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慟哭


なにが、「音楽やってねえと死ぬ」だよ、馬鹿か。


ただ生まれて死んでいくだけなのに、人生に殊勝じみた物語をこじつけるやつ、嫌いだ。しかしこの感情が嫉妬や羨望であることを私は知っている。
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あー、すげえ、この世の主人公ってこれか、ってマジで思った。友達が参加しているサークルのメンバーかなんだかが主催したライブで、煌めくスポットライトを一心に浴びる彼女を見た。もう、帰りたかった。もしくは叫びたかった。死ね!死ね!死ね!誰が?私が!!!ステージの上で天性のものであろう愛嬌を振りまきながらMCに務める彼女が満開に咲き誇る花のような魅力を迸らせて「私、音楽が大好き!」
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なんなんだ。マジで。花は花弁を揺らしながら語る。大学卒業して、フリーターになって、そこから自分がこのままでいいのかなって悩みだして、でもやっぱり音楽が好きで、音楽やっていく覚悟が出来ました!って、なんなんだ、マジで!  
家にお金が無いからフリーターやりつつの二浪目を迎えて4月から1月まで居酒屋で接客を続けた。派遣とコンビニも掛け持ちして月の休みは2日とかで、死に物狂いで働いた。当たり前に受験費用は全て無駄になって、Fラン私文に進学した。親に頭下げて、せめて1年分だけは学費を出してくれと、弟の学費もあるのでそこから多額の奨学金を借りた。私は自分がこのままでいいのかなんて子供の頃からずっと考えてる。考えてるよ。結局親の支援とか家庭環境の基盤があったくせに、なんで自分に降り注ぐ恩恵を無視して、そんな顔で笑えるんだ。私だって美大に行きたかった。私だって、実用性とか将来性加味して学ぶことを決めたくなかった。なんでお前が主人公なんだ。これは私の人生なのに。
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その日その夜ライブハウスにいた全員が自分より格上に見えて、気が狂いそうだった。当たり前に未成年が酒を飲み、煙草を吸って、当たり前に主人公たちを賞賛する。誰にも認められない私は?親に存在が迷惑だと言われ、親戚筋からも何も出来ない子供だと見なされて、挙句の果てに全く他人の親の知り合いからも叱責を受けた。ああ、もう全部自分が悪い、わかってる。輝くプリンシパルの座は努力の上にしか与えられない。理解している。心の底から理解している。でも、なんか、ああ、ここまで、私と他人には埋めようのない差が、ほんとうにぽかんと、開いているのだと、もしかしたら、切実とはこういう気持ちを言うのか。
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ここまで読んでくれた稀有な優しいあなたも、「全部お前の努力不足で、甘え根性が由来している現状だろう」と思ってくれていると思う。私もそう思う。現役の時に合格していれば、せめて一浪目で合格していれば、そうでなくても何かにのめり込めていたならば、こんなことにはならなかったのだろうか。こんなたられば考えるだけ無駄で、ひたすらに、空虚だ。自分が社会の何からも求められていないように感じる。
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この街は、私には余りにも輝きすぎていた。自己愛で装飾された愚かしい矜恃と、対立するどうしようも無い自己否定に毎日苛まれている。毎日死ぬ夢を見る。こんなはずじゃなかった。でも、私を殺しているのは私だ。私の可能性を奪っているのも私で、ああ、本当は私に可能性などないのかもしれない。努力は才能では無い。こんなどうしようも無い稚拙な文章を書き綴るくらいには暇を持て余している私が、主役を与えられないのは当然の原理なのだ。
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本当に死んで欲しいと思った。好きなものに真摯にアプローチする彼女たちの前で、なにが、「音楽やってねえと死ぬ」だよ、馬鹿か。って思ってる、お前が1番馬鹿なんだよ。死ねよ。死ね、死んでくれ。死ね、死ね、死ね、なんて考えながら今日も眠る。ただ大学に行くためだけの目標としていたかのような将来の夢に対するありもしない憧憬を掲げ、明日も息をしながら空虚な学びを積むのだろう。このままでいいのかな?行動にならない思考に意味はない。私は生来意味もないことで悩んでいる自分が可哀想で可愛くて仕方が無いのだ‎^_^

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