歌を。
好きな人が歌を歌う人で良かった
総じて
芸術家であることは出会いのきっかけとなり易く
絵でも踊りでも陶芸でも写真でも料理でも文章でも
ただ、歌っていてくれたから
あの日あの人に出会えた事実
音楽を形の無いものを作り出すということ
メロディに乗せる言葉選びと
言葉を乗せる音の作り方全てが輝きを纏ってあの人を表しているとしたら
電気信号に変換された振動が心臓を揺らし
脳を水浸しにして降りかかってくる
それは魂のかけらが溶け出した濃霧
満天の星の騒めき
泡立つ波間に映るばらばらの三日月
集めても集めても
私を構成している証拠は見せられないけれど
今も確かに響いている歌声がある
五感は直接命に繋がっているので
あなたが歌ってくれるから
今夜も眠り、きっとまた朝が来る
全部の歌に支えられて生きていこうと思うよ
歌っていてくれ、音楽であってくれと
厚かましくも切望する
録音じゃない声を聞くことができる時間と共に
また会いに行くよ
そして歌を、声を聞かせて。