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涙のROCK断捨離 89.R.E.M._「AUTOMATIC FOR THE PEOPLE」

R.E.M.「オートマティック・フォー・ザ・ピープル」/R.E.M.「AUTOMATIC FOR THE PEOPLE」
1992年

こういうバンドが、正当に評価されているのは嬉しいことだと思います。
R.E.M.は、1983年に「マーマー」でデビューして、2011年の「コプラス・イントウ・ナウ」まで、28年の間、15枚の素晴らしいアルバムを届けてくれた、ロック界の宝です。
おそらく下積みを経験して、学生のファンを地道に獲得しながら、着実に自己形成していったのでしょう。曲がヒットして経済的な成功を手に入れても、自己を貫き続けた印象があります。
CDを通してしか知りませんので、本当のところはファンの方の情報に譲るとして、音楽からはどのアルバムを聴いても誠実で等身大な彼らが伝わってきます。

このアルバムは、前作「アウト・オブ・タイムス」の成功を経て、翌年にリリースされた8枚目のアルバムです。
ファンの方の中では、これをR.E.M.のベストに挙げる方もいるのではないでしょうか。派手さこそありませんが、胸に沁みる素晴らしい曲が揃った名盤です。

前作のセールスもライブ・ツアーも成功させた後だというのに、全体のイメージは暗めで、アリーナを熱狂させるようなロック・アンセムはありません。
しかし、これはロック・アルバムです。
アーティストの深い思考の上で生まれた各曲は、聴けば聴くほど深みが増すように感じられます。
久しぶりにCDを聴き直して、これは手放してはいけないような気持になってきました。

ZEPジョン・ポール・ジョーンズがストリングス・アレンジで参加しているのですが、決して変なアピールをせず、歌を立てた控えめな仕事が光っています。
ストリングスの入った曲は、どれも深い感動を覚えます。

1曲目の「DRIVE」は軽快なドライブのBGMではなく、「よお、ガキども。誰も行く先なんて教えてくれないぜ」と閉塞感を歌い、2曲目の「TRY NOT BREATHE」では「もう一度息をするには何かが必要だ」と絶命を思わせる歌詞を歌います。
3曲目はこのアルバムの中では異質なポップ・ロックで、「彼女を起こすなら電話をくれよ」という歌詞を何度も繰り返す、意味不明な曲です。簡単な仕事さえできない低所得クラスの人たちが声をあげるなら連絡してくれ、ということでしょうか。ちょっと分かりません。

4曲目は有名な「EVERYBODY HURTS」というスローなバラード。「誰だって傷つくことがある」と歌われる声を聴きながら、誰よりも傷ついているのは歌っているマイケル・スタイプ自身なのではないかと思ってしまいます。
最近、SNSの誹謗中傷が原因で命を絶ってしまった人のニュースを耳にして、この歌が心に沁みます。

彼らが政治的な発言を恐れないというのは、知られたことです。
8曲目の「IGNORELAND」は、Spotifyでは「EXPLICIT」の印が付いていて、
表示制限を解除していないと聴けない曲になっています。かつてのレーガン政権を批判しています。
9曲目も同じく「EXPLICIT」になっていますが、これはおそらく歌詞の中に登場するFワードのせいですね。

10曲目「MAN ON THE MOON」は、歌詞の中に「GAME OF LIFE」が出てくるのですが、その昔、私が某社で「人生ゲーム」のマーケティング担当だったというごく個人的な理由で気になる曲。
ポップな曲が少ないアルバムの中では比較的に曲調が明るいのでシングル・カットされて、そこそこヒットしましたが、そんなに推すことも無い地味な曲です。

ラスト11曲目「NIGHTSWIMMING」と12曲目「FIND THE RIVER」は、私にとってこのアルバムがかけがえのない1枚に感じられる重要曲です。
この曲を聴くと、傑作マンガ「月曜日の友達」(著者:阿部朋美)をイメージして、数十年前にタイムスリップしてしまいます。
私が死ぬ瞬間に鳴っていて欲しい曲のひとつです。
(死ぬときに鳴ってていて欲しい曲のプレイリストを作ってみました。下に貼っておきますので、よろしければ、、、って縁起でもないですね。
今はパート2を作っていて、なかなか死ねません。)

ここまで聴いてきて、やはりこのアルバムは手放してはいけないものだと思いました。

狂った政治家たちによって壊されてゆく日本で生活していて、今こそ日本に登場して欲しいと思ってしまうロック・バンドの残した名盤です。

Spotifyで聴けます。

オマケで、死ぬときBGMのプレイリストも・・・。

Spotifyに入ってない曲があるのが残念で完成しないのですが、病室だと怒られそうなロック系死ぬときBGMも編纂中です(笑)。
死にかけた時に再生して、どこで逝けるかな・・・。
(このアイデアは、しりあがり寿「瀕死にエッセイスト」から頂戴したものです。)


写真の使用許諾に感謝します。
Photo by Roberto Catarinicchia on Unsplash