#5 ありきたりなものほど、心を動かす
(15歳になった時に、わが子に渡す手紙です)
仕事納めの日、家に帰ると
「今年一年お疲れ様」とバラを一輪もらいました。
覚えていますか。
君が母親に頼んで買ってもらったバラです。
君の母が「今日でパパは今年のお仕事終わりなんだよ」と言うと、君は「だったら、お花あげたらいいんじゃない」と母親に言ったそうです。
どこまでもストレートな心根に、心洗われる気持ちになりました。
4歳の子どもがどうしてプレゼントに花をあげる
と理解しているのか。
私には、理由がわかります。
これは、絵本で学んだことだよ、きっと。
おばあさんに会いに行くのに、
花を持った女の子が出てくる話が君は好きでした。
当日の君は直接渡したいと、頑張って起きていたようだけど、眠さに勝てず、帰ってくる前に寝てしまったようです。
次の朝、恥ずかしそうに父親の部屋にきて、お花の話をしてくれました。
ありきたりのことって、大人になると意外に避けることが多い。プレゼントに花を渡すこととか、感謝やお祝いの手紙を書くとか、お土産を買うとか。
でもね、そういったありきたりなプレゼントや言葉ほど、相手を喜ばせるのではないか、って思います。
相手を驚かせるようなすごい演出やプレゼントも良いけれど、昔からあるやり方で、定番のものって良いよ。多くの人が良いと思うから定番になっているわけだから。
本だって一緒。古典って言われる本は、何百年も前に書かれたものもある。その年から現在まで何万、何億と本が書かれているはず。その中で現代まで残っているんだから、それだけですごいことだね。
周りの人と一緒だと嫌、自分が特別になりたいって思ったりするのも良いけれど、定番や普通ってのも、たまには良いよ。
君が、まだ多くのことを知らないで、父親に花をプレゼントしたように。