飛躍よりコツコツ
日経新聞朝刊の最終ページに「文化」欄があります。連載小説や「私の履歴書」、アート情報などが満載です。その中で特に私が関心を抱いているのが、「その道一筋の方々」が自身の分野について綴っておられるコーナーです。たとえば「つまようじの袋を集めている人」「金庫のカギを展示している人」などがこれまで掲載されています。
5月6日のタイトルは「甘口パスタ 頂上めざし」。書いておられるのは名古屋で喫茶店を創業された加納幸助さんです。
パスタというとイタリアンの味付けが思い浮かびますが、加納さんが提供なさっているのは、なんとデザート系。「甘口抹茶小倉スパ」や「甘口イチゴスパ」などがメニューに並んでいるそうです。
創業は1968年。当初は普通の喫茶店でしたが、なかなか繁盛に結びつかなかった70年代に、このようなスイーツ系のメニューを思いついたと書かれています。そして今、SNSで大いに話題となり、全国からたくさんのお客様がやってくるとのこと。
加納さんは、50年強お店を続けてこられた理由をこう述べています:
「コツコツやってきたから。メニューこそ異色でも、素材は本物にこだわる。」
斬新なことで一発逆転を短期で狙ったのではありません。地道に努力を継続したからこそ、確固たるメニューを作り上げることができたのです。
ややもすると「最小限の努力で最大限の効果」を期待したくなる今の世の中。こうした時代に「コツコツ」続けておられる方を拝見すると、とても励まされます。
(日本経済新聞2022年5月6日金曜日朝刊)