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クロッキー会を主宰している

昨年の秋からクロッキー会を主宰している。

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元々は私が自分の絵、というかドローイング特に線の感じが、センスが落ちてピタッと来なくなっていることに不満を覚えて
定期的にクロッキーなぞをして絵を練習する習慣をつけたいと思い立ったところから始まった。

クロッキー自体は別に会に参加しなくともそこらへんの街中や駅などで通りすがりの群像を対象にやる人もいる。私も最初はそのつもりだったが、まぁまずこういうのは続かない。習慣になるまでに精神力と時間がかかる。

となるとやはりクロッキー会のほうが目の前に綺麗な肢体のモデルさんがいることもありモチベーションが続きそうだと思った、が、

社会人が参加できる一般のクロッキー会に私はなんとも抵抗があった。特に私が住む京都で開催されているものは。
そう感じた理由は主に以下の通りである。

・画家、画廊、研究所が主催している
・画業を志す人のみが参加可能などの指定があることが多い(恐らくモデル目当てで来る冷やかしを防止しての文言だとは思う)
・参加者の年齢層が高めの印象がある

要するに、作家業を志すわけでもなく、なんとなく急に絵が描きたくなっただけの(業界においては比較的)若い女である自分にとっては敷居が高かったのだ。

あとは、美術業界にはびこる「ギャラリーストーカー」的気質の人に出会わないかという恐れもあった。

ギャラリーストーカーとは端的に説明すれば作家のファンやアドバイザーという体裁で作家に必要以上に干渉したがる人間のことである。主に美大の卒業制作展や若手の展示会などの場に出没する。
この気質の人は「作家:観覧者」の関係性だけでなく、美術仲間、果てはたまたま同じ美術館にその日居合わせただけの人もいる。

私自身も美術館出没タイプの人には何度か絡まれていて、目を付けられるとその日は鑑賞どころじゃなくなるので、今では必ず誰か友人と同伴で行くか、一人の場合はイヤホンをするようにしている。(明らかに無視されそうな相手だと怖気ずくのか、声をかけられない。)

それならいっそ知り合いの信頼できる役者なりダンサーなりに付き合ってもらって自分で会をやろうと思い至った。
これは演劇の制作スタッフをやっていて良かったことのひとつで、人への仕事の依頼の仕方や企画の立ち上げ方がある程度は身に付いている。既存の会に参加するよりもそちらのほうがいっそ気楽だった。

少し話が逸れるが私は滋賀県の創作活動を応援する施設、「芸術準備室ハイセン」の運営に少々携わっている。

実は、ここの当時の利用者層に対するアプローチとしても、新しくなにか毎月固定のイベントをやるのはどうだろうかと考えていた。
ハイセンのメインの利用者は作家や劇団などの、作品を作って誰かに見せる予定があり、その準備をしに来る人たちが主となっている。
しかしハイセンはもっと漠然とした「なにか作りにくる場所または作る準備をする場所」という感覚で使っていい点が特殊な場所でもある。
せっかくのその感覚を世間に認知されるにはイベントの参加者(ある意味エンドユーザー)くらいの距離感の人がこの場に立ち寄る機会が必要だと考えていた。

私は一石を投げれば二鳥どころか三鳥も四鳥も狙いたい人間なので、
・自分が絵を練習したい
・自分のような人間も参加しやすいクロッキー会を作りたい
・ハイセンの宣伝になるようなイベントがしたい
などなど他にも複合的にいろいろ企みながら、生まれたのが月例クロッキー会「センにおどる」である。

2024/08/10(土)実施ぶん。この日は白塗りダンサーによる舞踏ムービングの日。

特徴としては、未経験者やブランク有り、もちろん作家活動中の人も、活動スタンスを問わず参加できる。
これは前述の自分が感じた敷居の高さに対する逆張りである。(ハイセンは大津市の僻地にあるので、冷やかしで行くにはややしんどい立地であるからこそ強気になれるとも言える)

あとはこの場ではどういったクロッキーを描いてもいいとしている。
参加者自身が普段描いている絵に必要な線を追求する場として使ってほしい。目の前に本物の人間がいてそれを参考にできるというだけで、別にそれをそのまま描く必要はないと私は思う。

当然クロッキーを初めてやるから一切なにもわからないという人もいる。そういう人には一般的なクロッキーの目的と、一旦慣れるまではこの目標でやってみようという説明を個別にしている。

またその他の特徴としては、会の最後に参加者それぞれが一番気に入っている一枚を選んで前に並べてもらっている。

講評・指導がない場とうたっているのでそれに類する言葉は出さないよう注意しているが、
他の人がどんな画材を使って、どこに注目して、身体をどう解釈して描いたか、そういう話を聴くのが私は好きでその時間を楽しんでいる。
参加者さんにも任意でご協力いただいており、基本的に皆さんそのまま残ってくださる。中には私と同じように、参加者さん同士で質問や普段の作品の話などにまで交流が拡がることがあるので、とても嬉しい。

さて、この記事を読もうと思って下さった方の中にはこのての自主企画イベントの付き物である苦労話をそろそろ期待している方もいるんじゃなかろうか。

それがまぁなんと、ほとんど無い。

いやこの企画を始めるときに私が設定した優先事項の内容に対してそう思っているだけなので、人によっては苦労しているように捉えられるかもしれない。

私が設定したこの企画で最優先で守らないといけない事項は「在り続けること」としている。
次に「参加者全員に挨拶とハイセンを含む自己紹介をすること」
その後に「できるだけ多くの人に知られること」が来る。

極端な話をすれば、もし企画を始めてすぐの頃に予約0がしばらく続いたとしてもそれを気にせず続けると自分の中で先に決めていた。

実際にはそんなことはなく、告知をして割とすぐに全く知らない学生さんから予約が入り、初回の日は知人を含みながらも4名ほど参加者がいらっしゃった。
臨時イベントを含むと11回くらい実施したことになるが、その中で参加者が0だったのはキャンセルで0名になってしまった日が一度あっただけだった。

収支については、元々営利を目的としていない値段設定なので、これも続けられることを第一に、自分にとって無理がない負担で自費で賄っている。
見方によってはずっと赤字なので、たまに参加者さんから大丈夫なのかとご心配の声をいただく。
まぁ大丈夫な範囲でしかやってないのでなんとかなります。

そんなことよりも、先述した通りの参加者さん(またモデルさんも)とのコミュニケーションや場所の空気感である。
それらが、本当に、こんな想定通り理想通りいくものか?と驚いてばかりなくらい大変有難いご縁に恵まれている。

本来他人というものは制限できないことがほとんどで、ましてや初めましてだったり数か月に一度その場だけで会う方たち相手に、
お互いにここまで健全な興味を持ってまたそれを楽しめる環境があることをとても嬉しく思った。

開始してすぐにあまりにも上手くいったので、ちょっと変わったことをしてみようなどの欲も出たりして
かねてより描いてみたかった目の前で実際に踊っている舞踏家の身体を「動く石膏像」とするムービングクロッキーのイベントなどをたまに実施している。
これもまた、他所では見たことがない、興味がある、ということで特にご新規の方が多くなる手応えがある。実際私自身も普段のクロッキーとは違う筋肉や視野、感覚器を使っている感じがしてたまにやると非常に良い刺激になる。

そこまで深く考えていない「踊る人のからだが描く線はきれいだ」というだけの気持ちでなんとなくダンサー縛りでモデルを集めてそういった企画名にしたのが、妙に伏線回収されて感慨深い。

これ以外に変わったことをする予定は今はあまり無く、現状ある手札で、とにかく細くても長く続く場所としてこの企画を守っていけたらと思う。
滋賀近隣のみなさま、ぜひ一度ご参加ください。

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