T'S BAR 96夜 JOY DIVISION
Unknown Pleasures / JOY DIVISION
まず、アルバム・ジャケットがシリアスでカッコいいと思いました。
当時の日本の高校生にとっては、あまり彼らを知る情報がありません。
でもなんだか信じられる気がして「Unknown Pleasures」と「Closer」を両方一緒に買ったのでした。
1980年頃でした。
いわゆるポスト・パンクの流れを明確にした、ムーブメントを代表するバンドです。
映画「レディ・プレイヤー1」で、このアルバム・ジャケットがデザインされたTシャツを着た登場人物がいましたね。
歌詞や彼らの姿を見ることができれば、もっと理解が深まったのだと思いますが、初めて聴いた時は、意外と普通に音楽やってるのだな、と変にガッカリして上手く受け止められませんでした。
勝手にかなり前衛的な音楽を期待していたせいです。
日本ではリアルタイムで状況を掴めていませんでしたが、デビューしてすぐ、成功をつかみかけた刹那に、リーダーのイアン・カーティスの自殺によってバンドは終了し、伝説となります。
こっちはなんだかよく分からないまま、手元に残された2枚のアルバムを繰り返し聴くしか何もできません。
そしていつの間にか、ジョイ・ディビジョンの音楽から滲み出る陰鬱で神経症的な危うさは、中二病の私をすっかり侵食していました。
「New Dawn Fades」では胸が締め付けられ、とにかくこのままじゃダメだという強迫観念にかられます。
ジョイ・ディビジョンにおけるイアン・カーティスは、ドアーズにおけるジム・モリソンのようであり、ピンク・フロイドにおけるシド・バレットのように感じられてきました。
実験音楽にような方向ではなく、あくまでロック・バンドだったことは、この特殊な音楽が大衆性を持ちえた重要なポイントだったのではないでしょうか。
こうして精神を浸食された人が世界中に大勢いて、今、大人になっているのです。やばいね。