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セルフもぐら叩きの不毛さ

通勤途上の地下鉄乗換駅で必ずチェックするのがフリーペーパーのラック。探すのは毎月発行の「メトロポリターナ」という東京メトロの広報誌だ。都内の名所旧跡やグルメ情報、著名人のコラムに最新映画や音楽事情など、話題が満載な冊子。ひそかな愛読者も多いらしい。早く入手しないとあっという間に無くなる月もある。

今回も真っ先に開いたページはエッセイスト千代里さんのコラム「お多福美人講座」。千代里さんは元新橋芸者だが、現在は執筆や動画サイトで活躍中。今月のタイトルは「正しく願おう!」であった。

内容は、千代里さんがお友達と雑貨店に入った時のエピソード。その友人は現在、介護などで慌ただしい日々を送っている。が、ステキな雑貨を見た際、「こんなかわいいものを飾る心の余裕がほしいな~」と朗らかに述べたとのこと。その素直な言動に千代里さんが感銘を受けたことが綴られている。

千代里さんは自らを振り返り、もし自分自身が同じ境遇であったら、むしろ多忙さゆえにひがんでしまっているだろうと述べている。そして、こう続けている:

「心の奥底で願っているのは、余裕のある生活のはず。それなのに、あらゆる場面で自分の願いを、無意識に『どーせ私には無理』とモグラ叩きのように叩いているとしたら・・・。」

私はこの「モグラ叩き」という言葉がとても印象に残った。確かに自らを省みても、自分が大変な時ほど、心の中で「どーせ」という言葉がうごめいてしまう。自分では幸せや明るい希望を抱きたくても、セルフもぐら叩きをしてしまうのだ。それはあまりにも痛みをもたらすものだし、不毛なことだと思う。

千代里さんの言葉から、願いを素直に心に抱き、自分に正直になる大切さを感じた。

(「メトロポリターナ」2022年6月号 Vol.232)

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