喘息と気管支拡張症(非嚢胞性線維症)
日内会誌の記事を噛み砕くマガジン、5本目。
内科学会員のみんな、毎月じっくり読む時間ないでしょ?
サンが気になったキーワードだけ拾って紹介するので、
詳しく知りたくなったら雑誌をひらけば良いと思うよ。
疫学
日本にどれくらいの気管支拡張症患者がいるのか?
2015年は10万人あたり50人だったのが、
2021年は86人と、経時的に増えてきているらしい。
とくに有病率が高いのは、中高年女性(10万人あたり200〜500人)とのこと。
非嚢胞性線維症気管支拡張症に合併した気管支喘息の頻度は、25%とのこと。
中等症・重症の喘息患者では、気管支拡張症の合併頻度は25〜68%と高い。
診断
胸部CTさえ撮影すれば、気管支拡張症自体の診断はカンタンである。
ポイントは、
喘息患者でいつ気管支拡張症を疑って胸部CTを撮るべきか
気管支拡張症の原因疾患の検索
である。
いつ撮るべきか〜NOPES〜
コントロール不良の中等症〜重症喘息例で、
気管支拡張症の合併を疑うポイントは、
NOPESと覚える。
呼気NOが低い(<20.5ppb)
1回以上の肺炎(Pneumonia)の既往
慢性の喀痰症状(chronic Expectoration)
重症喘息(greater asthma Severity)
この中でも、呼気NOが一番鑑別に有用なようである。
上記のP・E・Sを満たす患者で呼気NO≧20.5ppbの場合、気管支拡張症の可能性はゼロで、
反対に、呼気NO<20.5ppbの場合、気管支拡張症の可能性は100%だ!
というのだ。
ほんまかいな!www
NOPESの原著はこちら(Respir Res.2018 Mar 16;19(1):43.)
喘息患者398人(60% が重症喘息)が対象で、気管支拡張症有病率は 28.4%。NOPES scoreは、気管支拡張症の診断で 70% の AUC-ROC を生成し、特異度は 95%であった。
Pubmedでパッと検索した感じ、このNOPESというClinical Prediction Ruleは、まだ外部検証されていなさそうであり、検査性能の信頼性はまだなんとも…という印象である。
呼吸器内科標榜でない限り、一般内科外来で呼気NOを測定することは困難と思われ、現実的には
湿性咳嗽
肺炎既往
あたりで、胸部画像評価をする!という決断になるか、
そもそも重症喘息だなと思った時点で、早々に呼吸器内科専門医に紹介するだろう。
気管支拡張症の原因疾患検索
UpToDate(成人における気管支拡張症の臨床症状と診断)によると、
後天性の原因としては、
異物誤嚥
気道の腫瘍
結核、ヒストプラズマ症、サルコイドーシス
慢性閉塞性肺疾患、α1アンチトリプシン欠損症
アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
再発性多発軟骨炎、関節リウマチ、シェーグレン病、クローン病など
が挙げられていた。
先天性の解剖学的異常としては、
気管支:気管支軟化症、気管支嚢胞など
血管:肺分画症、肺動脈瘤など
リンパ:黄色爪症候群
が挙げられていた。
日内会誌のこの項目では、上記のような疾患を念頭に、
家族歴
幼少期の肺炎歴
慢性副鼻腔炎歴
不妊歴
関節痛
などを問診したり、
抗酸菌を含めた喀痰培養
血液像
血性免疫グロブリン
リウマチ因子
抗CCP抗体
抗SS-A抗体
抗核抗体
ANCA
総IgE値
A fumigatus特異的IgE抗体
HTLV-1
呼吸機能検査
副鼻腔CT検査
を行う、と書かれている。
治療
BTSのガイドラインでは、ステップワイズ管理が提唱されている。
STEP1
背景疾患の治療
気道クリアランス±呼吸リハビリテーション
毎年のインフルエンザワクチン接種
増悪時の速やかな抗菌薬投与
セルフマネジメントの計画
STEP2
それでも年3回以上の増悪があれば
理学療法の再評価と喀痰調整薬導入
STEP3
それでも年3回以上の増悪があれば
もし緑膿菌定着していたら…長期抗緑膿菌薬吸入療法 or 長期マクロライド療法
他の病原菌が定着していたら…長期マクロライド療法 or 検出した菌に感受性のある長期抗菌薬の経口・吸入療法
病原体が定着していないなら…長期マクロライド療法
STEP4
それでも年3回以上の増悪があれば
長期マクロライド療法と長期抗菌薬吸入療法
STEP5
それでも年5回以上の増悪があれば
2〜3ヶ月毎の定期的な抗菌薬の静脈投与を考慮
気道クリアランスとは?
などの器具が使われるようです!
知らなんだ!!
抗緑膿菌作用の吸入抗菌薬 トービイ
サンは処方経験なかったのだが、使い方を読んでみると、
とある。
そんな使い方するんだ!
知らなんだ!!
待望の新薬!
ブレンソカチブ(brensocatib)は、
好中球エラスターゼなどのセリンプロテアーゼの活性を担うDPP-1(cathepsic C)を阻害する薬である。
第2相試験(NEJMの日本語訳アブストラクト)では、気管支拡張症患者の好中球セリンプロテアーゼ活性がブレンソカチブにより低下し、気管支拡張症の臨床転帰を改善(増悪までの期間延長)させたことが示された。
最近、第3相試験(ASPEN試験)でも気管支拡張症の増悪抑制効果が報告された、とのことだが、
CHESTのサイトでは、2024年11月8日時点で、「著者要請により、抄録が一時的に削除」された状態となっているため、詳細はよくわからない。
気管支拡張症に関して、知らないことばかりであったなぁ…。