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効果の高い研修を設計するための確認事項−『パフォーマンス・コンサルティング』を読んで
「〇〇の研修をしたいんです」
というお声をいただくことが多い。
「〇〇」に入るのは、「コミュニケーション」や「ビジネス基礎力」などのスキルであることから、「新入社員」や「管理職」などの研修対象まで様々である。
私が働いている会社では、研修としてサービスを利用いただくことも多いため、そういった相談を受けることもある。
研修担当の方の中には、同様に経営陣や事業部門から相談をもちかけられることもおそらくあるのではないかと思う。
その時、相手に何を確認すれば、その研修が妥当であり、実施が効果的であると判断できるのか?
その問いにひとつの答えを出してくれたのが、今回紹介する『パフォーマンス・コンサルティング 人材開発部門は研修提供から成果創造にシフトする』だった。
2007年初版と古本ではあるが、研修を提案することが多い立場として、大変勉強になったので、重要なポイント2点をまとめたい。
Point.1 4つのニーズ
研修を依頼される時、多くは「こういった研修をやりたい」という要望であることが多かったりする。
例えば、「管理職向けにコミュニケーションを学ばせたい」とか「新卒向けにビジネス基礎スキルをつけてもらいたい」とかである。
もちろん社内で検討を進めていただいた上でお話しいただいているため、否定したいとかそういう考えは全くない。
しかし、お金を使っていただいている以上、私たちとしても満足度の高いサービスの利用方法(あるいは研修方法)を案内したいと思っている。
そのため「研修目的」と「その方法」が一致しているかは重要視している項目だ。
しかし、「なぜ管理職にコミュニケーション能力をつけてほしいのか?」と担当者に確認しても「その能力を身につけて欲しいから」という回答で、それ以上の回答が得られないこともしばしばあった。
私の質問が悪いのは明らかなのだが、ではどういう質問をすれば、的確な答えが返ってくるのだろうか。
その答えが、本書に記載されていた。
それは、研修のニーズには上から
①事業ニーズ
②パフォーマンスニーズ
③トレーニングニーズ・職場環境ニーズ
に分かれているそうだ。
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例えば「コミュニケーションの研修をしたい」というのはトレーニングニーズにあたり、そのトレーニングを行うことで対象層がどう変化してほしいのかがパフォーマンスニーズに当たる。
より上位のニーズを知ることで、適切な研修か確認することができ、研修の効果を向上させられる可能性がある。
より上位のニーズを知るためには、
トレーニングニーズ→パフォーマンスニーズ
「それによって研修対象者にどのような行動を取って欲しいんでしょうか?」
パフォーマンスニーズ→事業ニーズ
「その行動をとることによって、事業におけるどの数値を向上させることを目的としているんでしょうか?」
などと質問できると良かったのだと学べた。
Point.2 ニーズを細分化する3つの項目
研修において、ニーズが大きく4つあることは理解した。
しかし、どういう順番でどのように聞いていけばいいのか?という疑問が浮上してくる。
これについては、「ありたい姿」「現状」「ギャップの原因」を聞く必要があるということだ。
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例えば、「上司と部下のコミュニケーションを円滑にしたい」というパフォーマンスニーズがあったとする。
この場合「現状はどんなコミュニケーションなのか」と「どういうコミュニケーションを取ることができたら良いのか」、そして「それらのギャップが起こっている原因は何があるのかを伺う必要があるとのことだ。
またニーズごとの順番としては、先ほど記載した順でより上位のニーズから、それぞれ「ありたい姿-現状-原因」を明らかにしてから別のニーズに移行する。
例えば、相手が「管理職が部下にきちんと指導を行えていないことで不満が起きているから、管理職にコミュニケーション研修を受講してもらいたい」と要望があるとする。
この場合、「管理職が部下にきちんと指導を行う」ことがパフォーマンスニーズで上位のニーズに当たるため、これに関して「ありたい姿−現状-原因」を深く聞いていくとのことだ。
最後に
研修において、研修当日や研修前後の告知など、運用が重要であることは言うまでもない。
しかし運用も準備もコストがかかるからこそ、より上位の効果の見込める研修を設計していきたいものではないだろうか。
抜けもれなく研修の前提を確認するため、本書の2つのポイントをひとつのフレームワークとして活用するのも一手ではないだろうか。
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