仕事に感謝
9月20日のnoteにBBCの音楽のことを書いた。
https://note.com/sanaeinterpreter/n/nded7433adb3b
書きながら懐かしの旋律をずっと聴いていた。音楽による感動だけではない。脳裏に浮かんだのは放送通訳者駆け出しのころの自分の姿。一緒に働いた先輩たちなどなど。
あの頃は大人数のチームで役割分担しながらニュースの通訳を作り上げていた。事前に記者から送られてきたニュース映像をチェックし、日本語原稿を作っていた。いわゆる時差通訳である。自分が口から発する日本語にこだわり、最適な訳を考えながら作っていた。とても充実していた。
もともと私はジャーナリスティックなことが好きで、高校時代は新聞記者になりたかった。だから放送通訳は、大いに遠回りした自分にとってようやく到達した夢だった。ことばに情熱を傾け、アナウンサーのような話し方を意識し、先輩や同僚たちと番組を作っていく醍醐味。かけがえのない日々だった。
あれからずいぶん年月が経った。私が帰国した後、BBC日本語部は雇用形態が変わり、一旦解散し、再雇用制度になったらしい。今ではロンドンと東京に通訳拠点が設けられ、時間帯によってそれぞれから同時通訳をつけている。時折、先輩の声が聞こえると本当に懐かしく嬉しくなる。
自分の通訳人生の全体年数におけるBBC時代はほんの4年間だ。でも、通訳者としての在り方や生き方を与えられたのはあの日々だった。当時の通訳者たちは今、それぞれの人生を歩んでいる。放送通訳はおろか、通訳業界から離れて別の職業にまい進している人もいる。
皆、今この瞬間、それぞれの場所で生きているのだ。私もそう。でも、あの時、一緒に働けたことを私は今なおありがたく思っている。そして、心から感謝したくなるような仕事人生を歩めたことに、感無量でもあるのだ。