五感を使う
タレントの清水国明さん。最近はキャンプやスローライフなどで知られている。日経新聞の別刷りに同氏のインタビューがあった。
「なぜキャンプに魅了されているのか?」との問いに対して、清水さんは五感をフルに使えることを挙げている。今の時代、便利になった分、暑さや寒さなどを感じることなく私たちは便利な世の中で生きているのだ。清水さんはこう語る:
「出番のない自分の中の機能を持て余していることがストレス(中略)。暑い、寒い、痛い、臭い、これらを感じると体って喜ぶんですよ」
確かにそう。便利になったことで、常に快適状態に私たちは置かれている。ゆえに五感を発揮できない状態になるのだ。
これは英語学習でも当てはまる。インターネットもアプリも電子辞書もなかった私の学生時代は、「わざわざ」書店に出向いてテキストを買い、ラジオ講座をリアルタイムで聴くべく「わざわざ」スケジュールを合わせてラジオの前に座った。「わざわざ」紙ノートを購入してペンを手に持ち、手書きで単語を書き写していた。とにかく手間がかかった。だが、それは五感をフル活用することであったのだ。本屋さんでお気に入りのテキストが見つかり、レジで購入するワクワク感。帰宅後に袋を開けて新品の本を開き、頁の香りをかぐ不思議な感覚。ラジオ講座開始ギリギリで帰宅し、「滑り込みセーフ!!」と汗をかきながら聴くこと。かわいいキャラクターノートが自分の文字で埋まっていき、やがては最終ページに到達したときの達成感。
労力は必要だった。しかし、その分、節目節目で頑張る自分を確認できた。
清水さんのインタビューで他に印象的だったのは、以下の2つ:
「人生をグラフに例えると右肩下がりなわけよ。そんなのもったいないじゃない。どんな死に方をしたいのかをポジティブに捉えてその死に向かって逆算すると今になるわけだから。じゃあ今好きなこと続けようって思うわけ」
「老いや死に追われる人生より、それらを逆に追っかけるような人生を送りたい。」
五感を使う。精一杯生きる。先を不安視するのでなく、攻めの姿勢で過ごす。その大切さを感じたインタビューだった。
(「日経REVIVE」2022年7月号より)
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