アグネスホテル
*2018年12月21日初出。
2024年現在、アグネスホテルは東京理科大の迎賓館として存在し、一般の宿泊客は滞在できなくなりました。残念です。そして神楽坂路面店だった栗こ庵も、コロナ禍で閉店。さびしくなりました。
上京中。昨夜、短歌関係の会合があり、親しい何人かも出席するということだったので、参加することにしたのだった。
とても楽しい会で、たくさんの方々にお会いできて、心地よい疲労感のせいか、ホテルのベッドでぐっすり眠った。
…、あれ? 娘、東京じゃなかったっけ…と思われた方、そうです。娘は現在東京暮らし。今回も友人からは、泊まるとこあるからいいね〜という言葉をかけてもらったのだが、とんでもない。1月半ばから行われる後期試験とは別に、12月には期末試験とかいうものが実施される娘の大学。ここ数日は結構辛そうなメールが届いていた。こんな状態で宿泊してもくつろげないだろうし、娘自身もこの時期、泊まってもらうのはちょっと…と明言していたので、さっさとホテルを予約しておいたのだった。
娘と会わずに帰福することになりそうだな、と思っていたら、福岡に持って帰ってほしいものがあるという。駅で待ち合わせてマンションへ。荷物を取って娘は大学へ、私はホテルへ向かう道々、話すこと30分。
大学の地下食堂で友人たちと試験勉強をするという娘と別れ、宿泊ホテルにチェックイン。このホテルは、娘の大学から徒歩1分。都会の隠れ家的な瀟洒な風情で最近人気のホテルである。
五カ月ぶりに会った娘はずいぶん大人びていて、はるばる福岡からやってきた私に焼きたての「栗こ庵」の鯛焼きを買ってくれた。あら、ありがとう。こんな気遣いができるようになっていたなんて。やっぱり娘が心配で、大学に近いこのホテルを選んだわけだが、それも要らぬ世話だったのかもしれない。
心配するのが親の仕事。
仕事が確実に減っている。
寂しいけど嬉しい。
嬉しいけど寂しい。
複雑…。
確かなのは、「栗こ庵」の尻尾まで餡子が入ったこの鯛焼きはすごーく美味しいということである。