ウリセンボーイ的 コロナ年表
様々な業種に未曾有の大打撃を与えている新型コロナウイルス。去年の緊急事態宣言から1年以上が経つが、まさか1年後も似たような事をしているとは思わなかった。感染拡大防止と銘打った数々の施策により、多くの業種は深刻なダメージを負った。今もなお出血を強いられている業種もある。
濃厚接触の極みたる売り専業界にも当然影響は出ている。俺自身と所属店以外の状況は廃業くらいしか分からないが、分かる範囲で。コロナ禍をとりあえず通過できそうなボーイとして、2019年末~執筆時点における自分の記録も兼ねて書いた記事です。
2019年12月
うちの店長曰く、年末は繁忙期。その言葉通り沢山のお客さんが遊びに来てくれた。お店はかなり繁盛していたように思う。個室が全部埋まった時間帯もかなりあった。俺も普段の1.5倍くらい売上があったし、この調子でどんどん指名を増やそうと思っていた。このころはコロナ関連のニュースはほぼなかったはず。中国で何か出たぞ位のものはあったような気がするが。
2020年2~3月中旬
2月1日、ダイヤモンド・プリンセス騒動の始まり。この1週間ほど前に中国で下船した乗客が新型コロナウイルス陽性であることが確認されたことに始まり、2月3日に横浜港へ入港した同船で起こった騒動。連日の報道で客船名を覚えた方も多いだろう。この騒動でコロナウイルスは日本人の広く知るところとなったのではないだろうか。
この期間、連日の報道はあったものの指名への影響は特に出ていなかった。お客さんの話を聞いても、まだ船の中の出来事という印象が強かったのではないかと思われる。
2020年3月下旬
船とは何ら関係ないところでコロナウイルス陽性の報告が上がるようになり、いよいよ他人事ではなくなってきた。ここでついに"不要不急の外出は控える"ように呼びかけられた。テレワーク等の呼びかけもあり、次第に街から人の姿が消え始め、電車すら空くようになってきた。常連のお客さんは遊び納めか、それとも応援か、駆け込むように指名を入れてくれたりはした。しかしそれ以降は指名自体がパタリと途絶えるようになった。所属店舗も、他のボーイも同様。
2020年4月~5月
緊急事態宣言を匂わせる報道が相次ぐ。この時点で様々な街がゴーストタウンと化す。もちろん指名はほぼ入らなくなる。4月7日、緊急事態宣言が発出された。
所属店は休業を決定。宣言期間の延長もあり、ここから5月末まで営業は一切出来ていない。個人的に辛かったのはジムの休業。基本的にジムでマシンを使ったトレーニングをしているため、体型や筋肉量の維持が厳しかった。とにかく痩せてしまうから。
ちなみにこの期間は店長と連絡を取り合い、宣言明けに向けての戦略等を立てたりしていた。他店の休業・営業状況はまちまち。決断の早い所はここで廃業してたような気がしますが、記録とってなかったです。
2020年6月~
緊急事態宣言が解除され、営業再開を待ち侘びたお客さん達による指名が年末かと思うくらいの勢いでどんどん入ってきた。所属店の売上も好調。仕事がなくなっちゃって~、という理由で面接に来る子もそれなりにいた(店長談)。また、"夜の街"としきりに叫ばれたりもしていた。主に3密になりやすい、居酒屋や接待を伴う飲食店を対象にした単語ではあったが……単語から自動的に性風俗も連想されるせいか、巻き添えを食らった感はあった時期でもある。濃厚接触の極みではあるが、3密になるには"密集"が足りないよと言いたい所ではあった。せいぜい"秘密"の密が良いところだろう。
※厚生労働省 3つの密を避けましょう(ポスター)
そしてオリンピックの代わりに"特別な夏"と銘打った、清くただしい(つまらないとも言う)夏がやってきたのであった。
7月下旬からはGoToキャンペーンも始まり、東京除外だのなんだのと揉めていたような記憶もある。さりげない大ニュースも舞い込んだ。8月辺りに大手の支店が1つ消えたのである。ハコ代の関係で不採算店舗を整理する必要が出てきたのか、内部事情は分からないが業界としては中々のビッグニュースに心を躍らせたりもした。
夏は閉店が結構多かった。この辺りで見限ったか、あくまで推測ですが4〜5月の休業要請協力金(東京都)や国の持続化給付金等が手元に着いたタイミングで畳んだ可能性もあります。受給後廃業についてどうこう言うつもりはないです。真相はそのお店の中ですから。
※協力金や給付金の種類によっては廃業見込みでの受給はアウトなのですが、最初からそういう算段だったらという話でした。それを証明する事は非常に困難ですし、畳むべきタイミングが来ているのに畳ませないというのは別の問題が出てきてしまうので。
2020年9月~
GoToキャンペーン全盛期。俺もイートの方をよく使わせてもらった。お店も俺も好調が継続。GoToでどこ行った、どこをクーポン、ポイントだけで食べた~等の話題がボーイからもお客さんからも頻繁に出るようになり、とにかく楽しかった。この頃から国や都は手を変え品を変え、"連休キャッチコピー"を繰り出してくるようになる。
我慢の3連休 (11月)
"勝負の3週間"(12月)
ボジョレーヌーボーと揶揄されていたがその通りで、単純に鬱陶しいのと、「どうせ自粛してもまた増えるんだし無意味なのでは?」といった疑念や反感が蓄積していったのは間違いない。その反感が爆発するのはここから半年ほど先であったが。
2020年12月中旬~
12月中旬辺りからは東京で1日500人超が当たり前(下記サイトで閲覧可能)となり、年末の盛り上がりに冷や水をぶちまけられた業種も多かっただろう。勿論売り専も例外ではなかった。下旬では1000人を超える日が出たり、2度目の緊急事態宣言が検討されたりと、さすがに利用を見送ったと思われる人も多かった。俺は前年同月から30%減くらい、所属店は定かではないが、それなりにダメージを受けた模様。
2021年1月~
1月7日、2回目の緊急事態宣言が始まった。1月の指名は俺もお店も大ダメージ。俺は前年同月の45%くらいになってしまった。東京都で1日2500人とか出たりしたので、そのインパクトがかなり強かったのだろう。そんな中でも指名してくれたお客さんには本当に感謝するばかりだった。俺の普段のリピーター率(リピーターさんからの指名件数/全指名件数)は7割程度なのだが、1月から3月は軒並み8割近く。特に1月は9割に届く勢いで驚いた。リピーターさん、本当にありがとうございます。
2月~3月にかけての指名は右肩上がりで回復。緊急事態宣言が延長を繰り返した(東京等は2回延長されている)ためか、さすがに効力も薄れてきたようだった。その代わりに連休キャッチコピーの副作用が強まった。"もうちょっとだけ"を繰り返してはや数ヶ月。"ちょっと"の定義が乱れる。
2021年4月~
緊急事態宣言は3月21日で終了。とあるお魚の名前が都内でもしきりに聞かれるようになる。マンボウ。飲食店が一応21時まで開くようになり(強制ではないので時間を気にせず営業する事自体はできたのだが)、季節の変化もあって賑やかな街が戻ってきた。お店も俺も好調。良いペースで着実に伸ばしていた……のだが、また緊急事態宣言が出るとの事で流石に笑ってしまった。1ヶ月しかもたないのかよと。しかも期間2週間とか最初から延長確定じゃないかと。
度重なる"もうちょっと"により、無視され具合は前回よりもさらに強まった。1年経ってもまだ自粛という事実に、多くの人々が心を熱くしたに違いない。街は活気に溢れたままだったし、指名状況にほぼ変化なし。店長曰く、「普段ゴールデンウィークの半ばは落ち着くことが多いんだけど、今年は遠出しない人が多いせいか連日賑わってる」と。
延長後もその傾向に変わりはなかった。今はやたらと早い梅雨の訪れに気が滅入りながらも、出勤している。そしてなんと6月下旬までの延長が決定し、今年前半は緊急事態宣言が平常運転という異常事態が確定した。字面が意味不明だが、本当にそうなのだから仕方ない。もう勘弁してくれ。
※通常事態だったのは3月下旬〜4月下旬の約1ヶ月
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エッセイのような形式になってしまったが、最後に店舗やボーイへの影響をまとめておく。あくまでお客さんの行動変容に限定して、だが。
テレワーク普及で仕事終わりに遊べなくなった
飲食時短の関係で家庭に言い訳がつかない
単純に感染が怖くて遊ばなくなった
立場上感染すると面倒なので行けない
期間が空いたら熱が冷めた
減収で遊びたくても遊べない
などだろうか。プラスの影響は皆無。テレワークの普及がとにかく痛手。そもそも外出自体を制限しているのだから、当然店舗型やマンション個室借り上げ型の利用者は減る。
自前の顧客ノートを見ると仕事帰りに指名してくれていたお客さんが利用しづらくなっているのはよく分かった(定期券→適宜申請になったりするので)。既婚者含めた立場上色々と面倒になるお客さんも利用しづらくなったんだろうと推測できる。
じゃあ出張を……とまでは意外とならず、遊ばなくなってしまう事の方が多い印象。店舗の用意した個室に慣れたお客さんが出張利用となると、場所の用意と場所代の関係で引くかな。それくらい、行動範囲と場所の位置関係は重要。
コロナ自体を強く警戒しているタイプのお客さんは、来年まで来ないんじゃないかなと思っている。念のため言っておきますがdisっている訳ではないです。その不安は中々消えないと思いますし、実際それくらいの時間がかかるんじゃないかと、ただそう思っただけです。
利用者の減少がデッドラインを超えたボーイやお店は姿を消した。お客さんと同じような理由で出勤しない/できないボーイもいる。一方、コロナ禍以前から現在まで堅実に出勤し売り上げを伸ばしているボーイもいる。
あなたのご贔屓に、あなたのお店にそんなボーイがいたら、ぜひ大切にしてあげてください。甘やかしすぎない程度に。