イス坐禅と高野山
中秋の名月、お月様の美しい令和6年9月17日、北鎌倉・円覚寺の横田南嶺老師による毎月のイス坐禅会に参加しました。
今回も入念に、首や肩、足の裏、肺など呼吸筋の3点をストレッチした後、
腰を立てて、坐りました。
毎月参加しているのに、毎回新しい発見があるのが驚きです。
今回は足の指から足の裏、かかと、膝、太もも、座骨、そして腰へと、全体が繋がっている感覚を得ることができました。
今年の5月に円覚寺さんでの夏季講座でイス坐禅の指導を受けた際、足の裏からの感覚はなんとなく掴むことができたのですが、足の指先の感覚を強く認識し、腰まで繋がっている感覚を得たのは今回が初めてでした。
今週末は2泊3日で高野山で空海さんの足跡を全身で堪能してきました。
世界遺産の宿坊に宿泊し、精進料理をいただき、朝のお勤めにも参加。
空海さんが今も見守る奥の院にも夜も朝もお参りし、空海さんゆかりの、神社やお寺にもたくさん足を運び最後に護摩祈祷を受けてきました。
一緒にお参りした仲間とたくさん語り合いました。
そのなかでも、山の上にあり、とても風が心地よく、感動した神社がありました。
風の音、木々のざわめき、雲の流れ、どれも素晴らしく、山頂で30分ほど座っていました。
このとき、横田老師の著書で知った円覚寺の朝比奈宗源老師のこと言葉を思い出しました。
「私たちは仏心という広い心の海に浮かぶ泡の如き存在である。
生まれたからといって仏心の大海は増えず、死んだからといって、仏心の大海は減らず。
私どもは皆仏心の一滴である。
一滴の水を離れて大海はなく、幻の如きはかない命がそのまま永劫不滅の仏心の大生命である。」
海ではなく山の上でしたが、自分が自然の一部だなぁと感じ、ずっとここにいたいなと思えるような時間でした。
昨夜深夜に東京に戻り、今日のイス坐禅。
「人間の最も身近な自然は、自分の身体そのもの」という言葉を思い出し、
イス坐禅中に高野山の神社での心地よい時間を思い出すことができるかなぁと思って座ってみましたが、
そういえば、青空は見えたかな、など思い出しているうちに、終わりました。
そりゃ無理だよな、高野山にまた行きたいな、どうしたら行けるかななどと思いながら休憩時間を過ごし、呼吸や目のワークをしているうちに高野山のことはすっかり忘れ、後半の坐禅に入りました。
前半よりも、とても心地よい時間でした。
都会のビルの一室でありながらも、自分一人ではなく、
50名近くの皆さんと集まって、こうして座っていることが、なんか自然の中にいるように感じられました。
そういえば今日の導入でも、横田老師もこうして皆さんと毎月集まることの良さをお話されていたこと思い出しました。
僕は不安になると、たくさん本を読み、文字情報を得ることで、安心しようとします。
もはや読まなくとも本を持っていることが安心になるので、読まない本がカバンに6冊くらいまで増えることもあります。
仕事も含めて、やはり文字情報に偏りがちです。
しかし、2泊3日の高野山の旅と今日のイス坐禅を通じて、
身体を使って自らの変化を感じることや、五感を使って、文字以外の情報を味わう心地よさを実感しました。
文字では知っていたことも、体感してはじめて、頭と身体とハートが繋がった気がしました。
少し話がそれますが、毎朝横田老師の法話を聞くことで、臨済宗や禅の知識がどんどん増えています。
ホトカミを運営している以上、もちろんなるべく偏らないようにと、他の宗派の勉強もしているのですが、やはり偏りはあります。
しかし、今回の高野山の旅を通じて、真言宗、密教のお話を聞いたとき、
あ!これ禅と似てるな!というか、ほぼ同じなのかもしれない!など、軸が少しだけできたことで、イメージしやすくなったりして、面白かったです。
これまで2回、高野山にきたときよりも、明らかに自分の仏教への感度がアップしている手応えを感じました。
原始仏教から大乗仏教への流れなども勉強した効果かもしれません。
こちらの花園大学の名誉教授の佐々木閑先生の連載はオススメです。
皆さんも、気になる仏教の本を読んでみてください。
すぐに何か変わったりしないと思いますが、ただ歴史が好きでお寺に足を運んでいたときよりも、楽しみが増えた気がします。
でも、なんにも知識がなくても、何かを感じ取ることができるのも、お寺や神社のおもしろいところですよね。
最後に、今日はちょうど中秋の名月ということで、月にちなんだ法話でした。
■月光洗浄 坂村真民
三人の子どもが外から走って帰って、
「父ちゃん 父ちゃん 美しいお月さんが今 出ているんだよ。とてもとても大きな大きなお月さんだよ。」と言う
わたしは仕事をやめて、東の窓を開ける
ほんとうに久しぶりのいい月だ
「ああ これを四智円明の月というのだろうか」
そんなことを考えながら合掌礼拝する
天上の荘厳さはいつかは宇宙本然の美しさに自覚させてくれよう
あまりにもひどい時代に生きて、月光に身を洗い浄めたい心でいっぱいになる
「念ずれば、花ひらく」で有名な坂村真民先生のご家庭は、机がひとつしかなかったような貧しい環境だったそうです。
それでも月を愛でる真民先生心の豊かさ、美しさを聞きました。
ほんの少しだけ、自分の心も秋の月のようだなと感じた中秋の名月でした。
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