【トークLIVE書き起こし】 松本清張賞受賞作家・千葉ともこさんゲスト回・後編
松本清張賞受賞作家・千葉ともこさんにきく!
「激動の時代『個』の私たちは何ができるか?」
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LIVEトーク前編では、千葉ともこ先生から、作家を志しながらも県庁職員として働いていらっしゃったお話。出産を機に4時間睡眠で本腰を入れて執筆活動をなさっていた話。作品に通底するテーマのお話、など伺いました!
後半では、新刊「火輪の翼」に込められた背景などを伺っていきます。
今こそチームプレイを
秋間:事前にお話いただいた中に、「個人っていうのは1人だけじゃなくてチームもある」というな話題もありました。この話題についても教えていただけますか?
千葉:そうですね。これはすごく感じることがあって、 今回の作品「火輪の翼」の中でも描いていることです。1人1人、小説家も、起業家の皆さんもそうですけど、結局、自分がどこまで自分を追い詰められるか?自分がどれだけ頑張れるか?ということも問われています。しかし、かといって何でも1人でできるかっていうと、そうではないですよね。
今回、その3作目の「火輪の翼」では、「戦争を終わらせる」という大きな困難に立ち向かっていく話なんです。本当に1人で解決できないような問題を、じゃあどうするかというと、結局そこにはチームプレイが必要となってくると思うんです。
作家個人の自分としても、チームプレイが重要だっていうところを思っています。今、出版不況で本が売れないって言われますが、じゃあ1人でいい作品書いてれば、その問題解決するかというと、そんなことはなく。
他にいろんな作家さんと切磋琢磨をして、自分の腕を上げていく。かつ、いろんな作家さんと協力して、イベントを打ちたてたりとか、チームプレイで、 今の出版不況の大きい波を乗り越えていくんだ!といったところもやっぱりあります。
この「火輪の翼」っていう作品中でも、「戦争って結構スルって始まっちゃうけど、終わらせるのがすごく難しい」っていうことを扱っていますが、今、世界的な社会情勢を見てても同じことをすごく感じます。
こういったすごい大きな困難って、個人も頑張るし、チームでも頑張るっていうところが必要。この作品も「個人戦とチーム戦の両方で戦争を終わらせてく」っていう話なので、ぜひ読んでいただけたら嬉しいなと思います。
新刊「火輪の翼」が生まれた舞台裏とは?
秋間:個人として何ができるのかっていう部分と、それがまた1人ではなくてチームプレイっていう、今お話しくださったことが、千葉ともこさんご本人
がまさに今、そう立ち向かってらっしゃいますし、あの「火輪の翼」という小説の中のストーリーも、まさにそれを伝えてきている。この著者と作品がダブルにテーマを一貫していることで、読む人に力強く伝わっていくものがあるんじゃないかと思います。
今うんうんとうなづいてるスニョンさんも、その辺りぜひ教えてください。
スニョン;この「火輪の翼」という作品では、安史の乱という戦(いくさ)の中で、人がもうガラッと変わってしまうこと、 昔馴染みの知り合いがもう人が変わってしまったり、すごく主人公がそれで胸を痛めるシーンとかがあるんです。戦が人を変えてしまうっていうね。
だけども、その主人公とその周りの仲間たちっていうのは、どうやってその信念を貫いているかとか、自分の隣の人や親などから影響をたくさん受けながら支え合って、信念を貫けているんだっていうところなど、描写がすごく素晴らしくって、 もうね、語彙力が足りないです(笑)。とりあえず読んでいただきたい!
秋間;その点で言うと、スペクタルなこの中国史っていう、遠い時代のことがすごくリアルに分かる!っていうのが、またものすごい描写だな、と。 これは、当時のことをめちゃくちゃ調べられたんですか?どこから中国の題材にされてたのかを教えていただけますか。
千葉:私は、大学とかで中国史専攻していたとか、中国語を専攻していたとかでは全くないんです。 先ほどお話した出産期に、朝2時に起きて4時間執筆活動をやっていた頃に、半年間ほど、中国史を唐の時代に特化して必死に勉強してたんです。全部本を読んで、付箋を貼って線を引いてって。1回読んだだけじゃ覚えられないので、全部自分でexcelとかにまとめて、ようやく頭に入ってくる…
みたいな、そういう努力をしてですね、ようやく小説書けるようになりました。
秋間:そうだったんですね!!その中国史の中でも、唐の時代を選んだ理由というのは?
千葉:この時代を選んだ理由は、自分が小説を書く時に気をつけていること、自分からあんまり遠い話とか、かけ離れた話にしないように等身大の話をしようと思っていることに紐づいています。
自分が氷河期世代で、子供の頃バブル期で、 と、世の中の経済状況がガツンと変わっちゃったわけじゃないですか。日本の経済の転落というのを体感してきている世代なんです。
一方、中国の玄宗皇帝とか楊貴妃とかいう、華やかな時代から、安史の乱が起こって、こうガクン!と落ちていくという政情なんですよね。なので、自分の体感、体験してきた人生の感覚や、今の日本で感じてることを重ねて書きやすかったっていうのがありますね。
スニョン:質問が来てます。 「歴史や漢字が苦手でも読めますか?」
ええ、読めます。本当に!私も”楊貴妃”っていう人の名前ぐらいしか知らず、中国なんて全然わかんないけどどうしようって思いながら、でもナレーション役が受かったから読んでみようと思ったんです。
それが読み始めると、めちゃくちゃ面白い!中国史が全くわからない方でものめり込めます。ですよね。秋間さん。
秋間;ほんとにのめり込みます!
しかも1作目、2作目と読んでみると、立場が違うシーンが出てくるんです。それによって理解が立体的になるので、おすすめは3作品全部!この時代のことが逆に好きになるぐらい、だと思います。
ともこさんがおっしゃった、「自分との重なり合わせ」で、確かにそんな子を思う気持ちが踏みじ踏みにじられたら苦しい!など、共感できるところがたくさんあるのと思います!
特に女性にオススメ!なのは新作「火輪の翼」
スニョン;やっぱり女性には、この3作目の「火輪の翼」を1番おすすめしたいです。読みやすいです!
千葉:そうですね。これは多分、自分の腕が少しずつ上達してるところがあって、「火輪の翼」が多分1番読みやすいです。ラブロマンスの要素が入ってるので、1番女性にも読みやすいかな、と思います。
自分も読みやすさを1番意識して書いたのは、この「火輪の翼」ですし、「あなた1人のために書いたんです」っていう気持ちで書きました。
もしよかったら、「火輪の翼」を読んでいただいて、いけそうだと思ったら、他の2作もお手に取っていただけたら嬉しいなと思いますね。
秋間: 今、ロマンスとあったんですけど、ほんとドキドキするシーンが満載!そして、「火輪の翼」という タイトルにもなったシーンがあるんですが、実はそれを念頭にみんなでこの背景画を選んだんです。よかったら読んだ後に、またこれ見て「だから、この画像ね!」みたいに受け取っていただけたら、嬉しいです。
■ 「火輪の翼」購入サイト
■ 千葉ともこ先生のX(Twitter)
秋間;もうあと5分!と、あっという間ですけれども、先ほどからいただいたように、ご自身のバックグラウンドとしての県庁職員の頃にあった出来事から、テーマが決まっていった話ですとか、 実際に働きながらっていうところを、ぐぐっと、 デビューというとこに向けた背景に、なんと、4時間睡眠があった話。その唐の時代についても、ぎゅぎゅっと、この(4時間睡眠)時代にインプットされていたお話などなど、さまざまに繋がっていて、すごく感銘を受けました。
大学で研究してないからとか、なんかこうしていないから、とかではなく、覚悟を持つことだったり、自分の人生をグッと決める!といったことだったり。こういう人の力って、ともこさんの小説の中でもたくさん出てくること なんですが、やっぱり自分を信じて踏み出す力を、ともこさんのご自身の様子からも、また作品の中からも読み解くことができて、皆さんそれぞれ、勇気が沸々と湧いてくるんじゃないかなと思います。
スニョン:あの、ともこ先生ってとても声も可愛らしいし、一見普通の方みたいな雰囲気もあるんですが、読んでみたら、文章も世界観も本当にすごいんです!
もうね、情景が映画見てるみたいに、脳内スクリーンに出てくるんですよ、バァーッ!!!って。超スケールの映画見てるような感じだし、戦闘シーンがあるじゃないですか、剣とか。 あれが、もうほんとに、なんか、ドラゴンボールとか鬼滅の刃でも見てるのじゃないか?!ってぐらいの、ほんとにこう、鮮明に見えて、すっごい興奮するんです。
こんなにも読みながら、次のページ、次のページが読みたくて堪らない!って思う小説って、なかなかないって思います。
秋間;本当にスニョンさんの解説はその通りでした!
普段の私は、疲れてる時に、エネルギーチャージをしよう、という感じであんまり考えずに受け取れるドラマや映画を観ることが多かったんです。
それが今回、小説を読む体験を久しぶりにして、こんなにも自分のエンジンになって、読めば読むほど、なんか、涙は出るわ、鼻水は出るわ、とデトックスしながら、興奮もしてっという、心と体、魂まで、ぐんぐんと揺さぶられる体験にビックリしました。
かえって読後感、読んだあとの余韻がめちゃくちゃ長く自分を支えてるなってのが発見だったんですよね。 ドラマや映画を観て楽しむという姿勢だけでは、消費というか、「へー、ふーん」とのけぞってしまうところがあると思います。小説はぐぐっと前のめりにのめり込むことで、自分の追体験みたいに、心が勝手に体験してくれてるんだなって小説の力も再発見できました。これもともこ先生のおかげ、作品のおかげで、この力を得た感じがします。
スニョン:そして3作とも女性が素晴らしい。女性がかっこいい。うん、あとティーンズもかっこいい。 この10代の子がほんとにしっかりしてるなっていうのがすごかったです。人間として、 もうこの人を見習おう!っていうような子がたくさん出てきますので、ぜひぜひ見ていただきたいです。
秋間:ありがとうございます。この作品を読んでから、冒頭のPV内、スニョンさんの声もまた聞いていただきたいですよね!
千葉:PVは文芸春秋さんと私のアカウント両方で載せてるので、何回でも観てください。>>PV動画
秋間;はい、ありがとうございます。「もう小説で情景まで!」「ドラゴンボールも鬼滅も好きだからハマりそうです。」というコメントもいただきました。
皆さんが楽しめる作品ですし、今日いただいた、ただ読むだけじゃない。今回伺った話、千葉ともこ先生自体の作家になるまでの道や、作品に込めたテーマなどを知ってるとさらに読み方が深まると思います!
ただ作品だけでも楽しいところが、さらに今日のライブを見ているご縁があるとしたら、もっともっと深く楽しめるんじゃないかなと思うので、ぜひぜひご覧になっていただきたいなと思います。
「女子がかっこいい。」「はい、熱情めっちゃ伝わってきます」とコメントありがとうございます。
読者代表2人して今日は熱量込めて語ってしまいました。
スニョン:昨日、もう1回作品を読んでいたら、いい1行に出会えたんです!「今週の一言」にしようと思ってるんですが、その一言とは「本能が抗えと告げている」っていうめちゃくちゃかっこいい文章なんです!
「 本能が抗えと告げている」って!! (と興奮のスニョンさん)
ちょっと今週はずっとこれを標語に暮らしたいと思います。
秋間;私もまた改めて作品を味わいたいです!何個かハイライトしたように、自分を支える言葉がいっぱいあって、それぞれ必要な方に届くんじゃないかなと思いました。
とお話しているうちに、あっという間の30分!!
今回のご感想やメッセージなど。よかったらともこさん、いただけますでしょうか?
千葉;はい。あっという間の30分でしたけれども、ご覧いただきましてありがとうございました。
よかったら、 私の作品3作品とも強い女性が出てくるので、ぜひお手に取っていただけましたら嬉しいです。よろしくお願いします。
秋間;はい。ありがとうございます。スニョンさんもよかったらメッセージいただけますか?
スニョン;もういっぱい語りました!
キャラクター1人1人がみんな自分の正義を持っていて、自分のストーリーを持っていてかっこいいので、お気に入りを探してファンになると思います。皆さん、お読みくださいませ。
秋間;ありがとうございます!そしたら、今日はちょっと趣向を変えて、最後にもう1度PVを流して、そのまま終わりさせていただきます。今日は本当にありがとうございました。
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