Study Of Hiram Bullock 〜ハイラム・ブロック研究(使用ギター編)〜
すっかりギターという楽器やジャズ・フュージョンというジャンルの音楽から関心が遠ざかっていたのですが、長いこと漠然とした「テレキャスターが欲しい願望」だけは何となくありまして細々と物色していたところ、昨年2020年にTelecasterの前身モデルである「Nocaster」ですらない、グレッチに訴えられ商品名の部分を削ってNocasterとして再度出荷される前の「Broadcaster」が70周年ということで復刻されていることを知りました。
https://shop.fender.com/ja-JP/product/70th-anniversary-broadcaster-release
長いことギターに触れてすらいませんでしたが前述の「テレキャスターが欲しい願望」×テレキャスターの始祖的なモデルのメモリアルな復刻により、「テレキャスターが欲しい願望」が自分の中で高まったため重い腰を上げて御茶ノ水に向かったのですが、行く前にデ◯マートで確認したつもりが店頭在庫が無く(笑)、そのまましょんぼりと帰ろうとしたところ、たまたま(やや雑なレリック加工をしてある)Fender MexicoのRoad Worn ‘50s Telecasterが目に入り、試奏してみたところなかなか気に入りましてBroadcasterよりかなり安かったので、別に得をしているわけでもないのに得をした気分になり即決、そのまま連れて帰りました。
Broadcasterを買おうとしたつもりがメキシコ製フェンダーで妥協?し買って帰ってきたプロセスは謎に見えるかも知れませんがこれには理由がありまして、メキシコ製フェンダーのRoad Wornシリーズは10年超?くらいの歴史があり私はその初期のロットの’60sのRoad Worn Stratocasterを所有しておりましてある程度品質やコスパの良さについては理解、信頼があった、というのが背景にあります。
余談に次ぐ余談ですが、既に私が所有していたRoad Wornのストラトキャスターはローズウッド指板・アルダーボディだったので、せっかくならテレキャスターはメイプルネック・アッシュボディという「より明るいテレキャスターらしいキャラクターのが良いな」と思っていたのですが、今のフェンダーの商品ラインでいうと「Vintera(Vintage Eraの略らしい) Road Worn」にあたるものは、アッシュ材が希少になってきているためか?’50sのテレでもボディには代用としてアルダーが使われてるっぽいのですが、購入した某I楽器店の店員の方曰く、「(私が購入したテレキャスターは)Vinteraではない」とのことでした。なので、いまいち買ったギターが自分の希望していたメイプルネック・アッシュボディというスペックのギターなのかは未だにはっきりしないままなのですが(笑)、少々悶々とした挙句、もはやどうでもよくなってしまいそのまま使っています(笑)
こちらがそのテレキャスターを使い、サックス奏者の故マイケル・ブレッカーがスタイナーフォンで吹いていたフレーズを、楽天イーグルスのイーグルスガールズデーのユニフォームで弾いてみた、という訳の分からない動画です。オクターブやポジションを変えたり色んなキーの曲で練習してみると結構使えそうなフレーズだと思います。どことなくジョンスコとかっぽくもある。
そんなこんなで、ソリッドボディのエレキギターの元祖ともいえるテレキャスターを入手(おまけに3.1kg程度の軽量個体!)し爪弾いていると、出音に自分の弾き方のクセ等がかなり素直に出る≒ストラト等に比べてシンプルなつくりで誤魔化しも効きにくいため、以前よく弾いていた頃は騙し騙しやっていたものの、弾き方のフォームやらを矯正する必要があることが分かってきまして、自分の弾き方に向き合ってほぼ毎日弾いているうちにギターがなんだかまた面白くなってきてしまい、ギター熱がやや再燃と同時に、学生時代にかなり熱心にフォローしていた(といっても私が追いかけ始めた頃には既に亡くなっていましたが)ハイラム・ブロックへの熱が急に蘇ってきました(笑)
と、前置きがめちゃめちゃ長くなりましたが今回noteを書いてみましたのは、前述の通りギターおよびハイラム・ブロック熱の再燃がまず理由の一つ。
もう一つの理由は、フュージョン界で有名なギターリストというとパット・メセニーやマイク・スターン等は挙がりますが、ハイラム・ブロックについてはどちらかというとサイドメン的な、スタジオミュージシャン的な側面が強く(本当は、ライブなんかを観てるとエンターテイナーとしてもジャズ・フュージョン界隈では未だに唯一無二だと思うのですが)没後間もなく13年というところで忘れられてきている部分もあり、また、議論する場所(昔はmixiとかのコミュニティ等でギリあったのですが)も今となっては無くなってきており詳細な情報も取得しづらくなってきている感があるので、暇に任せて(笑)書いてみようと思ったからです。
過去の彼のギター・マガジンやジャズ・ライフ等の雑誌での特集、教則ビデオ、ライブ映像、その他ファンページや噂話等々…蓄積した記憶の中から思い出しながら書いてますので、誤っている部分もあるかも知れませんので話半分くらいで見てもらえるとありがたいです(笑)
彼の魅力は色々あるのですが、とりあえず今回は「使用ギター編」ということで彼のトレードマークでもあったHSHのサンバーストのボロボロのストラトキャスター(70〜80年代くらいによく使ってたと思われる)の細部に迫ろうと思います。
ハイラム・ブロック自身のバイオグラフィー的な部分は各自お調べいただくとして、ハイラム・ブロックの参加作品の中でメジャーなものや素晴らしいものを、ハイラム好きの端くれとして以下に5つピックアップしてみます。
①Little Wing - Sting
スティングによるジミヘンのカバーですが、バックが確かギルエバンスオーケストラ(のリズム隊?)、ハイラムの素晴らしいソロに続くブランフォード・マルサリスのソプラノサックスも素晴らしいです。
②Stranger - Billy Joel
オーバーダブなのかハーモナイザーなのか知りませんが、ピアノのイントロ後の有名なリフもリズムギターもハイラムによるもの(と思われます)。
③Murder by Numbers(The Police cover) - Gil Evans Orchestra
晩年のギルエバンスのオーケストラでのハイラム・ブロックのプレイにハズレがないと思います。ギルエバンスオーケストラ自体の演奏にはかなりムラがありますが(笑) 即興演奏に重きを置いていたバンドなのでライブ録音ものは他のプレイヤーとの掛け合いも楽しめます。他にも載せたい名演が色々あるのですが、YouTubeに上がってる曲の数が少ないので各自音源はお探しください(笑)
④マイレディー - 郷ひろみ
演奏は24丁目バンドです。24丁目バンド名義の曲はミディアム、スローなテンポの曲が多かったので、こういうアップテンポな曲はレアだと思います。バンド全体の演奏自体も脂が乗ってて素晴らしい。このアルバム収録の他の曲もどれもすごく良いです。
⑤Memory 青春の光 - モーニング娘。
ベースはウィル・リー、アコースティック含めてギターは全編ハイラムのようです。幼少期のハイラム刷り込み原体験
さて、本題のハイラムの使用ギターの話に入りたいと思いますが、ハイラムには大きく分けて、
①ボロボロの改造ストラト時代
②カンジギターおよびその他の時代(元山龍王氏製作の通称「FUKUOKA GUITAR」時代?)
③Cortシグネイチャー時代
上記3つの時代があったように思います。
ここでは謎の多い?、①のボロボロの改造ストラトについて書いていこうと思います。
実は、前述のRoad Worn ‘60s Stratocasterは、既に「ハイラム・ブロック仕様」に改造済みです。
「From All Sides」や「Way Kool」のジャケットに登場しているのがその例の①のストラトですが、ハイラムはこのギターを自分好みに改造した訳ではなく、店で購入した時に既にこの状態だったそうです。本当かどうか知りませんが。数年前の情報ですが、今はこのギターは韓国在住の人が持ってるとか…Cortからシグネイチャーを出したり、韓国のペダルメーカーMoollon製のエフェクターを使用したり…私はこれを「ハイラム晩年の謎韓国コネクション」と心の中で呼んでいます(笑)
今でこそHSH配列のギターは定番で、スタジオミュージシャンでも使用している人も多いかと思いますが、当時は結構画期的だったのでは、改造した人は先見の明があったのでは、と思います。たまたまかもですが(笑)
一般的なシングルコイルのストラトの場合のコントロール周りは5wayスイッチ、コントロールノブはボリューム・フロントトーン・センタートーンで、モダンなHSHの場合はコイルタップとかあったり色々あるのかもですが…
自身の教則ビデオ「Groove Guitar Solo Technique(リットーミュージック)」でハイラムは機材の説明をしていますがその中で改造ストラトのコントロール周りを解説してくれています(話は逸れますがこのVHSをDVDで再販してほしい。買う人はほとんどいないと思いますが…笑)。
彼のストラトも5Wayスイッチですが、コントロールノブはフロントとリアのハムバッカーのボリューム、センターのシングルコイルのボリューム、フロントとリアのハムバッカーのトーンと特殊な配線になっているようです。
彼の独特な単音カッティング等リズムギターのサウンドは、フロントのハムバッカーとセンターのシングルコイルのハーフトーンの塩梅が一つの重要な要素だと私は思っておりまして、シングルコイルのボリュームノブがあることによってフロントハムとのハーフトーンにシングルコイルならではの明るさを自由に足すことができるようになっています。
また、ハイラムの改造ストラトのトレードマークであるHSHの構造について、同じように改造している人も多くネット上には見かけますが、実際に本物と同じように改造できている人はあまりおらず、国内で彼の改造ストラトに最も肉薄しているのは私のストラトである、と勝手に思い込んでいます(笑) 果たして音にどれくらい反映されているかは知りませんが(笑)
まずはこちらの画像をご覧ください。
一般的なHSHの場合の各ピックアップの位置、というものがあるようなのですが(以下の画像の赤点線部分くらい?)、そうすると若干ハイラムのストラトとは位置がずれてしまいます。
よく見ると、ハイラムのストラトは通常のHSH構造のギターに比べるとフロントはネック寄り、リアはブリッジ寄りにハムバッカーが付いていると思います。
ハイラムの改造ギターの前のオーナーがどのような意図でこのように改造したかは知りませんが、この改造によりフロントはより甘めに、リアはよりパンチのある音にしたかったのかも知れません(笑)
ハイラム風のHSHに改造されている方も多いのですが、この位置に拘っている方は殆ど見たことがありません。
ちなみに私はフロントとリアにはセイモアダンカンのP.A.F.タイプのハムバッカーを乗せています。
https://espguitars.co.jp/seymourduncan/745/
高出力のものの方がノイズ等も減らせるのかも知れませんが、センターのシングルとのバランスや、ハイラムが改造ストラトを入手した時期から推測しビンテージ仕様に近いものを選びました。
私はブリッジはオリジナルに忠実というよりはモダンなグラフテック?製のものに変えたように記憶しています。弦が切れにくいとか何とかで、これはオリジナルではなくプレイアビリティを意識しモダンな仕様にしたような記憶…もしかしたら、元ネタがあるかもですが(笑)
また、背面はバックプレートを外し、「From All Sides」のジャケットのようにトレモロスプリングを4本に変えています。
ここまでの改造は、原宿の「松下工房」さんにしていただきました。
http://www.matsushita-kobo.com
その他、がたつきや接触不良を防ぎ電気信号の伝達性を向上させるジャックへ換装、フレット擦り合わせ等細部のメンテナンスはギター・ベース工房の「Yellow Gem」さんにしていただきました。素晴らしいギター・ベース職人さんです。
ここまで長くなりましたが、ハイラム・ブロック(使用ギター編)となります。
ハイラムの改造ギターに近づける上で大事なことは、
1.通常のHSHの位置にハムバッカーがないということ
2.通常のHSH回路ではないということ
3.正確な情報を入手し、改造する際は誤解の無いように正確に伝える
こんなところでしょうか。
内容について、何か間違っているところ等あればご指摘いただければと思います。また近いうちにエフェクター等の機材編もやろうと思います。
最後に、55 Barでのハイラム・ブロックによるジャズスタンダードの「All The Things You Are」からフレーズをコピーし例の改造ストラトで弾いてみた動画も観ていただけると嬉しいです。いいね&チャンネル登録もお願いします(笑)
(ちなみに冒頭でコードを弾いてるシンセ「D-05」ですが、ハイラムの教則ビデオで一瞬だけハイラムが使用しているRolandの名機「D-50」の現代版です。という分かる人にしか分からないようなしょうもない小ネタを仕込んでいます)
機材編へ続く