拘留レポート①これから特殊詐欺の繁忙期に入る件
去年逮捕されて留置所に入った。僕が入った所は成田国際空港警察署。いけないものを運んできた外国人が非常に多かったが、千葉県警下では屈指の収容人数を誇る大きな留置所で、日本人も結構いた。
留置所にいる犯罪者の多数派はポン中(犯罪界でもシャブという単語は忌避されており、シャブ中なんて今時あまり使わない)と決まっていたが、最近は特殊詐欺関係者がポン中を上回るくらいいる。
逮捕されると共犯関係がある者は別々の留置所に入れられる。実際、僕の事件では、三名逮捕され、連載中の小説「黄金を運ぶ者たち」でいうところの、利根川と仙道も別々の留置所に入れられた。
特殊詐欺は、様々な役割に分業されていて、摘発されると、共犯関係が多くなる。同じ留置所には入れられないから、主犯格を摘発した警察署の留置所に入れて、その他の逮捕者を同じ県警管轄下の留置所にバラして入れる事になる。
だから、僕が成田国際空港警察署で出会った特殊詐欺の関係者は、単一の事件に関わった人間ではなく、色々な事件で、それぞれの役割を果たした者たちということになるわけだ。
さて、どうしてこの特殊詐欺について最初に触れたいかというと、出会った人数が多かったこともあるが、こんな書類が隣家の婆さんに届いたからだ。
「これって大丈夫なの?」
彼女はそう尋ねてきた。僕は封筒を確認して大丈夫ですよと答えた。
「最近、物騒だから心配でね。町内放送でも『 詐欺の電話に注意しましょう』って言ってるじゃない」
彼女は僕の事件を知っているから、そういう事に詳しいと思って、わざわざ尋ねてきたのであろうし、それは賢い選択だと思うが、そもそも僕が「物騒な人間」なのであるから、ちょっと笑ってしまった。
さて、こういうのが特殊詐欺の関係者の「飯の種」なのである。低所得層に増税分を還元しようというのは悪い話ではないのだが、こういう施策を逆手にとるのが犯罪者たちなのだ。だから、注意喚起というか、犯罪のトレンドになる話なので、今回取り上げてみた。
まず、特殊詐欺グループの役割から説明する。特殊詐欺はには以下のような職域が存在する。
1.指示役
2.掛け子
3.受け子
4.出し子
5.見張り役
1.については、呼んで字の如く主犯格で、詐欺内容のプランニング。電話リストの調達。スタッフのリクルート。必要な道具の調達。などを行う者だ。指示役が複数いて分業をしている場合も多い。
2.電話を掛ける者だ。勿論詐欺内容によって誘導する方向が違う。自宅まで現金を取りに行くパターンもあれば、銀行振込をさせたり、レターパックで現金を郵送させたり、暗証番号を上手く聞き出しす必要がある場合もあるし、話す内容も様々だ。
3.は被害者から、現金なりキャッシュカードを受け取る者だ。郵送型の場合、受け取りに行くのではなく、住所を提供し、郵送分を誰かに渡すというケースもあり、これで「中味は知らなかった」と主張している裁判もある。
4.特に還付金詐欺では、受け子がキャッシュカードを「確認させて下さい」と被害者宅に行き、キャッシュカードを見た上で「手続きが終わるまで封印しますね」と言って、封筒に入れて被害者に渡す。ところが、封筒に入れる時に、適当なプラスチックカードにすり替える。一方で掛け子が暗証番号を聞いておく。受け子が持っているカードで、掛け子からの情報を使い、コンビニATMで現金を引き出すのが、出し子の役割だ。
5.が見張る対象だか、まず掛け子が電話をしている最中に「いけそうだ」となると、ターゲットの家に行く、そして警察が来ないか見届けるのが一つ。それから、出し子がATMから出金する際に、ネコババしないか見張るのがもう一つの役割となる。
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