「根津美術館」で、心洗われる体験をした|時代を超えた「粋・センス」
昨日午後、東京 南青山にある「根津美術館」に行ってきた。昭和16年からある由緒正しい美術館だ。初来館だったのだが、一気にファンになった。「あたらしい情緒と美しさ」を感じたし、雰囲気もとても良い。素敵で不思議な空間だった。
入口の門をくぐると、凛とした空気が漂う別世界が広がる。都会のど真ん中にこんな場所があったとは。趣のある庭園、併設カフェも魅力的。のんびりした気分で一日過ごせそうな美術館だ。
お土産ショップで「真のアート魂」を感じた
館内に入ってすぐの場所にショップがあった。なぜか妙に気になる。「いや、それより先に鑑賞でしょ」と思いつつも、吸い寄せられ、一番最初に立ち寄ってしまった(笑)。遠目で見た直感どおり魅力的なショップで、40分ほど夢中で見て、結局3つも購入。
販売されているのは、根津美術館のコレクションをモチーフにしたグッズたちだ。国宝、重要文化財などの「素敵なエッセンス」を取り入れて、現代版に見事に昇華させている。どれもこれも「粋・センス」が溢れている。
これって、一歩間違うと、単に堅苦しい、古臭いものになってしまうのは容易に想像がつく。そして、そういう残念な商品って観光地など色々なところで見かける。だからこそ、このショップはセンスが光っていて「この美術館は、運営側が本当にアートな感性を持っているんだな」と感じた。更に、まいにちの暮らしの中で活用できる実用性と、価格の手ごろさも素晴らしい。
一貫して感じた「美術館としての誇りとプライド」
ちなみにこのあと私は、館内・庭園を鑑賞しに行ったのだが(当たり前だ(笑))、最初にショップで抱いた印象は全体を貫いていた。
古いものをそのまま展示したりグッズにするのは誰でもできる。でも、決してそうではなく、いかにあたらしい魅せ方をするか、ということだ。
そこに根津美術館の矜持を感じた。
常にアップデートしつづける。昔のもので、最先端の今を表現する。
コンテンツ化の上手さ
展示コーナーには、今の期間は「水墨画、陶磁器」などが特集されていた。「割れた陶磁器」だけを集めたコーナーなどもあった。
どれも、ひたすらに古くて渋いものだ。「物」自体には、エンタメ要素は特に無い。しかし、芸術に疎い私でも、つい立ち止まって引き込まれてしまう魅力があった。展示テーマの工夫と、その魅せ方の成せる技だと思う。「いかにコンテンツ化するか」を意識しているように感じた。
「解説」を読まない鑑賞
今回、意図的に解説文を読まずに作品だけを眺めながら歩いてみた。「考える」のではなく、純粋に「自分の五感」を通して鑑賞したかったからだ。
私は芸術の人ではないし、目利き力も無いが、しみじみと「いいなあ」と感じた。もしここで誰かから「これホントは100円ショップで買ってきたんですよ。あなたも、まだまだですね」と言われても別に構わない。自分が「いい」と感じたものは「いい」のである。
今日やってみて、このような経験をたくさん積むと、何か感覚的につかめてくるような気がした。審美眼やセンスってそういうふうに磨いていくのかなと思った。
外の庭園にも出た。都会の喧噪は一切ない。広くて草木豊かで外部から完全に切り離されている。鳥のさえずり、自然の匂い。心洗われる空間で、みんな思い思いに浸って静かに楽しんでいた。
雰囲気は、お客さんと一緒に作りあげるもの
私のこの美術館への印象は「すごくちゃんとしている」である。館内の、しんとした静寂と秩序。昔からのそれを守り抜こうとする姿勢。商売だけど、いわゆる商売っ気は無い。でも一流のものを提供する。根底に流れる凄みを感じた。
お客さんも場をわきまえた方が多く、集中して静かに鑑賞している。写真を撮ったり騒いでいる人はいない。
この雰囲気は、ある意味、美術館側がお客さんを選ぶことで作られているのかもしれないと感じた。例えば、作品の近くでスマホを見ている人には係員の方が注意をしたり。(鑑賞しないのなら他の方にお譲りください、と仰っていた)。だからこそ、美術館側もお客さん側も共鳴しあえ、さらに心地よい空間になっているのだと思う。
最近行った他の美術館は、SNS目的で写真ばかり撮っているお客さんが多かったりもした(そして、美術館側もそれを奨励している)。そういうのが、ここでは一切なかった。別に、どっちが正しいとかいう話をしたいのではないし、どちらでもいいと思う。でも、いまどき珍しいというか、そういうひとつひとつが「らしさ」を作っていくのだと感じた。
ちなみに。お客さんの9割は20~30代だった。テーマパークやデジタルアートなどなら分かる気もするが、こういう正統派で伝統的な美術館においても若い人ばかりなのが不思議な感じがした。それ自体は「未来は明るい」と思える良いことなのだけれど、最近どこのスポットに行っても高齢者層が少なく感じるので、それはそれで気になっていることでもある。