VRゴーグルとARグラス②
本文中の細かい修正は気づいたときにしていますが、アホみたいなミスをしていたので、一応書いておきます。タイトルで誤字ってましたので修正しました。すみません。
スマートグラスやARグラスと言われているデバイスが、現実を見ている視界の一部に画面を表示するのに対して、VRゴーグルの視界には現実が見えません。ですが、カメラで映した現実を映像として表示するパススルーを使い、現実部分と非現実部分を同一画面で表示する機能があります。視界すべてが画面で埋め尽くされるという意味ではVRゴーグルという事になりますが、その全てが作られた映像ではなく、現実の中に作られた映像を併せる事で、ARグラス的な使い方もできる訳です。という事は、パススルーが強化されたQuest3であれば、VRゴーグルであってもARグラスの機能を内包していて、ARグラスとVRゴーグルの双方の機能を満たせるかもしれません。私もそう思ったので、まずはQuest3を購入した、と言えます。ただ、確かに機能的にはARグラス的な使い方もできるかもしれませんが、使い勝手の部分では、ARグラスとは大きな違いがあります。買う前は、大きさや重さの違いと視野角や解像度の違いばかりが気になっていましたが、もっと根本的な、VRとARの違いがありました。
現実部分であるパススルーは画質が良いとは言えませんが、最近のアップデートでも画質が向上しましたし、あまり不便は感じません。ただ、この機能が活用されているアプリは多くない印象です。一部のアプリは、部分的にパススルーになるMRアプリというべきものがありますが、以前はパススルー画質が悪く、MRに注力されていなかったようで、VRアプリのほうが主流だと思います。このVRアプリでは、移動は危険です。家具や壁にぶつかったり、階段から落ちるかもしれません。ゲーム中などは、急な動きが発生する可能性が高いので、危険度は高まるでしょう。手を振ったときに家具にぶつけた、という話はよく聞きます。ですから、アプリ利用中は移動せず、アプリを利用していない時は、全画面パススルーにすればゴーグルを被ったままでも移動して良い、が基本のようです。そして、残念なことに、今のところ、MRアプリとVRアプリは同等の扱いになっているのが普通で、例外は、システムに最初から入っている標準搭載アプリだけなんじゃないかと思います。
Quest3においての具体的な事を書きましょう。アプリ利用の際にはガーディアンを設定します。ガーディアンは仮想の鳥籠のようなものです。VRゴーグルに、今居る位置を認識させ、家具などにぶつからずに済む範囲として円を決定すると、仮想の鳥籠が設定される感じです。(開発者モードで無効にすることが出来ますが、危険を伴うので無効にはしない前提で話を進めます。)
例えば、ある動画視聴アプリで、VR動画でない普通に長方形の動画を視聴している時、アプリの設定でパススルーが指定してあれば、現実の中に縁のない大型テレビが浮いているような状態になります。この状態で画面サイズを小さくすれば危険なく移動することも可能だと思いますが、一律でVRアプリという扱いになっているようで、ガーディアンから出ようとすると警告されます。ただし選択肢があって、ガーディアンの作り直しか、パススルーで移動するか、を選べます。パススルーで移動を選べば、お手洗いなどに行って戻って来た元の場所で再開できますし、別の場所で再開したい場合は、そこでガーディアン作成をして再開できます。
前述の通り、Quest3にはMRアプリと呼ぶべきアプリも一応あります。標準搭載アプリがそうです。システム内でシンプルなデザインのアイコンで表示されているアプリで、例えばwebブラウザはこのMRアプリです。これらのアプリは、移動しようとしても警告されません。移動に際して、アプリ画面は付いてこず元居た場所に置き去りにされ、視界を邪魔しません。そして別の場所で再開する場合も、ガーディアンを作ることなく呼び出せます。
総じて、Quest3にはVRアプリとMRアプリが共存しており、標準搭載アプリ以外は今のところほぼVRアプリと思われ、移動を制限されるものの、少しの手間で対処できるため、ゴーグルを着けたまま家の中を移動するくらいは可能、という事です。
これに対して、ARグラスでは(少なくともVITURE Oneでは)、ガーディアンなどの概念すらなく着けたまま使えます。VITURE Oneの場合、55インチのテレビが2m先にある、27インチのモニタが1m先にある、11インチのタブレットが40cm先にある、そんな大きさで、ずっと付いてきます。ここが大きな違いと言えるでしょう。
さて、ここまで読んでいただくと、VRゴーグルとARグラスの共通使用用途として考えられる動画視聴において、場所を移動しない場合は、どちらでも良く、場所移動を伴う場合はARグラスが良い、という事になりそうです。が、そうとも言えないのです。場所を移動しない状況として、話題になりがちなシチュエーションとして、寝ながら視聴を例に挙げましょう。この場合においても、ARグラスのほうが便利だったりするのです。理由は、物理的な理由と、ソフトウェア的な理由があります。
まず、物理的な理由ですが、これは機種やアクセサリによっては問題ではないでしょう。私の場合は、Quest3にバッテリー付エリートストラップもどきと更に追加バッテリーを使っていますが、これは、本体重量とバランスを取って、前面ばかりに荷重がかからないようにする方策であり、Quest3ユーザーにとっては、よくある方策だと思いますが、この場合、常に後頭部にバッテリーが存在するので、実質、寝ることができません。寝る場合は荷重が前面に偏っていても問題ないはずなので、外せば良い、とも言えますが、正直それは面倒です。
次に、ソフトウェア的な理由ですが、これはアプリの仕様に関わってきます。私はQuest3で動画を視聴する場合に3種のアプリを使っています。メインで使っているのは、SKYBOX VR Video Player。これは有料のアプリですが、評判が良い定番アプリのようで、導入しました。今はこれを使うことが多いです。無料のアプリを試していたときは、DeoVR Video Playerと、Bigscreen Betaを使い分けていました。前者はVR動画に対応しているのが長所で、後者は(仮想世界ぼっちの私は使っていませんが)仮想空間での別ユーザーとの同時視聴が長所と言えます。この3つのアプリを例にします。
まず、DeoVR Video Player。これは結構便利だと思います。ボタンひとつで自身の正面に画面を配置できます。寝た姿勢でボタンを押せば、眼の前に画面が来てくれる感じです。
次に、SKYBOX VR Video Player。これは設定次第です。画面の外側の背景部分を選択できるシネマシーンという設定があるのですが、これを、シネマやIMAXに設定すると、劇場のスクリーンで動画を視聴するような環境になります。当然、画面は動かせません。寝るので画面を天井に、なんて事はできないのです。このモードは画面の大きさも3段階設定しかできないので、私は別のモードを使っていますが、その場合は天井配置可能です。やはりボタンひとつで正面に画面を配置できますが、微調整が不便です。画面が視界の外になるような全く別の方向でしか、配置変更ボタンが効かないのです。
※ すみません。勘違いしてました。配置変更ボタンが効かないだけで、再生動画をドラッグのように位置調整できます。(5月6日2:27 追記)
最後に、Bigscreen Beta。前述の通り、仮想空間での別ユーザーとの同時視聴ができるアプリです。画面を置いてある部屋が何種類も用意されていて、選択して、自分の部屋として設定します。そこに別ユーザーを呼べるという仕様なのですが、もちろん、ひとりでも鑑賞可能です。(書いてて寂しくなってくる気が……。)部屋丸ごと環境が用意されているので、画面を動かせません。一応、ベッドルームも用意されていて、この部屋では、画面は天井に配置されているので、寝ながら視聴は可能ですが微調整はできません。
対して、ARグラスの場合は、眼の前に画面が付いてくるのですから、こういった問題はありません。ただし、画面の大きさはVRゴーグルのほうが自由で、特に、大きく表示することにおいて、ARグラスの限界値は低いです。前述の通り、VITURE Oneでは、55インチのテレビが2m先にある、27インチのモニタが1m先にある、11インチのタブレットが40cm先にある、そんな大きさが限界となり、小さくすることはできても、大きくすることはできません。もっとも、解像度というか解像感というか、鮮明さはQuest3とVITURE Oneを比べれば、VITURE Oneのほうが鮮明です。このあたりは、視野角や角解像度の話になりますが、いろいろな事が絡んできますから、今回はこれくらいにして、いつか別記事で補足するかもしれません。また、前半で書いた、場所移動に関しても、自由度(DoF)の話になりますし、VITURE Oneに関しては、仕様上は3DoFながら実質は2DoFという、ややこしい状態だったりします(そもそも2DoFって何よ?)。これも、いろいろな事が絡んでくるので、いつか、まとめて別記事を書きたいと思っています。
最後に少し蛇足。
今回は、やや抽象的な話から始め、動画視聴に関する、VRゴーグルとARグラスの違いを書きました。この動画視聴に関しては、FLAT動画という事になります。VR動画は該当しない話という事になりますが、理解しながら読んでいただければ当然の事として認識いただけると思います。
ちなみに、FLAT動画とは、2Dを意味しているのではなく3Dも含みます。3DでFLATというと、日本人の感覚では、立体なのに平面? と感じる人が多いでしょう。実際にFLATという言葉を避けて、non-VRという書き方も見ます。私も、非VRとか書いたりします。ただし、アプリの設定の中の用語などでは、FLATという言葉が使われています。
この、3DでFLATな動画というのは、実は私が好きなタイプの動画です。その昔、立体視で見る写真や動画が流行った事がありました。VRゴーグルやARグラスは、その立体視を無意識にできるデバイスです。なので、このタイプの動画を視聴しやすいデバイスとして期待していましたが、残念ながら、コンテンツがあまり出回っていません。VRのほうが、新しいものとして注目されたのか、カメラやレンズが出回り、コンテンツもそちらが中心になっているようです。ただ、状況が変わってきているのを感じます。きっかけは、iPhone 15 Proの空間ビデオなのだろうと思います。最近、3D FLAT動画が急速に増えてきていると感じます。Owl3DというPCアプリも注目され、それを使った、疑似的に作られた3D FLAT動画も、よく見かけるようになりましたし、私自身も、このアプリを試していたりします。3Dになると、存在感のある動画になります。いや、そう書くと意味が違ってしまいますね。存在感という言葉だと存在の大きさを意味してしまう言葉なのでしょうけど、そこに存在している感じ、という意味で存在感と書きました。あたかも、そこに存在しているように感じられる、VRの没入感とは違う魅力を、私は感じます。この、3D FLAT動画を視聴するデバイスとしても、VRゴーグルやARグラスには、たくさん普及してもらいたいものです。そうすればコンテンツの増加も期待できますから。私の記事を読んで、こういったデバイス購入のきっかけにしてくれる人がいれば幸いです。