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袋麺

夜中にお腹空いた。戸棚を開くと、味噌ラーメンと塩ラーメンがあった。

どちらもPB商品で、味は「なんとか一番」のような一流ブランドのモノには遠く及ばない。だが貧乏だから、倍の量が買えるPB商品を買ってしまう。

いつもならば5袋入りの1パッケージを1つしか買わないが、これを買った時には財布に少しゆとりがあり、悩んだ挙句の果てに、二つの味を楽しんでかつ腹一杯になる選択をしたのだった。

2種類の袋麺を取り出し、 どちらを食べるかふたたび悩む。苦しい選択の時ではなく、幸せに浸るひと時だ。

まず味噌ラーメンを左手に掴み、右手でそっと撫で、作り方をイメージする。麺は硬めの食感を楽しむか、それとも少し汁を吸わせて味噌との一体感を味わうか。ここでこれがPB商品であることが脳裏をよぎる。

「PBの麺は硬めが良い」これは僕が長い経験で培った答えだ。PBの麺は伸びるのが早い。
(こんなことを忘れるようではダメだ)
僕は重要な事実を見逃すかもしれなかったことを自嘲して、一人で小さく笑った。この時僕の心は味噌に大きく傾いていた。

ふと戸棚をみて、僕の目は一点に釘付けになった。
「胡麻がある!」
心が踊った。
「なんとか一番」でも塩味には胡麻が付録として付いているが、PBにはない。胡麻があれば、PBの味をある程度挽回できる好機に違いない。
これは天佑。心は決まった。
「塩でいく!」

僕は静かに鍋に水を注ぎ、コンロのツマミをゆっくりと捻る。
「カチン」
心地良い音が深夜のキッチンに響き、ガスが燃える。

袋を開けようとした刹那。背後から不意に声をかけられた。ヤバい!妻だ。
「夜中にそんなモノ食べるな。水を飲みなさい」

今、僕はタオルケットにくるまって、溜息をつきながらこれを書いた。おやすみなさい。

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