孤高の名機。PENTAX KP
K200D、K-5IIときて三代目メイン機として購入したのがPENTAX KP。メインの座は退いているけど、このカメラもものすごく働いてくれた機材なので色々紹介。
2017年、突然発表された「中級一眼レフ」
APS-CハイエンドであるK-3II後継の開発発表もまだされていなかった頃、「PENTAXがK-01とK1000の中間のようなヴィンテージミラーレスカメラを作っている」という噂が流れていた。
この噂の正体がPENTAX KP。ヴィンテージ風のデザインではあるもののミラーレス機ではない。当時はまだPENTAXもミラーレスに移行するかもしれないと考える人も一定数いて「K-70系でもK-3II系でもないカメラを開発しているとなるとミラーレスではないか」と噂されたのは自然な流れに思える。
実際に登場したKPは、K-1と後に出るK-1 Mark IIの特徴をAPS-C機に落とし込んだようなある種実験的な「ミドルクラス一眼レフ」だった。製品名はナンバリングではなくアルファベットが割り当てられ、他シリーズの流れを汲まない独立した機種であることを示している。
それよりAPS-C上位機の後継機を早くしてくれとの声もあったが、K-3 Mark IIIが正式に開発発表されたのはKP発売から2年後のことだった。おそらくK-3III自体の企画はもっと前からあり、ゼロから開発する要素があまりに多かったのでK-1を小型化したAPS-C機を繋ぎとして出したのがKPだったのではないだろうか。
購入したきっかけ
実はK-5IIを使っていた時期、カメラを初めて買おうとしていた友人2人にKPを買わせていた。
いや、正確には「カメラを買うなら御三家(Canon、SONY、Nikon)が間違いないよ、PENTAXから選ぶならKPもいいけど」みたいなことを言った記憶がある。だってほら、自分は好きだから使ってるけど。後からレンズがないとかAFがどうだとかで恨まれたくなかったので。結果的にKPを買った二人は今も楽しそうに写真を撮っている。ヨシヨシ。
問題は、友人のKPを触っている内に自分が欲しくなってしまったということ。液晶動くのいいなあとか、強化された高感度性能や画素数を体感してみたいなあとか、何よりデザインがゴツくてカッコイイ。
やってしまった。
スペック的な話
ひとつ前のメイン機だったK-5IIはラインナップとしてはKPより上位機種にあたるが、流石に5年の隔たりがあるのでセンサーから画像エンジンまでKPの方が色々更新されている。一番体感しやすいのは画素数の差で、2400万画素もあればAPS-C機でもクロップ上等な使い方ができる。小型化のためにバッテリー容量はグレードダウンしているが、全体的な撮影の仕上がりがやはり一枚上手。
最高ISO感度819200
発表時はK-1超えの超高感度対応が話題になった。実際K-1 Mark IIともそれほど遜色のない、この世代のAPS-C機としては抜群の高感度耐性を実現している。なおK-3以降のPENTAX機は拡張感度を廃止しているので、どこまでを常用感度と見なすかはユーザーに委ねられている。819200はちょっと盛っているというか念のためオプションとして用意しているという感じで、個人的な感覚だと12800〜25600あたりが許容上限になる。ISOオートの上限を設定するなら3200〜6400あたり。しかしオートで6400を常用できるAPS-C機というのは一昔前では考えられない性能。
リアル・レゾリューション・システム
K-3IIから搭載されていた、所謂ピクセルシフト撮影機能。他社と違い、画素数増加ではなくベイヤー配列の補完で色の再現性と解像力を高めている。データサイズが4倍になり、動体はもちろん水面や植物が軽く揺れるだけでも色ズレによるモアレが発生してしまう両刃の剣(動体補正機能も完璧とは言えない)。副作用(?)としてリアレゾの撮影データは高感度ノイズが1段分程度低減されるらしく、シチュエーションによってはKPの超高感度域を活かせることもあるかもしれない。たまにシチュエーションがドハマリすると風景写真無双ができる。
チルト液晶
KPは、実はKマウント一眼レフでチルト式液晶を採用している唯一の機種。コンデジも含めるとMX-1もチルト式だった。ところで1インチセンサー版のMX-2とか出ないですかね、ズームレンズでセンサーサイズも違えばGRと棲み分けも出来るし。話が逸れました。KPの液晶はバリアングルと違いファインダーと軸を揃えることができ、フレキシブルチルトより厚みも控えめ。ちょっとベゼルが厚ぼったいのは御愛嬌。使い勝手はなかなか良い。
交換式グリップ & バッテリーグリップ
購入当初、交換式グリップについては「なんだこれ」と思っていた。今ではヘリテージデザインと実用性を両立できる良いアイディアだと思う。Limitedなど軽量な単焦点を使う時はS〜Mグリップ、ズームや望遠レンズを使うときはLグリップといった具合にその日の気分で使い分けることができる。バッテリーグリップD-BG7もKPとよく調和したシルエットの良デザイン。Lサイズグリップは単体だとちょっと末広がりすぎる印象もあるけど、バッテリーグリップを装着することでラインが綺麗に繋がって完成形になる。
デザインと操作性
誰が呼んだかミニK-1。実際K-1のサブ機として操作性もなるべく統一させたそう。中判レフ機に寄せたというK-1のシルエットをひと回り削ってAPS-C機に落とし込んだような外観で、ボディ前面に垂直に取り付けられた前ダイヤルがいいアクセントになっている。上位機で採用される肩液晶やISOボタンなどは削られているものの、カスタム枠を加えて改良されたスマートファンクションはよく出来ている。液晶の明るさを手軽に調節できる「アウトドアモニター」を割り当てるとチルト液晶の使い勝手が一段上がる。このカスタム枠はK-1 Mark IIにも欲しかった。
惜しまれながらの生産完了
フルサイズにも負けない超高感度性能を引っさげて登場したKPだが2021年、K-3 Mark IIIの発売を目前に生産完了となった。てっきりK-3 Mark III、KP、K-70でAPS-Cの松竹梅が3機種並ぶものと思っていたのだが、そうはならなかった。
KPがAPS-Cフラッグシップ登場までの「繋ぎ」の機種だったので役割を終えたのかも知れないし、単に外注していた部品の供給が終了したからなのかもしれない。あと1〜2年販売されていたらカスタムイメージ「里び」「Gold」「夏天〜春紅」にも対応していたかもしれないと思うと、ちょっと惜しいタイミングだった。結局K-3 Mark IIIを導入した理由のひとつも新しいカスタムイメージへの対応なので、生産完了したKPまで無理にサポートしなかったのは正しい判断だと思う。(プレミア機能課金で何とかなりませんかね!)
KPの後継は出ないだろうなと思いつつ、またこういうコンセプトの機種は出てほしかったりする。もっと正直に言えばチルト液晶つきのK-3 Mark IIIが出たら買う。バッテリー持ちに関しては小型バッテリー採用のKPだと少し心許なかったので。
2025年に買うカメラとして
独特なデザインやチルト液晶など本機ならではの魅力があるので、中古でPENTAX機を探している人にはおすすめ度が高い機種。そのせいかマップカメラ良品で9.2万円(2025年1月調べ)。APS-C機としてはK-3 Mark IIIに次いで高い中古相場になっていて、いまのところ値下がりする気配はない。
敢えて欠点を挙げるとするなら、バッテリー持ちがあまり良くない。グリップを薄くするためにエントリー機向けのバッテリーが採用されていて、スペック上の撮影可能枚数は420コマ。丸一日の撮影だと少々厳しいものがある。万一後継が出るならUSB-C充電にはぜひ対応してほしい。予備バッテリーか、用途によってはバッテリーグリップを併せて購入するのがおすすめ。
メーカー修理対応はまだ続いている(2025年1月現在)。しかし修理内容によっては対応できない場合もあるらしい。筆者が2023年にメンテナンスに出したときは特に注釈は無かったように思うが、生産完了から既に4年経つのでぼちぼち部品在庫が尽きている模様。
もし修理に出す場合、ペンタックスリコーファミリークラブの有料会員登録をしておくとお得かも。2022年からサービス内容は若干減ったが会費が半額(3,300円/年)になり、公式ECサイトの割引や修理割引20%オフは健在。機材の無償貸し出しサービスもある。そしてお試ししたK-1 Mark IIやK-3 Mark IIIを購入するまでがセット。
最終的にK-1 Mark IIとK-3 Mark IIIを購入したので、現在KPの出番はかなり少なくなった。しかしKPとDA Limitedの組み合わせからしか得られない栄養をたまに摂取したくなるので、現在も防湿庫に温存している。2023年にシャッター幕を交換したので、その元をとりたい気持ちもあったり。KP IIが登場しない限り、KPを手放すことはないかもしれない。