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指す将順位戦8th自戦記 B級2組 9回戦 (vs やきそば 3級[1331])
順調に勝ち星を重ねて昇級ラインに。
まさか今期もこんな感じに出来るとは初めは思っていなかったが、2週間という余裕のある準備期間と長い持ち時間が自分と親和性が高いのだと思う。
【対局前】
◇対局相手の印象
振り飛車党
初手に角道を開ける手から中飛車や三間飛車へ派生することが多いが、相手が居飛車を明示した場合は角換わりを志向することもある珍しいタイプのプレイヤー。
指す将順位戦の運営に携わっており、一方的にお世話になっているが そういった方とこの舞台で戦えることは純粋に嬉しい。
◇対戦成績
初手合い
まだ対戦はないが、自戦記や棋譜が豊富なのでそれを見て対策を考えていく。
やきそば3級も対局に際して準備をしてくるタイプだと思うので、一方的に作戦負けにならないように相応の準備をして臨みたい。
◇事前準備
やきそば3級の自戦記を対局前に改めて読んで、先後それぞれ作戦を組み立てていく。
[▲先手番]
こちらが先手番の場合は初手▲7六歩から相手の応手に合わせて戦型を使い分けたい。
①2手目△8四歩
やきそば3級がメタ読み込みで後手番で角換わりを迎え撃つ準備をしていた場合、こちらの初手▲7六歩に△8四歩と突いてくる可能性もある。
その場合は対策を見てみたいので素直に受けて立とうと思う。最新型での純度の高い研究勝負を期待したい。
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◎2手目△3四歩
▲7六歩に△3四歩はもう純粋な角換わりにはならないので、その変化はここで切って3手目▲5六歩というアプローチでいく予定。
以下も後手の指し手によって分岐する。
②4手目△8四歩(端歩突き越し+穴熊)
先手が中飛車を見せた場合、やきそば3級が居飛車に構える棋譜も複数見られた。その際一直線穴熊のような駒組みをされていたので対策していく。
まずはこちらが端歩を突き越して、後手が穴熊に組もうとした展開。
これにはトマホークのように桂馬を跳ねて先攻していく。
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実は前期6回戦でも試みた想定局面でもあり、そこでも触れたが△1二香に代えて△3二金でも▲1七桂で先手が有利。
③4手目△8四歩(端歩突き越し+美濃)
端歩を突き越した状態から、こちらの速攻を警戒して美濃囲いを作った場合の対策。
この場合でも桂馬を跳ねて居玉のまま攻め込んでいく。
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④4手目△8四歩(端歩突き合い)
端歩を突き合った場合は後手の囲いが遅れるので、穴熊か美濃か決まる前にこちらの攻めが始まる。
そのとき桂馬を跳ねていると逆に反動がキツイので、端歩を互いに突いた場合は跳ねずに仕掛けていく。
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角を逃げた場合は▲5四歩が飛車と角を一気に通す手が強烈で先手優勢。
⑤4手目△4四歩
▲7六歩△3四歩▲5六歩△4四歩と相振り飛車を見せられた場合は、5手目▲2六歩と居飛車に戻して対抗形で対応する。
前期6回戦から改めて考えてみたところ、やはり中飛車での相振り飛車は対向かい飛車が厳しい。
▲5六歩を突いているのでへなちょこ急戦のようなことは出来ないが、持久戦にして自然体で指していきたい。
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やきそば3級がよく指す5三銀型の変化の一例。
この指し方のネックは後手に雁木を志向されたときに▲5六歩が不要不急の一手になりかねない点だが、やきそば3級が雁木を指すことはないとみてこういう指し方を試してみる。
4手目△5四歩から相中飛車も一応考えられるが、これも可能性は薄いと思っている。一応前期6回戦での先手中飛車の課題局面の一つには入っているので軽く確認しておく。
[△後手番]
後手番の場合は2手目△8四歩で居飛車を指す。
先手がどういう指し方で来るかでやはり対応が変わってくる。
⑥角換わり
先手から角換わりを志向された場合はこちらもそれを受ける。角換わり拒否は有利の取り方が難しいし、やきそば級の角換わりを体感してみたい。
たまに早めに玉を上がるときがある気がするので、それに反応すれば早繰り銀になる可能性もある。
腰掛け銀のときは特に局面を設定せず元々の知識で戦うつもりだが、相早繰り銀の場合だけ一応前もって考えておく。
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実はこれも再登場局面。
noteでの最初の自戦記での想定局面の一つ。
お久しぶりです。
◎対先手中飛車
本命の先手中飛車に対しては後手超速の左美濃、あるいは穴熊で挑む。playshogiが良く指す形で ある程度のわかりやすさはあると思う。
後手超速二枚銀は居飛車の指し手が難しくまだ勝ちにくい気がする。
先手の指し方によってこちらの対応も変えていく。全体的になるる氏によって公開された研究動画を参照している部分が多い。
⑦対先手中飛車(6六銀型・中飛車のまま)
先手が6六銀型で5筋に飛車を置く場合は高美濃囲いに組んで袖飛車から銀交換を狙っていく。
△2四角からこのラインで角を使っていくのは前期11回戦の経験が活きてくることもありそうだ。
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⑧対先手中飛車(6六銀型・三間へ転換)
6六銀型で先手が3筋へ飛車を転換するのもよくある中飛車側の手の作り。
三間への転換には居飛車穴熊に組んで銀交換。
相手の作戦を見て後出しで囲いを使い分ける。
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以下は△4四歩を狙いつつ先手の攻めをいなす。
⑨対先手中飛車(6六銀型・振り飛車穴熊)
先手が穴熊に組む棋譜もあったので対策しておく。
△2四角と出て先手の駒組みを制限して、こちらも穴熊に組みつつ隙あらば仕掛けていく。
仮に膠着状態になっても後手番なら問題ない。
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⑩対先手中飛車(5六銀型・角上がり)
5六銀型には速攻を仕掛けるのは以前から変わらない。
先手が▲2八玉まで指して後手超速の形になった場合は銀を繰り出していくが、30手目△7六銀に対して角をどこに動かすかで展開が変わってくる。
▲6六角と上がった場合はすぐ△8六飛と走れるので銀を取らせている間に飛車先を突破していく。
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⑪対先手中飛車(5六銀型・角引き)
30手目△7六銀に▲6八角は8六に紐を付けた分飛車の横利きが止まっているので△8八歩から▲7七桂と指されて紐を外してから△8六飛。
ちなみに31手目▲5九角と引いた場合は△5四歩▲7八金△8八歩▲7七桂△5五歩でどうか。
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後手陣も薄いが先手も忙しく難しい勝負。
⑫対先手中飛車(早めの5六銀型)
守りよりも攻めを優先する攻撃的な中飛車の対策ももちろん必要。
やはり5六銀型を見た瞬間にこちらも攻めるので攻め合いになる。
詳しくは上記動画をご覧いただきたいが、飛車浮き+桂跳ねで先手の銀を殺して龍を作っておけば不満はない。
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以下▲3五歩にはおとなしく△3三歩としておいて龍を活かして良さを求めていく。
⑬対先手中飛車(居玉5六銀型)
もっと早く居玉のまま5六銀型に組む作戦も考えられるし、そのような構想のやきそば3級の棋譜もあった。
今期6回戦でも相手取った作戦だが、あのときは居飛車側も正着を指すのが難しかったので今回はまた違った違った作戦で挑む。
具体的には△5二金を省略して攻撃陣の展開を優先させる。
今期6回戦では△7三桂に▲6六歩と単純に受けられて止まってしまったが、今回は銀を早めに繰り出しているので▲6六歩に△5五銀があって大丈夫(5六銀型のままだともちろん数で負けるので先手の▲4五銀を見てから動き始める)。
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⑭対三間飛車
戦略家のやきそば3級のこと、これまで三間飛車対策に登板した雁木やへなちょこ急戦は対策を立てられているかもしれない。
そこで今回はまた新たな刺客を用意する。
その名もクソエルモ【裏式】。
……いや、ディスってないですよ。
そういう名称なのでしょうがないんです。
魚屋さんのブログで紹介されていた形だったんですが今は閲覧できなくなっています。
エルモ囲いといえば△3一金だけれど、それを△5一金としているのがポイント。
振り飛車は経験値で押していきたいだろうが、この形は滅多に相手にしたことがないはず。
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仕掛けに備えて四間飛車に振り直した展開だが、5一金型の効果で▲6一飛成などと出来なくなっている。
~対局前まとめ~
先手番なら初手▲7六歩から居飛車と中飛車を相手の対応に合わせて出す。
後手番なら2手目△8四歩から居飛車で迎え撃つ。
可能性は低いと思い想定局面は設定していないが、意表の四間飛車や後手超速に合わせた▲5四歩などは軽く確認くらいはしておく。
【対局開始ッ!】
先手:yakisoba3175(1331)
後手:SaisokuAmanogawa(1504)
(↓対局棋譜と振り返りは下記リンクからどうぞ!)
https://shogi.io/kifus/257589
◇急所の局面(41手目▲2四成銀まで)
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成銀を弾いた局面。
ここでは△5五桂が好手だった。
次の△6七桂成がわかっていても受けにくい。
▲5七飛には△5六香があるので無理やり受けるなら△7八銀だが……。
[基本図]以下 △5五桂 ▲7八銀 △4四香 ▲4八金左 →[a図]
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▲7八銀には△4四香と今度はこちらのコビンを狙う。
▲4八金左や▲4八銀などと受けるくらいだがそこで△5六桂が両取りになって技アリ。
△4四香が▲4六角の飛車取りを消しているのも大きい。
△4四香を指される前の[基本図]でやるとどうか?
[基本図]以下 △5五桂 ▲4六角 △4七桂成 ▲同玉 △4四香 →[b図]
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▲4六角には桂馬を捨てて玉をつりだすことで△4四香があとからでも効く形になる。
その他の変化でも▲4六角には△8六飛と走るなど自然な対応をしていくか、あるいは△4四香や△4七桂成(6七より4七に成るほうが評価値が高い場合もある。[基本図]以下▲2八玉など。しかしそれにも△6七桂成でも悪くはならない。)で▲4六角を事前に消しておけば大丈夫そうだ。
【対局後】
◇本局の振り返り
前回は特に先手番の作戦面で不備があったので、その分 本局は入念に準備できたのは良かった。
ただ研究が切れてから悪手を指して一時的に逆転を許してしまったのは残念。[急所の局面]で取り上げた△5五桂は観戦欄でも挙がっていた手だったし、決して見えない手ではなかったはず。
終盤はなんとか抜け出せたが紙一重の勝負。
同じ終盤でも自分は寄せより凌ぎの方が得意な気がするのでそういう展開になったのは幸運だったか。寄せと凌ぎで得意不得意が変わるのは「今が詰ますところだぞ!」というスイッチを自分で入れるのが苦手なんじゃないかと思っている(凌ぎの場合は明らかに詰めろの攻めの手が飛んできて相手からスイッチを入れてくれることが多いが寄せは自分でギアチェンジしなければならない)。
本局は指していて楽しい一局だったが、勝ったからそう言えているのかもしれない。
今後も勝っていくためには終盤の嗅覚を鋭くしなければ。
◇最後に
自戦記執筆が一回ストップしたタイミングからどんどん引き延ばされてかなり時間がかかってしまいました。
(これを書いている時点でもう11回戦まで指し終えているという……。)
10回戦、11回戦もしっかり執筆するのでもうしばらくお待ちください。それじゃあ。