我時想う愛を想う時
バイトからの帰り道23時、早く起きてカフェオレ飲みながら準備する時間、課題をこなす時、寝落ちする時、どんな時でも聞きたくなるのは5lackの曲。
野村周平も5lackとの対談で言っていたけど、これは本当にそうで、私もいつでもどこでも5lackかけたくなります。
そんな彼の作品の中で個人的に1番好きなのが2011年、まだS.L.A.C.K.名義の時代に出したアルバム、「我時想う愛」。
My Space, WHALABOUT の大名盤も語り尽くせないほど大好きですが、やっぱり思い出に残るのはこのアルバム。サブスクにある1番古いアルバムです。
スラックを聴き始めて、1番古いものから聴こう、と決めてこれを聴き始めた時、この気持ちよさにどハマりしました。
てことで今日はアルバムレビュー、初挑戦ですが頑張ります^ ^
解説とかでもなくただの感想ですが、ぜひアルバム聴きながら読んでみてください^ ^
我時想う愛 - S.L.A.C.K.
#1 But Love
一曲目から私のベストソング来ました!
最初のレコードのノイズのような音から、スラックお馴染みの mic check〜 が入ったところでまずアガります。
この浮遊感、このアルバムを象徴するようなものだと思います。
この言葉をあまり使いたくはないけど、簡単に言えばスラックの中で1番 "チルい" アルバムって感じ。
リリックも好きなのがたくさんあって、どこから引用したらいいかわからない。
こことか本当に良すぎてムズムズする。
前半部分はPSGの「愛してます」でも出てきたリリック。
愛してますでは音楽に対する愛だったけど、今回は女の子っぽい。
これ、BABYもHONEYもどっちも愛する相手に対して使う言葉で、どっちが上でっていうのがないのが切ないなーと思います。今まで好きだった人も、今好きな人も全員その時は全力で好きで、ただ相手が変わっていく。
これって音楽にも言えるなーと思いました。
その時ハマってる音楽って、どんなジャンルでも全力で好きなんですよね、ただ趣味が変わっていくだけで。
その積み重ねが今の自分を作っているので、しょうがないけど、変わってしまうことが寂しくもある。
後半部分は、まさにスラックなリリック。
自分ではどうしようもないことを考え込まずに自然に任せる、っていうのがスラックのいう "適当" なんじゃないかな、と思います。
#2 Noon Light feat. GAPPER
一曲目がメロウな余韻を残して終わったところでガーンとGAPPERのバースがいきなり始まってハッとさせられます。
しかもラップしてるのはGAPPERのみ。
Moon Lightとはよく言うけどNoon Lightて普通に日光じゃんって思ったり。
内容は普通に昼の風景っていう感じ。
携帯のアラーム、溜まるスヌーズ~ のところは共感ポイント。
十分おきにアラームがたまっている私の携帯、、、
#3 東京23時 feat. Kojoe & SEEDA
東京に住んだことがあればこの曲の良さがさらにわかるのに、と悔しく思ってしまうくらいパワーのある曲。
飲み会終わり一人になった時に聞きたくなる曲No.1。
まずは5lackのバースから
ここ、スラックが”マイメン”に向かって今日はいつもより鮮やかな景色、と歌っているのだけど、もし私が友達にこんなこと言われたら、死ぬほどうれしいかもなー、
誰とみるか、が大事な中で、自分とみる景色がキラキラしていてほしいって思うことはあります。恥ずかしくて口には出せないけれど。
その直後に、さっきのやつ(マリファナ?)が残ってるとか、と付け加えてロマンチックさをかき消すのは照れ隠しなのか、スラックらしさが感じられるところだと思います。
5lackとは対比的に、SEEDAとKojoeのバースは英語の部分が多かったり、聞き取れないところも多いですが、その距離感が東京を象徴していると感じます。
東京は孤独とよく結び付けられますが、この曲のどこか冷めてる夜のイメージが、それをよく表してるのかなあ。私はよく知らんけど。
特にトラックのシンプルさが逆に耳に残ります。
#4 いつも想う
なんかうまくいかねえなぁ、というスラックの独り言が終わって、一気にトラックが華やかになり始まるこの曲。
流れが変わるこの瞬間が、水が一気に流れ出すときのようで、めちゃくちゃ好きです。脳が全開になります。
フックの
いつも想う 死ぬ前にきっと もっと行けたなんて思うんじゃないか
というのに、”適当” を掲げるスラックの葛藤を感じます。
後悔しないように今を生きろと言われることはよくあります。
でも、その”後悔するとき”のことを考えていたら今を本当に自由に楽しむことはできないし、それに対していつか後悔するんじゃないか。
そんな矛盾に対する葛藤を感じ取りました。
このアルバムでは、But Love の冒頭で、テーマはまあ”適当”と言っているように、"適当"という言葉が多く出てくるのと同時に、"辛い"という表現も多い気がします。(東京23時など)
#5 Come inside
これに限らずではあるけど、BudaMunkのトラックがとてもいい。
ボーっとしていても、いつもここで曲に引き戻される。
本当に知りたい人には振り向いてもらえないものだよね。
ここ、なんでスイス?と考えてます。教えてください。
#6 We Need Love feat. TAMU
この曲、かなり上位に好きな曲です。
そもそも、everything needs love という入りから最高。
というかその前のイントロから最高。
ビートがとにかく優しい。聞いたらわかるけど音がまろやか。
内容は女の子と遊ぶとかそんな感じ。
でも完全に女の子の方には意識が向いていなさそうな雰囲気。
ずっと上の空な感じがしちゃうんですがなんでなんだろう。
セクシーなの体とかじゃなくて瞼なんだ!
しかも瞼のラメ?
素敵な表現。
安直にエロいみたいな描写がないので女の子でも冷めずに共感して聞けるのかな、と思います。
あとは、ヒップホップって、やっぱり薬物とか大麻とかとは切り離せなくて、そういう部分で多くの人が自分とは遠い存在だと思いがち。
スラックはマリファナやってる描写も多いし、吸う音とか入ってることも多いけど、そのいやらしさは全くない。
このへんがスケートカルチャーなのかな。
#7 タワ言
5lackのバックDJも務めている板橋のトラックメイカー、watterのトラック。
ここの言い回しがとても好きで、ブッダブランドの引用なのかな?と思ったけどブッダはあまり聴きこんでなくてわからないので調べたのですが、元ネタは出てこない。
Budamunkの方かな、と思いもしましたが何にせよ歌詞が載ってないのでわからない。
そのときに、5lackのインタビューをいくつか読んでいて、本人が歌詞は自分の手の内を明かしてるようだから載せない、とこのアルバムの時期に言っていたのを思い出しました。
そういう細かいところにもスラックの唯一無二でありたいというポリシーが見えて、やっぱこの人だよ、となぜか嬉しく思いました。
ファンとしては全部覚えて歌いたい気持ちもあるので公開してほしい気持ちもすこしあります。
こういうところまでも考えて、スピっちゃうくらいに哲学的なのに、タワ言なんていう曲名の曲を作ってこの曲は聞き流しなとか言ってるところ。
思想が詰まってるけどそれがスラックの日常に溶け込んでその日常がそのまま曲になってるのがS.L.A.C.Kの時期は多いなと何となーく思います。名前変わってから結構外向きの矢印が出てる雰囲気がする。
#8 夕方の風 feat. YAHIKO
ちょっと暗めの雰囲気漂うトラック。
センチメンタルな曲が多いこのアルバムでちょっと異質な感じがします。
でも結構愛って言ってるなーって思います。
こんな表現が孤高で男らしさを貫くスラックから出てくるのがとてもいい。
フック、YouTubeサマータイムとしか聞こえないけど絶対違う気がする……
#9 My Hood My Home (skit) feat. ISSUGI
My Space, WHALABOUTでもありましたが、彼のアルバムには電話のskit(寸劇)が毎回入っています。
今回は、相手はお母さんかなーと思うんですけど、まず声が可愛すぎる!
PUNPEEのfamily saleでもお父さん出てきたけど、高田家素敵すぎる。
このスキットはISSUGIがフィーチャーされてます。
ISSUGIも超クールだけど優しさが見えるラッパーだな、と思います。
(BESとのInner Trialという曲を聞いた時はさすがに内容が怖すぎて顔見れなくなりましたが。みんな聞いてみてください)
家族にできた曲を最初に聞かせるの、かっこいい。
こういうのってロックにはない表現だなって思います。
#10 I can take it (Bitchになった気分だぜ)
内容は自称ビッチの女の子とスラック自身をスラックが1人二役でやるというもの。
やっぱり失恋したり、遊ばれてた時ってもちろん辛いけど自分を悲劇のヒロインに仕立ててそれに酔っちゃう部分もある。
ここに出てくる自称ビッチはその感じが強いと思います(笑)
I can take it って日本語では 我慢できる っていう意味なんですけど、遊ばれてるのにも我慢できるよ、もう諦めた、私ってビッチだから、みたいな。
そこをスラックが 俺はそうとは思えな〜い ってぶった斬るのが最初普通に面白くて笑いました。
あと、韻が気持ちいいのがこの曲。
このへんとか
このへんとか
めっちゃ歌いたくなります。
この曲かなり好きです。
#11 何もない日に feat. SQUASH SQUAD
曲全体を通して、気楽に、いつも通り、リラックスした雰囲気。
このへんとか聞くと肩の力が抜けます。
自分がアガるかどうかを大事にして生きたいなと思ってても難しいことが多いけど、スラックはアガらないイベントとかライブとかのオファーは断ってるらしい。
どこまでも漢でかっこいいなと思います。
親近感のあるこののリリックが好きです。
SQUASH SQUADはVITOとLoota、プロデューサーのDineroの3人組。Lootaはスラックの情でも客演としてやってました。
ここめっちゃかっこいいです。
こんなおしゃれな韻の踏み方あるんだー‼️‼️って最初に思った記憶があります。
トラックも、この曲で終わりかな、っていうくらいのテンション感。このアルバムはジャケ写にもピアノが写ってるけどピアノのトラックが多くてピアノやってた身からしたらやっぱり落ち着くんですよね。
#12 Had Better Do
前の曲で終わりかな?と思ったら終わりっぽくないこの曲で終わりです。クライマックスじゃなくてどちらかと言えばエンドロールみたいな、淡々とラップするこの曲。
このさらっと去る感がステージでのスラックと重なります。
ヒップホップに限らずアーティストって、作風が割とずっと変わらない人と、変わり続ける人といるじゃないですか?
例えば、で例えるの難しいけど、OasisとRadioheadみたいな。
どっちも好きだからどっちがいいとかはないけど。
5lackって本当に変化を受け入れて、変化し続けるラッパーだなって思うんです。
初期作(特にこのアルバム)と最新作比べてみると、本当に全然違う。
それってうまくいったことに甘えてたら出来ないことで、変わることで離れていく人も一定数いる。
私はポジティブに行こう、自分らしく!みたいな、いいこと言おうみたいな歌詞が苦手で、あまり脈絡のない歌詞とか、人間臭さが見えるものが好きなんですが、ここは自分の心に刻んでおきたいリリックでした。
終わり
ありえないくらい長くなってしまいましたT^T
6000字も物を書いたことは1度もありません。
我時想う愛。
とにかく愛に溢れたアルバム、ではないところがとても好きです。
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