近くて遠いデンマークと日本、ヤンテの掟
この記事でも書いたように、私はデンマークと日本の間には、何か共通するものがあると感じていた。デザインの融和性だけでない、もっと、何か深いところで、通ずるものがあるのかも、と直感的に思っていた。
まだその答えを見つける旅の途中ではあるが、一つ面白い側面があったので、共有したい。
デンマークには「ヤンテの掟(おきて)」と呼ばれる教えがあるらしい。作家のアクセル・サンデムーセが1933年に書いた小説「A Fugitive Crosses His Tracks」の中に出てくる10カ条のルールだ。とても有名な教えなので、すでにご存知の方もいらっしゃるかもしれないが、以下がその全文だ。
褒めて伸びるとは逆の、かなり謙虚で控えめな教えで、自分と他者の関係性がフェアであることが大切だと強調しているように感じる。
noteで記事を執筆されているnaotanさんも、「ヤンテの掟」には、どこか日本的視点があることを、こちらの記事で書かれている。
確かに、個人の価値観を大切にする近年の風向きとは逆の方向を行く考えかもしれないが、今回はごく個人的なエピソードとして、私が実際に現地のデンマーク人から「ヤンテの掟」のセンスを感じた場面を挙げてみたい。
特に掟の9番、「あなたが誰かに助けてもらえると思ってはならない」は、言い換えると「自らが手を差し伸べる」だと思っていて、実際に私が困っている時に手を差し伸べてくれたデンマークの人はたくさんいた。
慣れない生活で躓いている私に、気にかけるメッセージをくれたり、役立つ生活情報サイトを教えてくれた友人。
急な雨に遭い、両手いっぱいの荷物でスーパーの入口で雨宿りをしていたら、荷物半分持ちましょうか?と声をかけてくれた通りすがりの人。
図書館の印刷機がエラーを起こした時、自分の仕事を中断して原因究明に勤しんでくれたスタッフのおばちゃん。
その度に私が申し訳なさそうな顔でお礼を言うと、「私が力になれるかわからないけど、何かあればいつでも言ってね!」と。
これはお世辞でも誇張でもなく、私の実体験だが、外国人の私が困って何かを聞いた時、嫌な顔一つせず、いつも助けてくれたのがデンマークの人たちだ。
同時に、日本には利他(自分のことよりも他人の幸福を願うこと)と言う仏教に起因する言葉があるが、私はデンマーク人の持つスピリットにも似たような要素が含まれていると感じた。
日本の場合、この利他のアイデアは、良い意味での集団意識的な側面(自分以外を意識すること)と、災害が多い国(非常時は皆で助け合わなければならない)であることが、大きく影響しているのかなぁ、というのが私の考えだが、この2カ国はアプローチは違えど、同じ「他者を思いやる心」という結果に辿り着いていると感じた。
少し聞こえの良い言葉が並んだかもしれないが、デンマークのことわざ(?)を一つ、私の個人的エピソード付きでご紹介したと受け取っていただければと思う。
日本版のヤンテの掟はなんだろう・・「人の振り見て我が振り直せ?」
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?