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K-1の標準レンズ、DA40でいいかもと思えてきた

「カメラにつけっぱなしにしておくレンズを1本だけ選ぶならどれか」という永遠の問。

ここ最近、自分の中で「40mmパンケーキずいぶん良くない?」と再評価の機運が高まりつつある。

smc PENTAX-DA 40mm F2.8 Limited
ここ5年ぐらいでズームより単焦点を集めるようになったきっかけのレンズ。

PENTAXにはAPS-C用(DAシリーズ)の看板を掲げながらフルサイズでもケラれない、準フルサイズ用と見なされているAPS-C用レンズが地味に多い。DA40 Limitedはそれらの中でもとりわけコンパクトで、常用レンズにはまさにうってつけ。

PENTAXから発売されてきたデジタル一眼用レンズでも光学系はかなり古い方で、価格もLimitedシリーズ最安。Limitedシリーズにおける撒き餌レンズとなっている。ハイグレードな単焦点という訳ではないけれど、いざ振り返ってみるとK-1との組み合わせで撮った写真は大変良く撮れている。最近一周回って「いいな〜」と思った点を書いていく。


K-1で使えるライト級のレンズたち

K-1のキットレンズでもある標準ズーム、DFA28-105は質量が463g、マウントから前玉までの長さが86.5mm(フード込み約122mm)。フルサイズ用の標準ズームとしてはコンパクトで写りも大変良い。しかし、K-1がそこそこ分厚いので3Lクラスのカメラバッグだと少々窮屈になる。

旅行やツーリングを1本で済ませるならDFA28-105だけど
普段の街歩きには少々いかつい。
一番よく使う3Lのカメラバッグ。
写真ではK-3III + DA15 + DA55-300PLMが収まっている。
K-1II + DA40の組み合わせなら左のスペースに収めることができる。

一方DA40だとここにモバイルバッテリーやら財布やらを加えることができるので、外出がてらのスナップが非常に捗ることに気がついた。

PENTAXにはもともとコンパクトな単焦点レンズが多い。K-1のイメージサークルに対応(非公認含む)していて質量200g未満かつ長さ50mm未満のAF対応レンズを以下に挙げてみる。個人的に気軽なお散歩レンズのMAXサイズがFA31(341g・69mm)なのでそれを基準にしたいところだけど、長さ70mm未満だとF/FA時代の無駄に多い多様性あふれる標準ズーム達が参入してきてややこしいので。あっちはあっちで記事が一本書けるぐらいにはややこしい。

フルサイズで使えるコンパクトな単焦点(質量・長さ)

  • smc PENTAX-DA 40mm XS (52g・9.2mm)

  • HD PENTAX-DA 40mm F2.8 Limited (89g・15mm)

  • smc PENTAX-DA 50mm F1.8 (122g・38.5mm)

  • smc PENTAX-DA 35mm F2.4 (124g・45mm)

  • HD PENTAX-DA 70mm F2.4 (130g・26mm)

  • HD PENTAX-FA 43mm F1.9 (153g・27mm)

  • smc PENTAX-FA 28mm F2.8 AL (185g・40.5mm)

※ピント位置によってケラれる製品、コーティング違いの旧製品や派生版は省略。

smc DA40/2.8 Ltd (90g・15mm)
smc DA50/1.8 (122g・38.5mm)
HD DA70/2.4 Ltd (130g・26mm)
smc FA43/1.9 Ltd (155g・27mm)
smc FA28/2.8 AL (185g・40.5mm)

手持ちのレンズ(一部借用中)をいろいろつけてみた。どれも取り回しバッチリ。しかしながら前玉の位置がペンタ部先端とほぼツライチになるDA40は、やはりバッグへの収まりの良さが別格。お前がGR IIIxだ。


K-1ミニマム構成とは? DA40XS / DA40Ltd

DAシリーズにはDA 40mm F2.8 XSというさらなる小型化を遂げたパンケーキレンズ、もとい"ビスケットレンズ"がラインナップされていた。Limited版と光学系はほとんど共通なので、こちらもK-1で問題なく使える。

しかし常用するかどうかで言えば、使い勝手で少し気になる部分もある。専用のゴムキャップが取れやすく、フードも無いのでカメラを適当な鞄に放り込む系の雑な扱いがしづらいというのが主なマイナス要素。

DA40XSはありえない薄さなのにフルサイズでまともに写るAFレンズというちょっと笑えてくる面白さがあるので、XS版しか持っていなかったらもっと使用頻度は高くなっていたと思う。

smc版のDA40Ltd。ボディがKPだけどイメージなのでヨシ。
撮影できる状態にもかかわらず、前玉の防御力が極めて高い。

Limited版の方はドーム型(フジツボ型)フードのおかげですごくラフに扱える。バッグにスポッと入れてズボッと取り出すのが大変楽で、鞄がカメラバッグじゃなくても良いというのは日常使いで何かと都合が良い。


何気に速いAF & クイックシフトフォーカス対応

他社では見なくなって久しいボディAF(ボディ側のモーターからカプラー経由で駆動力を伝えるAF方式)が当然のように現役のPENTAX。DCモーター駆動レンズと原理的には一緒だけど、間に噛ませるギアのぶん動作音は大きい。細やかな動作もあまり得意ではないボディAFのレンズだけど、新しいモーターを使用している最近の機種との組み合わせだとAF動作そのものは案外速かったりする。

手持ちの中ではDA40もそのひとつで、ギュイッ! ガコッ! ガッガッ!!というけたたましいAF音さえ気にしなければ結構なスピード感で合焦してくれる。AFがちょっとズレたらQFS(クイックシフトフォーカスシステム)で追い込みも可能。AF対応の標準パンケーキレンズだと他にもDA 40mm F2.8 XSやFA 43mm F1.9 Limitedがあるけど、QFSが使えるのはDA 40mm F2.8 Limitedのみ。

F2.8なら暗所性能も十分

K-1はオートエリアAF任せで全部OKとはなかなかいかないので、そこそこ速いAFとスムーズな追い込み操作が両立できるDA40は助かる場面が多い。


F2.8ちょうどいいかも

よくDA40と比較されるレンズにFA 43mm F1.9 Limitedがある。K-1用の標準レンズとしては王道で、FA43は収差を味として活かす小型高品質なLimitedレンズの代表格と言える。こちらもパンケーキレンズらしい抜群の機動力で、しかもF値はDA40より1段以上明るい。目視せずともラフに着脱できる被せ式フードもナイス。

FA43はハマると印象的な写真が撮れることも多く、機材固有の独特な味付けまでついてくる。オールドレンズ的な柔らかさ×現代でも通用する解像力と抜けの良さが共存しているのはFA Limited共通の特徴。

K-1 Mark II (FF) + smc PENTAX-FA 43mm F1.9 Limited

一方DA40はデジタル用らしい優等生寄りの画質で、Limitedの中では割と癖が少ない。単焦点としてはF値も明るい方ではない。期待を裏切ることも予想を大きく上回ることも少ない、一番普通っぽいLimitedがDA40。

K-1 Mark II (FF) + smc PENTAX-DA 40mm F2.8 Limited

そして最近「なんか普通に撮れるレンズもいいなあ……」となってきた。

というか、冷静に考えるとフルサイズの40mm F2.8って近距離であれば十分過ぎるほどよくボケる。テーブルフォトも日常的なポートレートも割とこれでいけてしまう。構図の整理に悩んだらAPS-Cクロップで60mmの準中望遠としても使えるし、対応できる場面が意外と多いことに気づいた。

最短撮影距離は40cm。
30cmを超えるとテーブルフォトが若干窮屈ではあるけど
十分許容範囲の使い勝手。
KPで撮影。APS-Cだと61mm相当。
パース感がそんなに要らない時は中望遠気味に使えて便利。

とは言ってもお散歩レンズなんでしょ? = 部分的にそう

超薄型設計の割に画質の妥協も少ないDA40。ただし正式にフルサイズに対応しているレンズではないので、本気で使おうとすると粗は出てくる。

クロップなし、F11

例えば風景撮影では、絞り込んでも四隅の像がちょっと乱れる。しかし逆に言えば、ストンと画質が落ちる四隅以外はかなりまっとうに使える。

使えそうな範囲をクロップしてみるとおよそ2900万画程度。APS-Cクロップだと面積はフルサイズ比で42%ぐらいになる一方で、クロップなしでも絞り込めば約80%の面積は問題なく写る。もうDFAレンズ扱いでいい気がしてきた(よくない)。

クロップなし、F5.0
天体撮影だと粗が分かりやすく……
いや、これも強めのソフトフィルターを併用すれば全然いける気がしてきた。
クロップなし、F2.8
開放だと流石にぐるぐる。
イメージサークル不足というより癖の範疇に収まっている気も。

40mm単焦点1本で機動力高めのストイックなスタイル、あるいはコンデジ感覚で持ち出すもよし。旅行やツーリングのお守り感覚の予備レンズとしてバッグの隅に忍ばせておくもよし。標準ズームと組み合わせるならあまり出番はないけど、一方で取り回しづらい超広角や望遠系とセットならスナップ要員として役割分担がしやすい。

クロップなし、F11

画面全域カッチリ綺麗に写るならそれに越したことはない。ただ、そもそも写真を鑑賞するとき四隅から観察する人って少ない気もしている。ボディキャップ並のサイズでここまで写るならお釣りが来ると言ってもいい。


まとめ

自転車乗りなのでもともとレンズ選びは機動力ありきだった。ただしそれは「1,000m超の峠越えや100km以上のライドで許容できるストレスかどうか」みたいな基準だった。大三元ズームだと多少覚悟が要るけど、500g前後の標準ズームなら全然OKという感覚。登山をする人の選び方に近い気がする。

まとまった距離のサイクリングだとボディ+レンズで1.5kg以内が丁度いい範囲。
ミラーレスだと重心がレンズ寄りになるので、もう少し軽めに収めたくなるかもしれない。

最近はもう少し軽量化に心が傾いてきた。結婚して日常的に家族単位で行動するようになったのが主な理由。自転車だと蒸れるので敬遠していたカメラバッグも、徒歩移動の機会が増えると便利なこと。

一度の撮影に割く時間はせいぜい数秒なのでズームより単焦点の方が悩まずにサクッと撮れるし、日用品を買ったり誰かの荷物を預かったりすることも多いのでカメラ機材に割ける積載スペースは限られてくる。

「かといってミラーレスを生やすほどではないな。あ、人を撮るならGR IIIxもアリか……。」みたいなことを考えていたタイミングで「あれ?DA40いいな?」とじわじわ自分の中で再評価の波がきたのでこの記事を書いてみた。

おしまい。

HD PENTAX-DA 40mm F2.8 Limited

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