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【医師解説】海外旅行に持って行く薬リストと注意点!

これは前回の続きです。

〜前回までのあらすじ〜
不安とめんどくさがりのせいで、医師10年目にもなって、海外旅行に行ったことのないサン。夏休みに経営大学院の同期とエジプト・トルコ旅行に行くことになり、まずは健康面の不安を払拭しようと動き出す。
最初に、エジプトとトルコに行くにあたり、どんな感染症のリスクがあり、どのワクチンを接種すべきかを判断した。次に、旅行期間を快適に過ごすため、月経のタイミングが重ならないように、薬でずらした。
…ここまで、完璧だ。サンは思った。
しかし、サンが健康面の不安を払拭するためには、まだやるべきことが残っていた。


※このnoteは、

  • 海外旅行期間中、もっておくと良い薬は?

をお知りになりたい方向けです。
総合内科医が医学的知見と実体験をもとに解説します。


携行薬

まずは、携行すべき薬を、以下の2つに大きく分けよう。

  1. 持病に対して使っている常用薬(毎日飲んでる薬)

  2. もし体調を崩した時のための予備薬


持病に対して使っている薬

例えば、高血圧の薬や、喘息の薬など、普段から毎日服用するよう医師から指示されているお薬は、必ず少しだけ多めにもっていく。

これは海外旅行に限らず、国内旅行でもそうなのだが…。
1週間くらい飲まなくても平気だろう、と自己判断して飲むのをやめてしまうのは危険なので、お願いだからやめてね…。

なければ現地調達!というわけにもいかない。理由は、

  • 日本で流通している薬と、海外で流通している薬が異なる

  • 同じ成分であっても、「商品名」が違うので、医師に伝わらない

旅先で、同じ薬が手に入る可能性はほぼないと思っておいた方がいい。

また、錠剤を落っことしてしまうとか、飛行機のトラブルで滞在期間が少し長くなるとか、を想定して、多めに。

機内に持ち込む用+スーツケースに入れる用とに、分けてパッキングしておく。
機内に持ち込む用には、ロストバゲッジ対策としても1〜2日分多めにもっておけると安心だ。

ただし、必要以上に多量の薬をもっていくと、持ち込みが認められない場合もあるため注意。


英文による医師の診断書が必要な場合も

渡航先の国によっては、英文の医師診断書を求められる場合もあるようなので、事前に確認を。

かかりつけ医に作成を依頼した場合、当日すぐにもらえるとは限らないため、最低でも2週間以上前、を目安に受診することをおすすめする。

ちなみに、エジプトの場合は、

・個人で持ち込める量は3か月分が上限
・購入に処方箋が必要な医薬品は、医師の診断書と処方箋(英文。診断書は患者の身分事項、症状と服用量が明記され、医師署名があること)、また薬品のオリジナルパッケージ(英文)が必要
・処方箋なしで購入可能な医薬品は、服用量を示す資料(英文)と薬品のオリジナルパッケージ(英文)が必要

在エジプト日本国大使館 よくある質問と答え

らしい。

そうなんだろうけど、個人的には、
3つ目の条件(ドラッグストアで買った薬の英文資料)って無理じゃね?と思った。

英文は無理なので、パッケージ(箱)をそのまま持っていく、くらいではなかろうか。


海外旅行の際、特に注意が必要なお薬

  • 向精神薬(睡眠薬や抗不安薬、抗けいれん薬など)

  • 覚醒剤原料(ADHDの治療薬など)

  • 医療用麻薬(がん性疼痛などに対して処方される)

1.医療用の麻薬・覚醒剤原料の携帯輸出入手続きについて

病気の治療のために医師から医療用麻薬・覚醒剤原料を処方されて服用中の方が、旅行等で海外へ麻薬・覚醒剤原料を持っていく場合、または海外から日本へ麻薬・覚醒剤原料を持ち込む場合には、事前に地方厚生局長の携帯輸出(輸入)許可が必要です。

医療用麻薬・覚醒剤原料・向精神薬を携帯して海外へ渡航する際の手続きについて 近畿厚生局

2.医療用向精神薬の携帯輸出入手続きについて

医師から医療用向精神薬を処方されている患者さんが、旅行等で海外へ向精神薬を持っていく場合、または海外から日本へ向精神薬を持ち込む必要がある場合には、ご自身の病気の治療のために、患者さん自身が携帯して出入国する場合に限り、携帯輸出(輸入)が認められています。
向精神薬の携帯輸出入については、向精神薬の総量が一定量を超える場合のみ、事前に証明書類が必要です。

医療用麻薬・覚醒剤原料・向精神薬を携帯して海外へ渡航する際の手続きについて 近畿厚生局

申請をする場合は、こちらのWebページから。

  • 申請には、医師の診断書が必要

かかりつけ医に依頼を。診断書の作成は、医療機関によって、あるいは記載様式によって、設定額が異なるが、だいたい3,000円くらいだと思う。

  • 締切は、出国or入国の2週間前まで

時間的余裕がない場合でも、必ず地方厚生局麻薬取締部に電話で問い合わせを。


もしもの時の予備薬

一般的におすすめされる市販薬を列挙する。

解熱鎮痛薬

解熱薬、頭痛薬として。お腹を下した時の腹痛に対しても使って良い。
厚生労働省のWebぺージで、市販の解熱鎮痛薬の一覧があるので、参考まで。

「NSAID」に分類されるロキソプロフェンやイブプロフェンよりも、「アセトアミノフェンのみ」の薬の方が、胃や腎臓への負担が少なくて、より安心して使えると思う。

風邪薬(総合感冒薬)

風邪を治すものではなく、あくまでも症状を緩和するだけの薬。
医師の立場としては、「正直どれでも同じなのでどれを選んでもいい」し、「別に飲まなくても構わない」。
ただ、異国の地で、風邪を引いた時の心細さを思えば、何かしら手を打ちたくなるのもわからないではない。なので、持っていて良いと思う。


胃腸薬

市販薬をその効果等で大雑把に分類すると、
消化を助ける系
太田胃酸など。ほにゃららアーゼ、みたいな消化剤が入ってます、と書いてる。脂質の多い食事で胃がもたれるなどの場合に良い。

胃酸を抑え、胃の痛みを和らげる系
ガスターに代表される、ファモチジンという成分は、市販薬の場合やや量が少なめではあるが、医師が処方する医療用医薬品と同じ成分である。
他に、炭酸マグネシウム等の制酸剤の場合もある。
胃食道逆流症で、胃酸が上がってくる感じがするとか、胸やけするとか、胃炎の時に良い。

胃の粘膜を保護する系
スクラートやセルベールなど。スクラルファートやテプレノンという成分が、胃の粘膜を保護する。これらも医療用医薬品で使われる成分と同じ。
胃が痛む時に。

漢方系
大正漢方胃腸薬など。大正漢方胃腸薬は、安中散と芍薬甘草湯を配合しているらしい。
安中散は、胃痛や胃もたれを伴う神経性胃炎や慢性胃炎に用いられる漢方薬。
芍薬甘草湯は、就寝中や運動中に足がつるときや、生理に伴う腹痛、腰痛に用いられる漢方薬。

下痢系
正露丸:生薬が色々混ざっている。軟便、下痢、食あたり、水あたり、はき下し、くだり腹、消化不良による下痢、むし歯痛と、なんでも効く、らしい。(HPより
ブスコパン:腸炎の時は、腸の蠕動(動き)によって痛みを生じるが、この蠕動を止めることで痛みを和らげる成分。

整腸剤

ビオスリー、ビオフェルミン、強ミヤリサン、エビオスなど…
効果に大きな差はないと思うので、どれを選んでもいい。
腸内環境を整える、という目的。
下痢になった場合に使ってもいいし、旅行の環境変化で「便秘」になる場合も想定されるので、予防的に飲んでいて良いだろう。

下痢止め

ストッパなど…
元々、過敏性腸症候群があって、ストレス負荷時に下痢しちゃうタイプの方なんかは、持っておいて良いと思う。

しかし、旅先で、ウイルスや細菌などの病原体による「感染性腸炎」にかかって下痢している場合は、やや注意が必要。
感染性腸炎の場合の下痢は、病原体を早く体外へ排出し、治癒を促進しようとする体の正常な反応である。
これを無理やり止めてしまうと、症状が長引いてしまう可能性が懸念されるので、医師としては、「感染性腸炎が疑われる場合は」あまりおすすめしない

難しいのは、今の下痢が「感染」によるものか、「非感染(たとえば環境や摂取した水・脂質の変化)」によるものか、多くの場合、自分では判断がつかないということである。

これは、医師である私でも、自覚症状だけではわからない。

医師ならば、摂取した食物や、考えられる病原体の潜伏期間、随伴症状(発熱を伴う場合は、ほぼ感染だろう)、腹痛の性状、といった情報から、感染の可能性をある程度見積もることは、できなくはないが、確実ではないし、一般の方にはまず無理である。

つまり、下痢止めを飲むことは、基本お勧めしない、と受け取ってもらうのが良いだろう。

どうしても、というときは、次のような場合である。
・長距離のバス移動(バス内にトイレなし)
・長距離のフライト(トイレがあっても混む)

トイレに間に合わないことで、社会的にダメージを被るリスクがある場合は、やむなく下痢止め(or 胃腸薬で取り上げたブスコパン)を使っても良いだろう。短期間にとどめることをおすすめする。


便秘薬

酸化マグネシウムや、コーラック、センナなど…

おすすめは、「便を柔らかくする系」の、酸化マグネシウム。
排便の際にお腹が痛くなりにくく、自然な排便を促してくれる。便が固くなるタイプの方はこちら。

センナは、腸の蠕動を亢進させて、便を排出させるため、お腹の痛みを伴う場合がある。
飲んでからだいたい8〜10時間で効き目が現れるとされているので、夕食後や寝る前に飲んで、翌朝排便する、というタイミングを調節できるのが便利な点。

コーラックは、上記のような2つの効果がある成分を組み合わせているよう。


酔い止め

トラベルミンなど。
飛行機の揺れや、長距離のバス移動で酔いやすい方は、持っておくと良い。

眠気の少ない成分、と書いてあるものの方がおすすめ。


目薬

乾燥している地域なので、ドライアイ気味の方は、ぜひ潤す系の目薬を。
ソフトサンティアなど。

あと、砂漠に行く場合、砂埃などで目に異物が入ることが想定される。
そういった場合に備えて、洗眼薬もおすすめ。

サンが持って行ったのはこれ。外出先でも使える。

※まったくCOIはない。

あと、日頃から愛用しているアイボンのミニタイプ(ホテルで使用)。

機内に液体物を持ち込む場合、一定の制限があるが、ミニなら1ボトルあたり100mLなので、一応持ち込めはする。
1〜2週間の旅行なら(多分1ヶ月くらいでも)、1個で十分。
サンはスーツケース内に入れて持ち運んだ。


塗り薬・虫除けスプレー

ワクチン編でも書いたが、ワクチンで予防できない病気で、蚊が媒介する(蚊に刺されることで、感染する)病気がある。

したがって、虫除けスプレーは必須。

スプレー缶でも、ミストタイプでも、100mL以下のボトルであれば、機内にもスーツケース内でも大丈夫そう。(機内持ち込みの場合、合計量にも制限あり注意)

サンは、液体ミストタイプで100mL以下のものを、機内に持ち込んだ。到着後からすぐに使えるように!


それでも、万一、虫に刺された時、患部が腫れてかゆみや痛みを生じるだろう。
それに対する薬として、塗り薬を持って行っておくと良いと思う。

蚊に刺されて、赤く腫れるのは、蚊の唾液成分に対する「アレルギー反応」が局所で起きているからだ。

虫刺されに対するおすすめの塗り薬は、2種類に分けられる。
1. かゆみの症状を和らげる薬
2. 炎症を抑える薬

かゆみの症状を和らげるには、抗ヒスタミン薬と分類されるような成分(ジフェンヒドラミンなど)や、メントールなど、スースーする成分が配合されているものがおすすめ。
例えば、ウナコーワや、ムヒなど。

サンが日頃から愛用しているのは、ポケムヒ。


かゆみが強かったり、痛みまである場合は、炎症を抑える薬として、ステロイド外用薬がおすすめ。

例えば、リンデロン。軟膏、クリーム、ローションの剤形があるが、虫刺されの場所に使うのであれば、まず軟膏で良いだろう。
クリームの方がベタつきが少ない。ローションは頭皮など毛があるところに。


抗アレルギー薬

花粉やハウスダストに対して、アレルギー体質の方(アレルギー性鼻炎など)は、抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)も携帯しておくと良い。

アレグラやアレジオンなど。

鼻炎になりやすい方は、点鼻薬もあると良い。
市販の点鼻薬は、大きく分けて2種類ある。

1.血管収縮成分ケミカルメディエーター遊離抑制成分配合のもの
2. ステロイド配合のもの

1の血管収縮成分やケミカルメディエーター遊離抑制成分配合のものは、即効性がある。
こちらの「ナザールスプレー」など。

しかし、頻用・長期間利用しすぎると、薬剤性鼻炎になるという副作用がある。
「使えばスッと楽になるが、すぐにまた鼻が詰まって、また使って…」という状況で、使うほど鼻詰まりがひどくなるという悪循環に陥るのだ。なので、使うとしても短期間に止めること。

ステロイド配合のものは、即効性はないが、炎症を抑えてくれる作用があり、アレルギー性鼻炎の根本に効くお薬だ。薬剤性鼻炎になってしまった場合も、ステロイド点鼻薬を使うことで治療する。

同じナザールという商品名で紛らわしいのだが、ナザールαAR はステロイド配合のタイプだ。


サンも昔、学生時代に、薬剤性鼻炎になったことがある。あの時はかなり辛かった。
近所にあった耳鼻科の先生は、とても優しくて、詳しく説明してくれて、ステロイド点鼻薬を処方してくれた。とても感謝している。
以降はできるだけステロイド点鼻薬を使うようにしている。

基本的には、ステロイド点鼻薬を使い、どうしても今だけは!(大事なプレゼンの瞬間とか、プロポーズの瞬間とか…)という場面でのみ、血管収縮成分の点鼻薬を単発で使うことをおすすめする。

サンが実際に持って行った薬

過去に処方してもらった薬で余っていたものや、市販薬を組み合わせて持って行った。
今回、診断書などは準備せずに入国したが、特に咎められはしなかった。

・バファリンルナ(解熱鎮痛剤:アセトアミノフェン)市販品
・ロキソニン(解熱鎮痛剤:NSAID)市販品
・フェキソフェナジン(アレルギーの薬:抗ヒスタミン薬)処方薬
・モメタゾン点鼻薬(アレルギーの薬:ステロイド)処方薬
・コデインリン酸(咳止め)処方薬
・ビオフェルミン(整腸剤)市販薬
・ステロイド点眼薬(角膜周囲浸潤という病気に対して)処方薬
・タケキャブ(胃酸を抑える胃薬)処方薬
・ケフレックス(抗菌薬:膀胱炎になった時のために)処方薬
・ウェルウォッシュアイ(洗眼薬)市販品
・アイボンWビタミン(洗眼薬)市販品
・サラミスト(虫除けスプレー)市販品

サンの薬詰め合わせ

もし、過去に処方してもらった薬のあまりがない場合、予備薬として新たに処方してもらうことは可能だ。
ただし、基本的に症状がない場合の予防的な薬の処方は、「保険適用外」であり、「自費(クリニックごとに設定された価格)」になる。

「トラベルクリニック」などと検索してみると良い。
ワクチン接種など、自費診療メインでやっているクリニックがいくつかhitすると思う。

そこを受診すれば、トラベルセットや、風邪薬セット、などを購入することができる。


でも、まぁ、ここまで読んでいただいた方なら、おわかりだと思うが、ほとんどの症状は市販薬で対処可能。

抗菌薬はさすがに市販で売っていないのだが、
膀胱炎になりやすい女性の場合は、できるだけ排尿を我慢しないなど、予防的行動を取るようにすれば、準備しなくても大丈夫だと思う。

あと、下痢したからといって、基本的には抗菌薬を飲む必要はない。
頻度が多いわけではないが、万一、腸管出血性大腸菌(O-157)だった場合は、抗菌薬投与が仇となり重症化する危険性も指摘されている。

腸炎に限らず、医師の判断なしに抗菌薬を飲むことは推奨されない。だから、市販されていない。(海外では市販されている国もあるらしいが…そのせいで耐性菌が蔓延して大変なことになっている側面もある)


これで、健康面への不安はかなり解消されたと思うサンなのであった。


準備編はつづく
次回は、必要なグッズリスト&おすすめ機内グッズ編!

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花嫁にもなれず、総合内科専門医にもなりきれぬ哀れで醜い可愛いサン
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