運動
私は青い空を眺めている。窓の、レースのカーテン越しに眺めているのは、ソファーから立ち上がるのが面倒くさいからだ。
今日は月曜日。また1週間が始まる。毎日同じ事の繰り返し。仕事をして帰宅、ご飯、お風呂、ストレッチをして23時半には寝る。朝は6時半に起き、7時半には家を出る。週末は起きたらもうお昼過ぎで、15時頃に1回目の食事、だらだらとスマホを見る。夜更かししてゲームをしたり動画を見たり…朝方4時に寝る。そんな時間まで何をしているのかと聞かれても、私もよく分からない。何もしていないのと一緒だ。
私は青い空を眺めている。朝ごはんを食べながらぼんやりと、夏の空は広く感じるなと思った。雲が壮大だからだろうか。小学生の夏休みを思い出さずにはいられない。特に良い思い出があるわけではないが、ラジオ体操やプールに行ったり、夏休みの宿題を友達とやったり、そんなごく普通な思い出。さて、そろそろ会社に行かなければ。
私は青い空を眺めている。通勤バスの窓から、ビルの間に所々出てくる青い空。田舎から都会に出てきたての頃は驚いた。建物が多すぎる。都会という圧に押し潰されそうだった。イヤホンをしている人達、スマホを見ている人達。窓から空を眺めているのはいつも私だけだ。田舎者だからだろうか…
私は星空を眺めている。バス停から家までの途中にあるスーパーに寄り、割引になった惣菜とサラダと缶チューハイを買う。自炊はあまりしないが、実家から米が送られてくるのでご飯だけは炊いている。買った袋をブラブラさせながら星空を見上げる。夜でも雲はあるんだなぁと、当たり前なことを思いながら帰宅する。
私は浴槽の天井を眺めている。換気扇が処理しきれない湯気たちが、より体を温めてくれる気がした。この湯気が固まって雲になったら、なんて子どもみたいな事を考えている。自分が子どもの頃は30歳なんて、何でもできる立派な大人だと思っていた。実際になってみたらそんな事はなかった。くだらない事を考え、くだらない事で笑い、ゲームだってするし漫画だって読む。体は衰えて中身はあまり変わっていない。
私は寝室の天井を眺めている。静寂の中、豆電球が線香花火のように儚くついている。真っ暗にしないのは怖いからではなく、豆電球で寝る方が良いとかテレビで観た気がしたから。起きた時にどんな姿勢になっているか…いつも寝る前に気になっているが、起きた時にはいつも確認するのを忘れて動いてしまう。明日こそは…そう思って目をつぶる。
私は青い空を眺めている。窓の、レースのカーテン越しに眺めているのは、ソファーから立ち上がるのが面倒くさいからだ。眠いのでシャキッとしたくてコーヒーを飲む。そういえば、起きた時にどんな姿勢か確認する事を今思い出した。起きた瞬間の記憶っていつも無いなぁと考えながら、レース越しの青い空を眺めた。今日もまた1日が始まる。毎日同じ事の繰り返しのようで、毎日違う事はわかっている。ほら、今日の青空は雲が多くて昨日の青空とは全く違うし、隣の家の子どもが朝から大声で泣いている。あまりに元気な泣き声が可愛くて、思わずクスッとしてしまう。
私はバスを待つ列で青い空を眺めている。イヤホンをしている人達、スマホを見ている人達。空を眺めているのはいつも私だけだ。私だけというのはなんだか特別な気分になる。雲が早く動いている、風が強いんだ。もうすぐ夏が終わる。私は明日も様々な空を見上げるだろう。なぜなら、二重アゴを撃退するためだから…
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