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行政区分に見るロシアの多様性

ロシアは日本のような単一国家ではなく、複数の国と地域で構成される連邦制の国である。
ロシア連邦に加盟する国と地域は全部で83あり、それぞれを連邦構成主体(Субъект Федерации/スヴィイェクト フィヂラーチィ/Субъекты Российской Федерации/スヴィイェクト ラシースカイ フィヂラーチィ)と呼ぶ。
 
この構成主体は大きく分けて6種類ある。
・共和国:21
・地方:9
・州:46
・自治州:1
・自治管区:4
・連邦市:2
計83
 
★共和国(республика/レスプーブリカ/ republic):21
昔からその土地に先住している住民によって築かれた国で、共和国名は基本的に民族の名に由来する。
比較的大きな民族集団で、同じ言語・文化・宗教などを持つ。
独自の憲法、議会、公用語を有し、各共和国には首長(大統領)がいる。
ロシア連邦の憲法では国家として位置づけられているものの、完全な独立した国家としての主権は持たない(名目上の独立国家)。例えば、公文書はキリル文字を使用する必要がある(※)ことや、自国の憲法と連邦の憲法で矛盾が生じる場合は調整が必要などの制約がある。
 
※本来はラテン文字を使う場合でも、正書法はキリル文字に統一しなければならない。
 
★地方(край/クライ/territory):9
語源は動詞кроить(クライーチ=「切る」の意)に由来し、ロシア国家の周辺に位置する国境付近の場所で、切り取るようにして獲得した広大な領土をкрай(クライ=「縁、周辺」)と称した。
ロシア連邦の大統領が指名する知事と州民が選出する議会が設置されている。基本的な機能は「州」と同じ。地方(край=クライ)の呼び名はロシア帝国時代より存在する行政区画。
 
★州(область/オーブラスチ/region or area):46
ロシア連邦の大統領が指名する知事と州民が選出する議会が設置されている。基本的な機能は「地方」と同じ。オーブラスチ(область)は、スラヴ系の国々では一般的な地方行政区分の名称である。
 
★自治州(автономная область/アフタノームナヤ オーブラスチ/autonomous region or autonomous entity):1
ユダヤ自治州のみ。ロシア各地に分散して居住するユダヤ人のために創設された。
 
★自治管区(автономный округ/アフタノームヌイ オークルク/autonomous district or autonomous area):4
少数民族による自治が行われる区域(共和国とするには民族人口が小さすぎるため)。元々は「地方」や「州」の下にあった地域区分。
 
★連邦市(город федерального значения/ゴーラト フィヂラーリナヤ ズナチェーニヤ/city of federal importance):2
モスクワとサンクトペテルブルクのみ。
ロシア連邦政府の直轄下にあり、他の都市とは異なる独自の地方自治システム。
自治体の構成は、連邦市→行政区→地区の順。
 
⚠️2022年以降、ロシアは連邦構成主体を89としている。ただし今回は、国際的な承認が得られていない以下6つの構成主体は除いた;
2014年のクリミア併合による、連邦市のセヴァストポリ(Севастополь)、共和国のクリミア共和国(Республика Крым)
2022年の併合宣言によるウクライナ4州(ドネツク州、ルガンスク州、ザポリージャ州、ヘルソン州)
 
以上のように、ロシアは多民族・多文化・多言語の国家であるという背景から、次のような興味深い言葉の側面がある。
例えば、日本語で「ロシアの、ロシア人」を指す言葉には2種類ある(今回は格変化によるバリエーションや語源の歴史的な詳細は省く)。
 
русский(ルースキィ):ロシアの、ロシア人
российский(ラシースキィ):ロシアの、ロシア人
どちらも日本語に訳してしまうと同じ(英語に訳しても同じ)だが、厳密には意味が異なる。
 
русский(ルースキィ)→ロシア民族的な意味合い(ミクロ的視点)
語源はロシアの古称Русь(ルーシ)。
使用例:ロシア語、ロシア人、ロシア的精神など
 
российский(ラシースキィ)→ロシア連邦(国家全体)に帰属するもの(マクロ的視点)
語源はРоссия(ラシーヤ)。Русь(ルーシ)のギリシャ語名。
使用例:ロシア国旗、ロシア政府、ロシア製品など

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