涙のROCK断捨離 63.The_Cranberries 「To The Faithful Departed」
ザ・クランベリーズ「トゥ・ザ・フェイスフル・ディパーテッド」/The Cranberries 「To The Faithful Departed」
1996年
シンプルなエレキギターのアルペジオから一転、意外なほど重い低音を効かせたコード・ストロークで幕を開ける1曲目の「Hollywood」。
デビュー・ヒットした「ドリームス」や「リンガー」をイメージしていると、いきなり驚かされます。
サビ部分のドロレス・オリオーダンのボーカルは、がなり立てているような荒々しさです。
魅力的な女性ボーカルを擁するバンドは往々にして、ソロ歌手とサポート・メンバーのようになってしまいがちですが、クランベリーズはバンドとしてのバランスが良く、とてもまとまっている感じがします。
このアルバムでは、そうしたバンドとしての幅を聴かせてもらえます。
激しいロックからキャッチ―なポップ、アンビエントな雰囲気さえ漂わせるスロー・ナンバーまで、1枚のアルバムの中に様々な曲が違和感なく並び、
曲の良さと演奏の確かさ、そして曲に合わせて変化するボーカルが楽しめます。
中には、ちょっとやり過ぎかな、と思えた部分もありましたが、それも含めてバンドの個性でしょう。
この時代は、マライア・キャリーやセリーヌ・ディオン、ホイットニー・ヒューストンなどの、ディーヴァと呼ばれるような強力な歌姫たちが大活躍していました。
正直に言えば、この時代の女性ボーカルでは、ドロレスよりもアラニス・モリセットやシェリル・クロウの方が気になっていました。
ドロレスのボーカルが好きかどうかで、バンドへの評価が分かれるのは仕方がありません。
しかし、同時代の個性的な女性ボーカリストがソロ・アーティストとして光を放っていたのに対して、クランベリーズはあくまでバンドとしての魅力を失わずに活動できていたと思えます。
今、改めてクランベリーズを聴いて、その音楽の豊かさを再発見したように思います。
2018年にドロレスが亡くなったことでクランベリーズはその活動に幕を下ろします。バンドにとっては、余人をもって代えがたいボーカリストでありました。
R.I.P.
Spotifyで聴けます。
https://open.spotify.com/album/5G3I9bLpCZxK4XeLyJ69iu?si=cVkXhN4_Qf62jz7DRZddoQ
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