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涙のROCK断捨離 62.PIXIES「Doolittle」

ピクシーズ「ドリトル」/PIXIES「Doolittle」
1989年

このバンドを知ったのは、4ADというイギリスのインディーズ系レーベルからデビューしたことがきっかけだったと思います。
バウハウスコクトー・ツィンズなど、このレーベルのアーティストからは、退廃的な暗さや耽美的なリリシズムの香りがしていました。こうした世界観が好きな私は、このレーベルから出てるものは、それだけで自分の感性と合うような気がして、CDを買う時の判断基準にしていたわけです。

海外の音楽情報が少なかった時代、何を選択基準にするのかは、かなり心細い状況でした。ましてインディーズ系ですと、大手のレコード会社のアーティストのような宣伝がされていません。良く分からないアーティストのCDにお金を払うのは、「ある程度の失敗は授業料だ」というくらいの心構えが必要だったのです。
あの時代に、同じ音楽の趣味を持つ年上の友人がいたら、無駄な出費はかなり減らせたと思えますが、いまだに人づきあいが苦手な私には、それも仕方ないことだったでしょう・・・。
そんな中、大手のレコード会社とは違って、インディーズ系で波長の合う個性的なレーベルを見つけたのは、嬉しいことでした。
(同様に、ベルギーのクレプスキュールというレーベルも、全面的に信頼していて、当時、提携していたレコード・ショップ新星堂には随分とお世話になりました。)

脱線しすぎたので戻します。
ピクシーズは、1980年代半ばにアメリカで生まれたバンドで、これまでの4ADの印象とは異なるストレートなオルタナティブ・ロックを演奏していました。
当時のアメリカにはそういうムーブメントがありましたので、4ADとしては新しいタレントを発掘したということなのでしょうが、個人的には耽美性を求めて聴いたので、「これは失敗したな」と思ってしまいました。

こちらの勝手な誤解が原因ですので、ピクシーズは悪くありません。
ただ、残念なことに第一印象が悪かったために、その後の作品も含めて、ほとんど聴いていませんでした。
今回、相当久しぶりに聴いています。
なるほど、注目された理由は分かります。
オルタナティブを”トレンド”とは言いたく無いのですが、こういうタイプのバンドが多く生まれていた中で、ピクシーズは音楽的に聴きやすかったのだろうと思えます。
歌詞が分かれば、もっと共感できるのかもしれません。

Spotifyを見たら、なんと新譜が出ていました。
早速、聴いてみましたが、なんだか、昔とあまり変わらないような・・・。
音はキレイで演奏も上手く洗練されましたが、残念ながら新譜は私の心には響いてきませんでした。「ドリトル」の方がいいです。

ソニック・ユースダイナソーjRなどのようなエッジが立ちすぎるバンドよりも、多くの人には聴きやすく親しみやすいという言い方ができそうです。
オルタナティブのエネルギーを失うことなく、上手くアート感覚とポップ・センスでまとめることに成功した名盤です。


Spotifyでも聴けます。
https://open.spotify.com/album/6ymZBbRSmzAvoSGmwAFoxm?si=XusJEm9VTGGEi0vRaXNnnw


写真の使用許諾に感謝します。
Photo by Jolanda van der Meer on Unsplash