辛酸なめ子「邪気られ日記」
■邪気との攻防
部屋で仕事をしていたら、無風で何の力も加わっていないのに、突然積み重ねていた本が崩れました。崩れた、というか上に乗っていた本が回転して落下、という不自然な状況でした。そして何冊かが落下して一番上になっていたのは『ヤマ・ニヤマ』(ヨグマタ相川圭子[著])という本でした。「ヤマ・ニヤマ」は「ヨガの八支則」にある項目で、ヒマラヤ聖者の説く道徳的な教えの本です。パッと開いたページには、三大欲をコントロールしてエネルギーを正しく使いましょう、という戒めが書かれていました。エネルギーを過剰に消耗していると生命力が減り、早く年を取り、神性とは逆の方向に行ってしまう、とのことで身につまされます。内容が深すぎて、何度読んでも気づきがある本です。ヨグマタ相川圭子先生が、どこかで見ていて、日頃の不埒な行いが正されたようでした。
また、ちょっと前にはこんなご神託がありました。2020〜21年にタイのBLドラマにハマって、毎日のようにイケメンのタイ人の写真や動画を眺めていて、煩悩と享楽にまみれていました。コロナ禍の心の癒しだったのですが、毎日2人のインスタを見ては本当にできているか妄想し続けるなど、度が過ぎていたようです。
タイのイケメンBLカップルに夢中になっていたある時、机に積み上げていたノートが崩れてそれがキーボードに落ちて「66666」と勝手に打ち込まれる、というハプニングが。しかも連鎖反応で、どこからともなくおみくじが落ちてきたのです。そこには「神の教えを忘れてよその小道に迷うな」と、書かれていました。またもや戒めの言葉にハッとしました。私が煩悩に迷いかけると、必ずといっていいほど、高次元のお導きが入るのです。
ちなみにこのできごとを、近況報告っぽく長文LINEで知人に報告したら、音信が途絶えました。スピリチュアルな報告は人を選ばないと、ということも学びました。
こんな風に、ヒマラヤ聖者や守護霊様やハイアーセルフや神仏のご加護でなんとか生きているのですが、以前から邪気を受けやすい体質で体調不良に悩まされていました。昔書いた日記を見ても、邪気に関する記述が多いように思います。
例えば一部抜粋してみます……。
●2009年7月13日「霊ばて」
いわくのある土地には、霊がいる場合と残留思念だけが残っている場合があり、霊感が強い知人によると霊はハードディスク、残留思念はCD-ROMなどの媒体に残っているデータだと考えるとわかりやすいそうです。霊が残っている時は、説得して成仏してもらうこともできますが、残留思念はいつまでもその場に残り続けてしまいます。先日、仕事で合戦とかがあった場所に行ったら、霊障もしくは残留思念に当たってしまったのか、脳髄が痺れ軽い吐き気が……。さっき具合が悪くてしばらく寝ていたら、そういう時に限って電話が四本くらいかかってきて(いつもは全然鳴らないのに)出られなくてすみませんでした。うとうとしていたら耳元で「怖くない、怖くないよ…」という声がしてきました。オーラを浄化するスプレーで撃退を試みましたが、頭が重く、今日はすみません、21時には就寝しますので電話には出られません。そしてメールにもなかなか返信できなくて申し訳ありません。元気になったら……またご連絡いたします。
●2010年9月13日「銀座の思い出」
昨夜どこで拾ってきたのか久しぶりに悪霊っぽい存在が来て、白い壁に不気味な顔が浮かんだり、夢うつつの時に、マンションのドアをガチャガチャしたり、ドアを叩いて呻きながら入ろうと苦悶する声が聞こえました。
昨日は脱毛サロンに行ったため入浴で邪気を落とせなかったのが一因と考えられます。
銀座のサロンに行く途中、急いでいる中国人男性とぶつかったら「アイヤー!」と言われました。
リニューアルした銀座三越のデパ地下で「好きだよ〜ねりもの好きだよ〜」とハンペンを見てつぶやいていた女性の声が今も耳に残っています。
●2013年8月6日「水玉カフェ」
最近寝入りばなに金縛りに襲われたり、寝ている自分と重なってもがき苦しむ人の姿が見えたり、ブラックベリーで「辛酸」と入力しようとして「しん」まで入れると「死んで」が第一候補に出てきたり、何かとりつかれているというか邪気がたまっている感じがしたので、『クロワッサン』の仕事で教えてもらった整体に行き、鍼をチャクラにぶちこんでもらい、セージでいぶされ、ミントの水をかけられるという儀式的な施術で体が軽くなったので六本木ヒルズのYAYOI KUSAMAプレゼンツ「私の大好きな私」カフェのオープニングへ行きました。最近はすっかりパーティのような娯楽から遠ざかってしまった……。そして今日も行ったら誰ひとりとして知り合いがおらず、人と会話したのは「トイレはどこですか?」「これは何のパテですか?」くらいでした。
●2013年12月18日「久しぶりの霊」
寒さで心が弱っていたのか、テレビの刑務所特集に感情移入しすぎたせいか、久しぶりに強力な霊が訪れました。
もともとその予兆は夕方くらいからありました。プチ吐き気に襲われたり、PCの動作がおかしくて何も押してないのに入力中に急に全角英語モードになるのが10回以上。そしてPhotoshopは強制終了。その日執筆していたのは紫綬褒章とか戦争で業績を残した人に贈られる勲章についての原稿だったので、勲章に宿っていた霊が写真を媒介にこっちに来たのでしょうか。
夜は夜で金縛りに3回も遭いました。ゴーッという音に包まれ全身が振動したり、何か黒いもやの帯にスキャンされたり、恐ろしげなビジョンを見せられたり……。うめいていたら、背後から「どうしたの?」と声をかけられましたが、それもよく考えたら霊の声という……。迎え酒ならぬ迎え霊です。その時見えた(まぶたの裏に浮かんだ)のは、部屋の中に立っているブルーのシャツの男性で、私の視線を感じたのかクルっと振り返ったのですが、顔がありませんでした……。目のあたりがぼんやり黒い影になっていました。絵で解説したいのですがまた何か怪現象が起こりそうなのでやめておきます。そして次に、穴の開いたスリッパ、海の波紋を見せられました。その流れから推測すると貧乏を苦に入水自殺した男性とか……? それは大変気の毒でご愁傷様ですが私には何もできません。どうぞお引き取りください。と念じました。
怪現象はそれだけにとどまらず、明け方ちょっとくらい前に今度は外から、鵺(ぬえ)みたいな不気味な鳴き声が聞こえてきました。「キーッ」「キーッ」と悲鳴ともつかない声が、街を遠ざかっていく感じで繰り返し聞こえてきました。そして朝目覚めた時は、不快な痺れが腕に残っていました。結構ガチな霊体験だったので、そのあと近所の神社に参拝。近所の神社の存在は、コンビニやパン屋やスタバ以上にマストですね。いつもありがとうございます。
●2015年6月24日「浄化の欲求」
朝緊張とともに歌舞伎町を歩いていたら、女の絶叫する声が聞こえました。若い女性が「さわんなよー!!」とか叫びながら暴れていて、男性が取り押さえ、しばらくしたら救急車が到着。暴れる女は台に乗せられ、露出した太ももを近くのビルの管理人のおじさんがニヤニヤしながら眺めていました。
そのあと、日本史に関するトークイベントに参加。壇上でトーク中、ちょっと奇妙なことが……。白い台本の紙に目をやったら、小さい赤い虫みたいなのが高速で紙の上を回転していました。ブブブブというかすかな音をたてて円状に何周も走り回っていて、ごみかと思ったけれど、それにしてはずっと回っていて、こわいので払い落としてしまいました。シャーペンの芯? とも思いましたがとくにシャーペンは使っていませんでした。
歌舞伎町で絶叫する女を見てから、邪気を帯びてしまったのでしょうか。
ここから先は
¥ 300
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?