春と雪 〜父との思い出〜
先日、「佐渡の夕焼け」というタイトルの父の短歌が見つかったので、記録のために書きました。
今回はお話が見つかったらしいので、書き残しておきます。原稿は縦書きなので、ちょっと雰囲気が変わりますが…
私と父のお話です。ちょっとじんわりきました。
おつきあい頂ければ幸いです。
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春と雪
四月の佐渡島
加茂湖の小波(さざなみ)が温(ぬ)くんでる
四つになったさみが
口をととがらせて云った
「パパ、春を見に行こうよ」
二人で下駄をつっかけ庭へ出ると
さみは菜の花を一本摘んで走り出した
白壁の土蔵を廻ってまっすぐ行くと
部落の墓がしんとしている
さみは一番小さな墓の前でとまり
菜の花を供えた
「春一番」が急に吹き 雪が降り出した
さみが口をとんがらして云った
「パパ、春なのに雪が降って
雪が困っているよ」
やがて雲間から太陽が輝き出して
庭石や松の枝に積もっていた雪は
困った様な顔をしながら消えていった
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三兄妹の真ん中で、友人にも「あなたは本当にあの家の子供なの?」とからかわれるほど、出来の悪い私でしたが、父が優しい眼差しで見守っていてくれたこと、今でも思い出します。
最後までお読みくださった方、ありがとうございました。