勝ちも負けもない局面で、無駄に負けず嫌いになり自爆
負けず嫌いだから、山歩き中に先を行く人を抜きたがる。大抵の場合は勝つ。
それは僕の体力が優れているのではなく、レースと考えているのはこちらだけで、向こうは楽しんでいるだけだからだ。
それを分かっていても、抜いた時は気分がとてもいい。
もちろんトレランの人には追い越されるが、それは山歩きじゃあないからと、納得している。
昨日、バイトで使う車が車検で、別の車を使わせてもらった。
今日出勤すると、昨日僕が乗っていた車をいつも使う女性から
「真田さんはやっぱりAM聞くんだね」
と言われた。
僕はたいていJ-WAVEを聴いていて、特に夕方からはピストン西沢のGROOVE LINE Zが好きなんだけど、
金曜日はアンジャッシュの渡部がやっているゴールドラッシュという番組で、これがどうにも鼻について嫌いだから、AMに変えて、そのまま車を返した。
細かい事だが、「やっぱりAM」と言われると、なんだか、オッサン扱いされているようで、いや、確かにオッサンなんだけど、なんだか負けた気がする。
「いや、いつもはFMなんだけど」
と、僕はできる限りの無表情で応える。
すると彼女は無言のまま(別に無理しなくったっていいのよ)と言いたげな、憐れみの視線を僕に向けた。
いやいや、そうじゃないんだって。
でも積み込みで忙しい時に、くだらない問答をするのはお互いに迷惑な事だし、こちらが必死に否定すれば、おそらく余計に敗北感が増すだろう。
なんとか訂正する方法はないか。今日はバイトをしている間、そればかり考えて運転していた。そして、バイトが終わり事務所に戻ると、彼女に勇気を奮い立たせて言った。
「いつもは、J-WAVE聞いてるんです」
「は?」
「いや。何でもないです」
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