忘れられない男の話。
今回でこの男の話終わらせたいよ。わたしは。
よく一緒に遊ぶようになって、三年くらい経ったら、かなり近い場所で彼を眺められるようになったけど、相変わらず私の片想いのまんまでした。
隣に並んだら、見上げないといけない身長差とか、響く低い声とか、前髪が長めの黒髪とか、指の長い手とか、切れ長の一重とか、彼の吸う煙草の匂いとか。大好きで全部愛しかった。
聞く曲の趣味が似てたから、カラオケじゃいつも曲の取り合いしたりとか、女は奢られとけよ、ってたまーにご飯奢ってくれたり、気づいたら車道側歩いててくれたりとか。
気にすんなよって車で家まで送ってくれたりとか、何気にテーブルマナーに厳しかったりとか。仲良くならないと気づかないくらいの小さな優しい気遣い。優しいね。って言うと怒るから言わないけど、私はその全部が大好きでした。
私なんか、たどり着けないくらいの思慮深い人だったな。考えて考えて、頭が痛くなるくらいまで考えて答えを見つけろ、って彼が私に教えたんだ。
彼に絶対服従だった私、そりゃ彼からしたら相当つまんない人だったな。笑
この頃は人生の経験値も今より浅くて、精神状態もふわふわでジェットコースターみたいなメンタルしてたから遊んで帰ってきてからとか通話した後とか、よく泣いてたな。
少女漫画のヒロインなら、ここから付き合う未来があり得るのになぁって何度も思った。
物語みたいには、そう上手くいかないんだよね。
地元を出るって決めた頃、最後に遊びに行った日の帰り。
車で送ってもらってる助手席でこのまま居なくなってしまいたい、この幸せな瞬間ごとなくなってしまいたいって思ったのをよく覚えています。
私以外にこの人の事が好きな人なんて、居なかったら良いのにとまで思ってた。最早これは呪いの類かもしれない。
あれから数年が経って私にも彼氏ができたり、別れたり、セフレができたり、浮気相手の女側をやったりしてたら経験値が多少増えました。
でも、いつまで経っても思い出すのは彼だけで、写真だって、動画だって消せない。
あの頃の彼を未だに夢に見る。
色恋の話になると脳裏に浮かぶのはいつだって彼です。
初めてちゃんと付き合えた元彼くんの時でさえ、彼のことを夢に見ました。
彼の夢を見て、ハッとして起きたら隣に寝てるのは彼じゃない人で。ああ、夢か。って落ち込む経験なんかしたくなかったな。
こんなに報われない恋愛、もう嫌だ。もうあんな彼のことなんか諦めて違う人と恋愛をしよう。そうやって当時都合よく告白してくれた元彼くんに逃げて、彼から自ら離れたことを本当に後悔しています。
もう手の届かない所まで来ちゃった。
逃げちゃダメだった。今頃後悔しても遅い。
片想い歴だけがずるずる伸びてもう数えるのも嫌になっちゃった。
本当に碌な恋愛遍歴ではありません。
ちゃんと私に“彼女”の肩書きがあったのは元彼くん1人だけで、あとは付き合いすらしてません。
セフレや、浮気をさせていたあの人には
「もう既に1位がいるじゃん」「僕じゃなくて他の人を見てるでしょ」なんて言われて泣きじゃくる始末です。だって図星だから。
簡単なことで、どこか彼に似ている人を好きになって彼と比べて違うところに幻滅して、私が冷めて連絡を断つか浮気して終わり。
元彼くんと別れてから数人と関係を持ちましたが、無駄に経験人数を増やすだけということが分かってしまってからもう遊ぶのも辞めました。
大好きなこと、とっくの昔から分かっていたはずだったのに、こんなに愛していることに、忘れられないことに気が付いたのは彼との繋がりを断ってからでした。
失ってから気付く馬鹿は私だった。
出来ることなら、許されるなら、もう一度彼に会いたい。
彼の人間関係をぐちゃぐちゃにして消えて今更会わせる顔はどこにも無いけど。
欲を言えば彼に私を選んで欲しい。今でも、変わっていたとしても、彼が好きだって言いたい。
今更やっぱり好きだと言ったところで彼の気持ちがこちらを向くとは思えないけど。
容姿も性格も、彼好みになれたらどれだけ良かったか。
彼にアプローチされるような人になりたかった。
どれだけ美容に力を入れて綺麗になろうと、彼に可愛いと思って貰えなかったらなんの意味もなかった。彼からの“好き”だけが欲しかった。
「お前に興味の欠片もない」なんて言われて、振られるような彼の人生のモブなんかじゃなくて、ちゃんと結ばれるヒロインになりたかった。
彼の好みになる方法も、彼の好みも、私には分かりませんでした。
こんな一方的な大きすぎる感情を彼に向けるには、私に興味が無さすぎる。
多分、これから先も私はこの人のことをずっと忘れられずにいると思います。
もう、この人のことを忘れたくない。
私がこんなにずっと大好きで愛している人、この人以外にもう出てきて欲しくない。
この感情が、この長い時間をかけて降り積もった重たすぎる気持ちが、誰かに消されるくらいなら1人で人生を終えた方がマシだとさえ思う。
もう、好きでいる期間が長すぎてこの人のことを好きな自分でいる方が自然になってしまった。
私は、最初っからこの人だけだったんだな。
私には、この人しかいなかったや。
私の、忘れられない男の話でした。