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失敗した

失敗した。

皆さんの子供の頃の夢はなんですか?

幼稚園の卒業アルバムの最終ページ、拙くて純粋な自画像と共に綴られる将来の夢は、大体ケーキ屋さんとか、歌手とか、消防士とか、そんな感じが結構多い。で、結局はみんなそんな夢の話はすっかり忘れて、または諦めて、別の職業に就いていたりする。大多数がそうだと思う。私の夢は漫画家だった。絵が得意だったから。空想が好きだったから。安直な理由だ。
絵を描くのは子供の頃からずっと好きだった。筆記具を持てるようになってから、今までずっと。小学校や中学校の頃にそれで賞状を貰うのはざらだったし、高校の体育文化祭でクラスTシャツや団Tシャツのデザイン、所属していた陸上部の部員勧誘ポスター、市の成人式パンフレットの表紙だって描いた。私の立ち位置は、「人より絵が上手くて、描くことが好きな生徒」だった。ずっと。私も自分の得意を自覚していたし、認めていた。

あ、今のは嘘だな。上手くないと言われたこともある。私の他にもう1人、とても絵が上手い私の親友がいて、その子がずっと1番だったか。
漫画家やイラストレーター、自分の好きで得意なことをしたり顔で将来の夢だと言い張っていたのはいつまでだったか。結局特別な才能がないと見切って「勉強して良い高校に入って良い大学に行って良い職業に就いて良いお給料を貰って良い人を見つけて良い家族を作る」を夢にした私、多分そこで失敗したのだ。勉強、運動、趣味、偏りなく中途半端に色々出来たのも悪かったのかもしれない。別にそれが人より特別に秀でていたとかでも無く。結局、浪人してまで固執した大学受験にも失敗して、私には何も無くなってしまった。だからだろうか、もう要らないと自分から捨てて埋めたはずの気持ちを掘り返して丁寧に土を払って眺めている

ところで私の現在の恋人は美大に通っている。絵を描く学部では無いらしいので、何をしているのかは詳しく知らないけど、課題の作成状況とかをこっそり観察していると、自分の発想を大切にして具現化してお披露目するような何とも楽しそうなものばっかりで、一抹の羨ましさを覚える日々が辛い。
しかし私には彼を羨む権利など無いのだ。間違いなく自分から手放した夢だから。何でそうしてしまったか、私にはわかる。怖かったから、他人とは違う自分になること。井の中の蛙よろしく不透明な自分の才能を理由もなく信じて、負けてしまうことが怖かった。家が貧乏だからとか安定が欲しかったからとかそんな理由はただの後付けだ。自分のやりたいこと、自分の得意なこと、好きなこと、全部全部信じるのが怖かっただけ。それで今こうやって後悔とか嫉妬とか羨望とか薄汚い感情を誰も見るはずないクソみたいな文章にぶちまけてるのが笑える。それで自分の心の内を見直して悲しくなるのだから、意味の無い自傷行為でしかない。私は私が気持ち悪くて仕方ない。

さっき流れてきたshortsで、イラストレーターが自分の子供の頃の夢について語っていた。やっぱり、「絵描きさん」なんだなあ。自分の好きを貫ける人間は強い。私の中学の頃の同級生も、浪人を経た後美大に合格し、有名アーティストのMV作成に携わったというのだから驚きだ。彼は自分を信じること、怖くなかったのかな。

ポジティブに纏めたいけどどうにも出来ない。
私は何もかも失敗している。失敗を防ぐ機会は沢山あったはずなのに、失敗し続けて、目も当てられないくらい醜い顔をしながら私が決定した成功者を憎み続けている。これからもしょうもない日々に命を溶かしながら妬み嫉みの海で息をする。

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