『お母さん、どうしちゃったの?』
なっちゃんは4歳で、すごくお母さんのことが大好き。
でも…お母さん、最近お酒ばっかり飲んで、なっちゃんと遊んでくれない。
『どうしちゃったんだろう』
前は、楽しくごはん食べたり、公園で遊んだり、お洋服買いに行ったりしていたのに、全然そんなこともしなくなっちゃった。
幼稚園も行ってたんだよ。
でも…行かなくなっちゃった。お友達に会いたいなぁ。
おなか、空いたなぁ。おうち、汚いなぁ。
「ねえねえお母さん、この絵本読んで」
「もう、自分で読めるだろ」
「ねえねえお母さん、このテレビに出てる人面白いことしてる~」
「あぁ…アホか」
「ねえねえお母さん、お腹すいた~」
「このポテチでも食っとけ」
「ねえねえ、おか…」
「うるっせーんだよー」
なっちゃんを払いのけようとしたお母さんの手が、なっちゃんの顔に当たった。
「いたいようぅぅ」
泣きじゃくるなっちゃん。
お母さんは、なっちゃんに背を向けたまま、お酒を飲んでいる。
『どうしたのかな…
どうして、怖いお母さんになっちゃったんだろう。
お酒ばっかり飲んでいるから?
そう言えば、テレビで ” お酒は悪い飲み物だ ” って言ってた。
大変!お母さんが死んじゃう!!』
「お母さん!悪い飲み物飲んじゃ、ダメ!」
なっちゃんは、お母さんの持っているグラスを奪い取ろうとした。
「何すんだよー!」
グラスに入っていたお酒は見る見るこぼれて、なっちゃんの服にかかった。
「あーあ、どうすんだよ。また洗濯すんのかよ。めんどくせ~。死にて~」
なっちゃんは、溢れそうになる涙をこらえ、キッチンから自分のコップを取ってきた。
コップをテーブルの上に置き、お酒を注ぎ始めた。
「お母さんが死にたいんだったら、なっちゃんも死ぬ!」
と言って、そのお酒をゴクゴク飲んでしまった。
「何やってんだ!なっちゃん!!」
お母さんは慌てて、なっちゃんの顔をペチペチ叩いた。
なっちゃんはぐったりして反応がない。
急いで119番通報をして救急車が来た…。
処置が早かったため幸い、なっちゃんは一命を取りとめた。
お母さんはガタガタ震えながら、その場で泣き崩れた。今回のことを反省し、なっちゃんの思いと覚悟を知った。
そして、児童相談所の支援や更生のためのカウンセリングを受け、なっちゃんとまた、一緒に暮らせるよう日々努力している。
週一回の面会…
「お母さん!! あそぼー!」
「はーい!」
お母さんの両手いっぱい広げた胸に飛び込むなっちゃんは、安心感に包まれた笑顔だった。