。


はい、気を取り直してお次はこちら。
同じ形態を組み合わせた作品。

三角を折ったり貼ったり
うにょうにょしたかっぱえびせん(?)

同じ形態を組み合わせる構成のことをユニット構成ともいいますが、全く同じもので構成されているわけではないのがいいですね〜。

平田晃久さん曰く、「限られた空間の中に表面積が最大化する時、自然界では立体的ないだが生まれる。たとえば煙、珊瑚、等々。そんなひだの幾何学的原理を応用して、たくさんのくからまりしろ>のある建築をつくる。」がこの作品群の根幹にあるそうです。

身近なもので例えるならホイップクリームを搾り出すあの瞬間でしょうか。
ケーキ屋さんのショーケースを見ていると、いろんな形のクリームが並んでいて、しかもそのどれもが整頓されていて言葉では言い表せない良さがあるんですよね〜。

レースみたいな形もありますよね

口金という型が限られた空間、そして口金を通って搾り出せる量には限度があるという縛りがあの美しいひだを生み出しているというわけです。

同じ形を組み合わせるというのは意外と身の回りにあるもの。
皆さんもぜひ探してみてくださいね。


今回のメインビジュアルとも言えるインスタレーション作品。
美術館に入ってすぐのエントランスに設置されており、黄色の波打ちぎわが企画展を象徴しているようです。

重なる布が生み出す無数の黄色
光の当たり方によっても色が移ろっていきます

さて、今回の企画展の見どころをわかっていただけましたか?
建築の企画展ではその建物がどのように設計されたのか、どういった特色のある土地に建てられたのか、また、住んでいる地域にどう溶け込んだのかを紹介することが多いです。
建築学生が勉強のために来ることが多いのも納得がいきます。

では、普段建築や設計に関わりのない私たちが展示を楽しむにはどういう視点が必要なのでしょうか。

私の楽しみ方を共有します。
あくまで楽しみ方の一つなので自分なりにカスタムしていってくださいね。

立体作品の楽しみ方、それは立体作品の形を「見て」、「触って」、作品そのものを面白さを見つけること。
(もちろん触っちゃだめな作品に触っちゃだめですよ)

彫刻や建築の模型といった「見たけどこれどう感じたらいいの?」と思う展示に大切なのは、形に反応することです。
ぜひその作品だけの面白さを探してみてくださいね。


練馬区立美術館で開催中の企画展「平田晃久─人間の波打ちぎわ」は9月23日(月・祝)まで。

概要にも書きましたが、この練馬区立美術館も今後、平田晃久さん設計のもと生まれ変わることが決まっています。
本展示ではコンペで発表された新練馬区立美術館の模型も公開されています。
ぜひ見に行ってくださいね〜。


ちなみに今後、長ーーーーい時間をかけてこれまで見てきた特別展や企画展を紹介していこうと思います。

ほとんどが会期を終えたものになりますが、これからも面白い展示は発表され続けるので、少しでも多くの人が美術館や博物館に足を運んでもらえるよう発信していきます。

皆さんといつかどこかの展示ですれ違えることを願っています。

それではまた〜

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