PICO4 Ultra 発表

VRゴーグルであるQuest3が昨年10月に発売され、その翌月に購入しました。Quest3を選んだ理由は、ひと通りの機能が備わっていて、その割には安い事でした。前機種のQuest2は性能的には劣るものの価格も安く、バランスが良いと思いました。そして、その間くらいの位置に、PICO4という機種が存在します。Questシリーズは、Quest3sという機種が噂されていて、これがPICO4のライバルになりそうな機種と思っています。PICOシリーズはPICO4の上位モデルが噂されていて、Quest3のライバルになりそうだと思っていました。そして、昨日(2024年8月20日)、このPICO4上位モデルが発表されました。

TikTokの運営会社として有名なバイトダンスの子会社PICOが発表した「PICO4Ultra」は、予想通り、PICO4の上位モデル、Quest3のライバルと言えそうな機種でした。製品提供側の発表しか情報がなく、弱点が隠れている可能性もあり、それが明らかになっていない今(2024年8月21日)、判断しきれない部分も多いとは思いますが、現時点で得られる情報を確認してみました。ちなみに、私個人の都合で申し訳ありませんが、Quest3との比較になります。

まず、SoC(簡単に言えばCPUとGPUが一緒になったもの)ですが、これはQuest3と同じだそうです。名称に枝番すら付いていないので、改良版とか廉価版ではなく、全く同じSoCなのかなと思います。そして、メモリ。Quest3が8GBに対して、PICO4Ultraは12GB。メモリは作業領域であり、パフォーマンスに影響を与えるという事で性能を決める要因になりますから、性能はQuest3より高いと言えそうです。
次にストレージですが、Quest3は128GBと512GBの2機種があり、PICO4Ultraは256GB。Quest3は128GBと512GBの価格差が大きく、外部ストレージを活用できない事で足元を見られている感が拭えませんが、それはさておき、PICO4Ultraの中国での価格を現在のレートで円換算した価格は、Quest3の128GB版と512GB版の間ですが、512GB版に寄っています。つまり、価格の割にちょっと容量が小さい感じ。ゲームを含めたアプリをたくさんインストールしたい人には痛いかも。

表示部分は、予測できない、使ってみないと分からない部分だと思いますが、確認していきます。
パネル種類は液晶だと思います。有機ELであれば、それをアピールしそうですが、見当たらないので。だとすれば、Quest3と同じ。液晶にもいろいろありますが、概ね、って事です。
パネル解像度は、Quest3が2064x2208に対してPICO4Ultraが2160x2160だそうで、同等っぽいですが、PICO4Ultraはレンダリング解像度1920x1920とも書いています。後でまた書きます。
視野角は基準がなくて分からない指標ですが、水平視野角は片眼でしか見えてない部分をどう判断するかがメーカーによって違うようなので、私は垂直視野角のほうが比較しやすいと思っていて、これは、Quest3が96度、PICO4Ultraが105度。という事でQuest3より優る……と言えるのかどうか、ちょっと怪しいです。さっきのレンダリング解像度と関連していて、やはり後で書きます。というか、そもそも視野角を大きくすればその分は角解像度が下がるので、視野角が大きいことは一長一短で、個人的には角解像度のほうが重要です。
その角解像度は、Quest3が25PPDでPICO4Ultraが20.6なので、Quest3のほうが詳細だと言えるのかもしれませんが、上に書いたように視野角の信憑性が疑問なので判断できません。垂直方向で単純な割り算をしてみると、Quest3が2208ピクセル96度で23PPD(25PPDはどこから?)、PICO4Ultraが2160ピクセル105度で20.57PPD(ほぼスペック通り)ですが、レンダリング解像度の1920が謎です。
さて、そのレンダリング解像度ですが、個人的には、2160x2160ピクセルのうち、1920x1920だけを表示に使うという事だと予想しています。理由はIPD(瞳孔間距離)調整です。Quest3にあるようなダイヤルが、PICO4Ultraに見当たりません。私は前機種PICO4実機を見たことがないので、どこに何が付いてるかの予想もできず、写真を見た限りの話です。ですが、58~72mmでシームレスに調整できるらしいので、表示の際にクロップして、その位置で調整しているのだと予想している訳です。
となると、PICO4Ultraの表示スペックは1920x1920で判断すべきかな、という事になり、その場合、画素数はQuest3より劣ります。視野角が105度というのが、2160ピクセルの視野角だとすれば、20.6PPDが計算通りで、1920ピクセルの表示に対しては、視野角が93度ちょっとという事になります。角解像度はQuest3より少し劣り、視野角も実質的には少し劣るのかな?
周波数もQuest3が120HzでPICO4Ultraが90HzなのでQuest3のが高く設定できます。
表示能力は全般的にQuest3のほうが良さそうです。とはいえ、その差は小さいとも言えそうで、レンズの出来栄え次第なのかもしれません。

追記。
YouTube見てたら、ある動画で、PICO4はIPD調整モーターが入っているからUltraも同様だろう、みたいな事を言っていました(英語でよく分からん)。私の予想はハズレのようです。というか、IPD調整って、レンズを動かさなくて画面を動かしても意味ないのかな?

そして、これが目玉のひとつと言えそうなのが、パススルーカメラです。
正直言って、Quest3は謎でした。従来のVRゴーグルがモノクロだったり、単眼だったりしたので、カラーの立体パススルーは大いなる進化だったのでしょうけど、そのセンサーは400万画素だったのです。え?って思いますよね。いつの時代だよ、と突っ込みたくなるような画素数です。面積のほうが重要という考えもありますけど、前回の投稿にも書いた通り、センサー面積が重要な用途にも思えません。そもそもセンサー面積は分かりませんし、大きなものを使っているとも思えません。逆にコストを考えて安いイメージセンサーでバランスの良いところを選択したつもりかもしれませんが、400万画素って……。上にも書いたようにQuest3の表示パネルは片眼2064x2208ですから、450万画素を超えます。この時点で表示能力を活かせませんし、イメージセンサーこそクロップで有効画素が減るので、表示能力に対して、かなり足を引っ張るセンサーだったのです。角解像度で言えば、表示が25PPDいけるのに、パススルーの角解像度は18PPDみたいです。
PICO4Ultraではここが順当に良くなっています。順当というか過剰です。3200万画素らしいですから。なぜ、そこまで?と言えば、空間ビデオ撮影機能のためかも。もっとも、画素数だけで言えば、その機能に対しても過剰ですが。Quest3でも開発者モードでゴニョれば空間ビデオ撮影可能みたいですが、PICO4Ultraはこの機能を標準で持ち、それなりに高い解像度で撮影できそうです。具体的には2048x1536だそうで、iPhone15Pro、QooCamEGO、XrealBeamProより高い解像度という事になりそうです。ちなみに、センサー画素数には遠く及びませんから、もっと解像度を上げられそうにも思いますが、映像を処理する能力との絡みもあるでしょうから、妥当なのか否か判断できません。アップデートは期待したいところ。空間ビデオという名称はアレですが、FLATでも3Dな動画が好きな私としては、おおいに気になる部分です。
ちなみに、画素数が過剰な理由は公式的にはクロップ(トリミング)だと書かれています。いや、それにしても過剰だろ。ピクセルビニングを使ってるとも書かれています。

その他。
Wi-FiやBluetoothといった通信機能がQuest3より少しずつバージョンが新しいです。
マイクとかスピーカーは出来栄え次第だと思いますから、判断できません。
バッテリー容量とか消費スピードも実機レビュー待ち。ただし、充電スピードは45W対応との事で速そうです。
細かいところでは、コントローラは片手あたり単三電池2個使用みたい。Quest3より重くなるかもね。
本体重量はQuest3より少し重いようですが、前後バランスを重視したデザインなので、装着感は良さそう。Quest3にストラップを組み合わせる状態と比べれば軽そうで、価格的にも優しいかな。ただし、寝ながら使用したい人は要注意なのかも。
ハードウェア的には、そんな感じ。この手のガジェットにありがちですが、後出しジャンケン的に良くなっている部分が多い印象。表示能力はちょっと気になるけど。

ソフトウェア的には、将来的な進化を大いに期待できる部分なので、現時点での判断はできないけど、これまた後出しジャンケン的に、盛りだくさんになっています。
一番の注目は、専用のトラッカーとの連携機能が備わっている事かな、と思います。トラッキングに必要なデバイスはいろいろなものが出回っていますが、導入は面倒なようです(私自身は使っていないので詳細は分かりません)から、専用品に縛られるにしても、利便性の高いものが提供されているのは良いことだと思います。しかも、こういう状況では足元を見られるのが嫌なところですが、専用トラッカーが安いようなので、これも良い感じ。しかも、このトラッカー、ハードウェア的にも良さそう。しっかり調べてませんが、相対座標ではなく、絶対座標でトラッキングできるっぽい。気になる人はしっかり調べてみてください。ともかく、使用時の導入の手間が削減されるようです。
そして、マルチウィンドウ的なワークスペース(PanoScreen Workspace というらしい)ですが、これは一長一短かも。表示可能な360度の領域というのが、リング領域との事ですし、紹介画像を見る限り、横並びのみな気がします。だとしたら、ちょっと不便かも。
そもそもウィンドウ的な表示ができるものがどれだけあるか、ってのが少なかったら意味がありませんが(Quest3は少なくて、実質ブラウザの多窓用な気もします)、WindowsもMacもiOSもAndroidもミラーリング出来るとか。これをOSの機能として標準搭載というのは良さげ。もっとも、今後のアップデートで可能らしいです。ちなみに、今後のアップデートで可能に、ってのは多いです。注釈で小さく書いてあって、イマイチ。こんなことも出来る能力は持ってる、って話だったら、Quest3も同じですし。それはさておき、Androidアプリが使えるようで、それもウィンドウ表示できるものとして期待できそう。タッチ操作の代わりをどうするのかは分かりませんが。気になるのは、この件がグローバルページには書かれてない事。中国版とグローバル版で仕様の違いがあって、グローバル版には提供されない機能って事だと残念。

今わかっている情報について書いてみました。自分自身の備忘録としても。他の人にも参考になれば幸いです。

2024年8月31日追記。
マルチウィンドウ的なワークスペース(PanoScreen Workspace というらしい)に関して、横並びのみではない映像がYouTubeにありましたね。そのチャンネル、情報が早くて、中国で9月2日発売と言われているのに、発表日(8月20日)に既にレビューが上がっていて、しかも、発表前の新型車のカムフラージュにような迷彩の入ったものだったりして、どんなチャンネルか謎だったのでスルーしていました。ちなみに、翌日には迷彩のないPICO4Ultraの開封動画が上がっています。ともかく謎だったので見てなかったのですが、他の動画に引用されているものがあったので、辿ってみたら縦横無尽に多数のウィンドウが配置されている状態が映っていました。これには期待です。あと、同じチャンネルに、Quest3との画質比較動画が上がっていました(8月23日)。動画視聴とパススルーらしき画面を(キャプチャではなく)映したもので、動画はどちらが良いのかわからないくらいな感じ(個人的にはQuest3のほうが僅かに良いかな?くらいに見えるが、シーンによって逆転することもある感じ)、パススルーらしき映像は、スペック通りPICO4Ultra圧勝といった感じでした。

ところで、PICOってバイトダンスの子会社なんだよね。個人的に、TikTokを見る習慣はありませんが、女の子が可愛く、時にはセクシーに踊ってる動画は大好きです。空間ビデオで投稿できるようになるのかな?バイトダンスなだけにアメリカは駄目かも知れないけど、グローバル版で、撮影、編集、投稿ができるようになってくれて、そういった投稿がなされるようになる未来に期待します。

もひとつ余談。
ワークスペースに並べられるアプリが少ないって話を途中に書いたけど、そこ、ホントなんとかして欲しい。脇で動画を再生したまま、ブラウザで調べ事とか記事を読んだりとかしたい訳ですが、(物理モニタのが遥かに快適だが、3D動画のため)Quest3のホーム画面でそれをやろうとすると、Metaの標準プレイヤーを使うことになる。Quill Theater とか Meta Quest TV とか(両者同じものな気がするが何が違うのかは知らん)。こいつらではできないこともある。動画の背景をパススルーしたいときは、DeoVR Video Streaming(名称変更された?)を使ってるし、PC内の動画をSMBネットワーク経由で再生するときには、SKYBOX VR Video Playerを使ってる。VRモードに入るのは、VR動画のときだけで良いじゃないか。インターフェイスとFLAT動画再生はVRモードに入らないで良いじゃないか。という訳。
もちろん、ブラウザの選択肢も増やして欲しい。できれば、モバイル版ブラウザでなくてデスクトップ版ブラウザ。Wolvicも使ってるけど、それ自体がVRアプリ。何なん?あと、物理キーボードの日本語入力も標準で対応して欲しい。最近になって、空間コンピューティング(この名称もアレだが)的なアップデートが続々と出ていますが、動機はどうあれ、その進化は歓迎しますし、OSだけでなく、アプリ側にも対応をお願いしたいものです。そこ、PICO4Ultraと大いに競ってくださいな。


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