メタバースはオワコンか?
まえがき
ChatGPTに端を発したAIブームの一方で、どことなくWeb3への熱気が冷めてきているのを多くの方が感じているのではないでしょうか。
特に、2021年にfacebookがMetaに社名変更したあたりから起きた「メタバース」のブームについては、今や懐かしさすら覚えます。
そんなメタバースのリアルな現状をレポートする海外記事があったので紹介してみます。
検索トラフィックは最盛期から80%以上減少
Googleトレンドで「metaverse」の検索トラフィック(世界全体)を調べると、2022年1月をピークに急落、直近では最盛期の15%程度のボリュームしかありません。
なお、日本についてはそこまでドラスティックな幻滅が起きていないようで、検索ボリュームの低下も約6割弱にとどまっています。
直近もトラディショナルな大企業連合による「メタバース経済圏構想」のような発表も出ているあたり、日本はグローバルのモードとはだいぶ乖離がありそうな印象です。
Metaの迷走
こうしたメタバースへの関心低下を受け、社名変更までしてメタバースにフルベットする姿勢を見せたマーク・ザッカーバーグからは「メタバースは我々のやっていることの大部分ではない」との発言も出てきています。
Meta Questのヘッドセットを製造するReality Labsは昨年137億ドル(約1.8兆円)の赤字を出しており、経営的にも厳しい状況です。
Metaはメタバース事業に関連してEU圏内で1万人を採用する計画を打ち出していましたが、実際に採用が動いているかどうかは不透明な状況の一方、競合のマイクロソフトは「メタバースチーム」を立ち上げから4カ月で100人以上をレイオフしています。Open AIへの先見的な投資でAIの波に乗るマイクロソフトは、メタバースについては”見切っている”ような印象すら受けます。
そもそもメタバースが何か、誰もわかってない?
記事ではメタバースの問題点として「それが何なのか、誰もわかってなかった」という点を挙げています。
さらに、Web3業界では有名なAnimoca BrandsのCEOにこの疑問をぶつけたが、納得できる回答は得られなかったと(Animocaはメタバースプロジェクトに投資する20億ドルのファンドを立ち上げる予定だったが、市場環境の要因で10億ドルに縮小)。
さいごに
記事は「最も深刻な問題は『誰も欲しがらない』ことだ」という、かなり辛辣な言葉で締められています。
「VR睡眠」のようなエクストリームな事例が取り上げられることもありますが、実際はVRヘッドセットを購入した人でも数回使ってみて飽きてしまった、という人が大半ではないでしょうか。
「より没入できるインターネットを実現する」というイメージはわかるし、いずれ実現する未来だと思いますが、あまりに時間軸が長すぎ、そして、理想に比して今実現できている体験があまりに貧弱だった感は否めません。
“Startup survives on momentum”(スタートアップはモメンタム(勢い)によって生き延びる)というのはY Combinator の Sam Altmanの言葉ですが、メタバースへの幻滅と、ChatGPTを中心とするAIの興隆により、Web3のモメンタムは確実に落ち着き、スタートアップについてはボーナスステージが終わった状況といえるかもしれません。
ChatGPTを初めて触った時の「おお、すげぇ」という手触り感のある感覚、そういうものこそマスアダプションの兆しであり、Web3業界が今問い直されているもののように思えます。